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【コラム】長谷部離脱で重責を担う山口蛍…大黒柱不在の中盤で託された役割

2017.03.21

20日の練習前に話をする山口(左)、原口(中央)、長谷部(右)[写真]=元川悦子

 2018 FIFAワールドカップロシア アジア最終予選の後半戦スタートとなる3月23日のUAE(アラブ首長国連邦)戦まで3日。19日に決戦の地アル・アイン入りした日本代表は20日夕方、合宿2日目の調整を行った。合流の遅れていた本田圭佑(ミラン)や長友佑都(インテル)らも加わって招集メンバー25人全員が揃ったが、キャプテン・長谷部誠(フランクフルト)の離脱が決定。UAE戦まで帯同せず、帰国の途に就くことになった。

「負傷箇所は右ひざ。(3月11日の)バイエルン戦でゴールポストにぶつかった時にやった確率が相当高い。日本に帰って検査してみないと分からないが、メスを入れる可能性はかなり高い」と本人が説明した通り、負傷のレベルは深刻と言わざるを得ない。ドイツ現地メディアは今シーズン絶望と報じていて、28日のタイ戦(埼玉)はもちろん、6月13日のイラク戦にも影響する恐れも出てきた。本田が「影響がないと思わないとダメ」と言い、川島永嗣(メス)も「こういう時だからこそ1人1人の結束力を高めていかないといけない」と語気を強めたように、いかにして大黒柱不在の穴を最小限にとどめるか。それを第一に考えていくことが肝要と言える。

 今回の予選を通して長谷部とボランチを組むことの多かった山口蛍(セレッソ大阪)は重責を託される1人。練習前には原口元気(ヘルタ・ベルリン)を交えながら3人で話をする光景も見られ、絶対的ボランチから中盤のコントロールを託された模様だ。

「ハセさんから特別な何かを言われたというのはないです。ただ、やっぱり1人じゃなくてチームとしてまとまらないといけない。みんなで1つの方向に向いていくのが一番だと思う。ハセさんはピッチ内でもそうですけど、ピッチ外の部分でもまとめる役割がすごい大きかった。今回、少し来てくれただけでもチームが1つにまとまるうえで助かったし、引き締まったものがあった」と山口はしみじみ言う。偉大な先輩のやってきた仕事を一番近くで見てきた男には、その存在感に少しでも近づく努力が求められるのだ。

 C大阪では2014~2015年にかけてキャプテンマークを巻いたことがあるが、強引に周りを引っ張るようなことはしなかった。けれども、今回は何が起きるか予想がつかない中東でのアウェイ戦。レフリーがホームゲーム以上に不可解な判定を連発する可能性もゼロではないだけに、山口もこれまでにない統率力を発揮する必要がある。現に長谷部はどんなアクシデントが起きてもつねに冷静に対処してチーム全体を落ち着けてきた。中盤の要に陣取る以上、そういった影響力はやはり不可欠だ。

 ボランチのパートナーがベテランの今野泰幸(ガンバ大阪)なのか、パス出しに長けた高萩洋次郎(FC東京)なのか、それとも別の選択肢なのかはまだ分からない。そこは山口にとっても難しい。ただ、誰が入ったとしてもハリルジャパンでの経験値は彼の方が上。だからこそ、彼がパートナーをリードし、長所を引き出してあげるくらいの精神的余裕を見せるべきだ。それが2014年ブラジル・ワールドカップでボランチとして3試合全てのピッチに立った選手の責務である。思い返してみれば、2年半前も長谷部が右ひざ負傷で長期離脱したことが、山口の存在価値を高める契機になった。その経験も役には立つはずだ。

「自分は誰と組んでもイメージを持てるし、合わせられるとは思います。今回の最終予選は最初のUAE戦の負けからスタートしたんでかなり厳しくなった。後半戦の最初であるUAE戦で勝てればいい方向に向いて行けると思います。ただ、僕は大一番とかそういうことは深く考えたことがない。いつも通りできると思います」と彼はいい意味で自然体を貫いているようだ。

 屈辱的敗戦を喫した前回のUAE戦では、相手キーマンのオマル・アブドゥルラフマンのマ―クを長谷部、大島僚太(川崎フロンターレ)の両ボランチと、原口、酒井高徳(ハンブルガーSV)の両左サイドで見る形を取った。今回は山口が中心となって日本から見て左に流れていくキーマンの一挙手一投足をチェックし、効果的なパス出しやフィニッシュのお膳立てをさせないようにしなければならない。

「もちろん気をつけなくちゃいけない選手ではあるけど、UAEは彼1人ではない。実際、ホームでやられてるのはFWの選手(アハメド・ハリル=11番)。それも気をつけなくちゃいけない。まずこれからしっかりと試合を見て分析して、やっていきたいと思います」と山口は冷静に言う。

 相手を確実につぶして失点をゼロに抑え、攻撃の起点となる展開を見せること。その大役をやり遂げてこそ、日本代表は長谷部依存症から抜け出せるはずだ。

文=元川悦子

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