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【コラム】長谷部と本田が危機的状況の日本代表、香川に敵地UAE戦で求められる“仕留める力”

2017.03.20

日本代表の10番を背負う香川真司。クラブで復調も「代表は別物」と危機感を募らせる [写真]=Getty Images

 3月23日のUAE(アラブ首長国連邦)戦(アル・アイン)から後半戦がスタートする2018 FIFAワールドカップロシア アジア最終予選。昨年9月1日のホーム初戦で苦杯を喫したことで日本代表は窮地に追い込まれた。「我々は誰もその試合を忘れていない。今回はリベンジの機会だ」とヴァイッド・ハリルホジッチ監督も16日のメンバー発表会見で強調した通り、今回は何としても勝ち点3を取って帰るしかない。

 その大一番を前にして、キャプテン・長谷部誠(フランクフルト)が左ひざ負傷で精密検査が必要な状態であることが判明。今回は欠場濃厚となった。指揮官は19日夜の現地初練習の後、「難しい状況だというのはみなさんもご存知だと思います」と両手を大きく開きながら長谷部負傷のダメージの大きさを表現していた。当の本人は21時頃に酒井高徳(ハンブルガーSV)、浅野拓磨(シュトゥットガルト)とともに宿舎に到着。「ケガはどんな様子か」という報道陣の問いに対して「まあ…」と言葉を濁したまま、苦渋の表情を浮かべてホテル内に入っていった。33歳の絶対的ボランチのケガがどの程度なのかは今後の代表を揺るがしかねない問題だけに、動向を注視する必要があるだろう。

 新たな火種を抱えた代表のアル・アイン初練習は当初13人が参加予定だったが、高萩洋次郎(FC東京)が右足親指の打撲で室内での別メニューとなり、12人が参加するにとどまった。そんな中、17日にブンデスリーガのインゴルシュタット戦があった香川真司ドルトムント)もいち早くアル・アイン入り。25分間のランニングでも先頭を走るなど、リーダーシップを前面に押し出そうとした。所属のドルトムントで最近3試合フル出場を果たし、好調時の躍動感やゴールに直結する動きが戻ってきたと評されているせいか、本人からも少なからず自信が見て取れた。

「(クラブで)試合に出て(代表に)合流した方が間違いなく気持ち的にもいいと思います。ただ(代表とクラブは)別だと思ってるんで。今は暑さもあってコンディション調整も難しいんで、いい準備をすることが大事だと思います」と香川は強い危機感を持ち続けている様子だ。

 それもそのはず。今回の最終予選に入ってからの香川は満足いく仕事が全くと言っていいほどできていない。山口蛍(セレッソ大阪)の後半ロスタイム劇的決勝弾が生まれた10月のイラク戦(埼玉)は出番なしに終わり、11月のサウジアラビア戦(埼玉)もスタメン落ちを強いられた。「自分が最終予選で結果を残している立場では決してない」と本人も指揮官の扱いを理解はしていたが、エースナンバー10を背負う者としてこのままでいいわけがない。だからこそ、今回のUAE戦は先発を奪回し、勝利の原動力になることが必要不可欠だ。長谷部を欠き、本田圭佑(ミラン)が2017年セリエA出場ゼロという危機的状況に陥っているだけに、香川に託された役割はこれまで以上に大きいのだ。

「このUAE戦は間違いなく勝たなきゃいけないし、(28日のタイ戦=埼玉も含めた)この2試合はホントに大事になってくる。UAEはスペースを与えたり、ちょっとでも自由を与えたら、10番の選手(オマル・アブドゥルラフマン)からのロングボール1発が出てくる。2トップもフィジカルのある選手だし、そういうところは絶対に警戒しないといけない。その中で点を取らないと。90分間には必ずチャンスは来るし、僕たちのリズムがあると思ってるんで、その時にしっかりと仕留められるようにアウェイでやっていきたいと思います」と香川は自分のやるべきことを明確にしてUAEに乗り込んできたという。

 その「仕留める部分」を誰がやるのか。そこが日本勝利の最重要ポイントと言っていい。所属クラブでの得点力を見ると、18日のヘルタ・ベルリン戦でスーパーゴールを挙げた大迫勇也(ケルン)、ベルギーでゴール量産中の久保裕也(ヘント)らに期待がかかるが、香川には国際Aマッチ84試合出場27得点という偉大な実績がある。今シーズンのドルトムントでリーグ無得点という屈辱を晴らすためにも、かつて世界中の人々を驚かせた傑出した得点能力を今こそ発揮するしかない。

 ザックジャパン時代の2013年3月の2014年ブラジルW杯アジア最終予選・ヨルダン戦(アンマン)、ハリルジャパンになってからの2015年9月のアフガニスタン戦(テヘラン)など、香川は中東での代表戦で印象的なゴールをいくつか挙げている。中東に苦手意識を持つ日本人選手も少なくないが、彼はドルトムントの合宿などでも再三訪れていて、違和感なくやれるだろう。28歳最初の代表戦を自らのゴールでモノにする…。そんな理想的なシナリオを現実にしてほしい。

文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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