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【コラム】長谷部主将の代役期待される吉田麻也…苦手・UAE戦で求められる統率力

2017.03.23

アウェイ・UAE戦の主将候補に挙げられているDF吉田麻也 [写真]=Getty Images

 日本代表の2018年ロシアワールドカップ出場権行方を大きく左右する最終予選第6戦・UAE戦(アルアイン)が翌23日に迫った。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いるチームは試合会場となるハッザ・ビン・サイード・スタジアムで18時から冒頭15分のみの公開で公式練習を実施。UAEリベンジの秘策を再確認したと見られる。

 指揮官も誰をスタメン起用するか頭を悩ませているに違いないが、現時点で最も計算できる面々を送り出すはず。守備陣は11月のサウジアラビア戦(埼玉)同様、GK西川周作(浦和レッズ)、DF(右から)酒井宏樹(マルセイユ)、吉田麻也(サウサンプトン)、森重真人(FC東京)、長友佑都(インテル)という顔ぶれが有力だ。長谷部誠(フランクフルト)不在のボランチは、高萩洋次郎(FC東京)が右足親指の痛みを再発させて公式練習を欠席したこともあり、山口蛍(セレッソ大阪)と今野泰幸(ガンバ大阪)のコンビが確実視される。攻撃陣は2列目右が久保裕也(ヘント)、トップ下が香川真司(ドルトムント)、同左が原口元気(ヘルタ・ベルリン)、1トップは大迫勇也(ケルン)という4枚が現実的だろう。サウジアラビア戦の時は清武弘嗣(セレッソ大阪)がトップ下を務めたが、ケガを抱えている彼はコンディションが今ひとつ。今回はクラブで輝きを取り戻しつつある香川を出す方がベターだろう。

「キャプテンマークを巻くのは吉田、森重、長友のいずれかだ」とハリルホジッチ監督は前日会見で発言した。今回の予選全試合出場という実績を考えるとディフェンスリーダーに重責が託される可能性が極めて高い。

「キャプテンについて監督からは特にないです。(マークを)巻く巻かないは関係なく、センターバックなのでチームをリードしていかないといけないですし、こういう試合だからこそ、ワールドカップを経験している、僕や真司、本田(圭佑=ミラン)さん、佑都君とか永嗣(川島=メス)くんもそうですけど、そういう選手がチームを引っ張っていかないといけないのは当たり前ですけど、明確なので。もちろん今までもやっていますし、明日もやっていきたいと思います」と吉田本人も改めて軸を担う選手としての自覚を口にした。

 2015年アジアカップ(オーストラリア)、昨年9月の最終予選ホーム初戦で連敗しているUAEは、日本守備陣にとって絶対に完封しなければならない相手。とりわけ、前回対戦時にアリ・マブフート(7番)をペナルティエリア手前で倒したと判定され、アハメド・ハリル(11番)の直接FK弾に結び付けられた吉田にしてみれば、リベンジせずして先には進めない。「自分は倒していない」と屈辱的黒星を喫した半年前に彼は不満を露わにしていたが、この悔しさを忘れたことはないだろう。

「対戦相手より審判がイングランドと違うので、そこは僕自身が一番気をつけないといけないところだと思います。レフリーは英語が通じるのでしっかりコミュニケーションを取らないといけない。駆け引きは試合前から始まっているし、試合を通して運が巡ってくるような駆け引きをしていきたい」と吉田は前回対戦の反省を踏まえて静かにこう語っていた。今回は国際主審のイルマトフ氏が笛を吹くため、前回よりは安定したレフリングになると見られるが、そういう部分も含めて吉田がしっかりと守備陣を統率しUAEを零封すること。そこがやはり重要だ。

 前半戦5試合を消化した9~11月の3カ月間は、所属のサウサンプトンでも試合に出たり出なかったりだったが、ポルトガル代表のジョゼ・フォンテ(ウェストハム)の移籍問題が浮上した12月中旬以降、一気に出番が増加。2017年に入ってからは完全レギュラーに定着したと言っていい状況だ。2月26日にはイングランドリーグカップ決勝でマンチェスター・Uとの大一番も経験。最終的に2-3で敗れはしたが、ズラタン・イブラヒモヴィッチら強力攻撃陣とガチンコ勝負を演じ、心身ともに一段階飛躍したのは間違いない。「麻也は多くの試合に出ていて状態もいい」とハリルホジッチ監督も絶大な期待を寄せており、今回はより大きな存在感を発揮してくれるだろう。

 もともと2014年ブラジルワールドカップの後、「次世代のキャプテン候補」と言われていた吉田。ハビエル・アギーレ前監督も本田圭佑(ミラン)、川島永嗣(メス)も「本田、永嗣、麻也の3人がキャプテンだ」と発言しており、彼の統率力とインテリジェンスに一目置いていた。その後、長谷部がキャプテンに復帰したことで、吉田がマークを巻く機会は皆無に近かったが、今回は自身の成長を示す絶好のチャンス。長谷部不在でも日本代表は問題ないということを実証すべく、背番号22をつける長身DFには気迫と冷静さの両方を持ち合わせた頭脳的プレーを強く求めたい。そして苦手・UAE撃破の原動力になってほしいものである。

文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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