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3月11日に決めた9度目のW杯出場。ビーチサッカー日本代表が跳ね返したアジア予選の重圧

2017.03.17

キャプテンの茂怜羅オズは「出場を決めた瞬間、1トンぐらい体が軽くなった気がした」と話した

 3月11日、希望を届けたい日にビーチサッカー日本代表は2017 FIFAワールドカップ(W杯)出場を決めた。日本ではまだマイナーなスポーツだが、体験した人はその魅力にハマり、観客はノリのいい音楽とともに繰り広げられるアクロバティックなプレーの数々に惹きつけられ、ゴールの瞬間、熱狂する。日本でも各地でビーチサッカー教室が開かれ、その楽しさから注目を浴び始めた。

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◆AFCビーチサッカー選手権2017(3月4日~11日)

 ビーチサッカー日本代表はマルセロ・メンデス監督の下、W杯アジア予選を兼ねたAFCビーチサッカー選手権が行われるマレーシアに大会1週間前に入り、練習試合では2戦2勝の手応えを得た。13カ国で争われる今大会で3位以内に入ればW杯出場権が獲得できる。グループCに入った日本はカタール、イラク、UAEと対戦した。

 初戦のカタール戦は30度を超える暑さで、熱くなった砂のピッチには水がまかれ、11時30分にキックオフした。日本は大場崇晃のゴールを皮切りに茂怜羅オズの4得点など、14-0の完封で力の差を見せつけた。この初戦で選手全員が出場し、会場の雰囲気をつかんだ日本は、2戦目のイラク戦でも得点を重ねる。開始1分で先制点を奪うと、大場の4ゴールなど、11-2で日本は2戦連続の2ケタ得点をマーク。順調に勝ち点を積んだ。

◆宿敵UAEとのグループリーグ最終戦

 互いに2勝で迎えたグループ首位を争う一戦。アジアの強豪イランと決勝まで当たりたくない日本は、首位通過を目指した。だが、勝たなければならないプレッシャーからか、相手の激しいプレッシャーに気持ちで引いてしまう日本。捨て身で日本の良さを消してくるUAEに4-5で敗れてしまった。

◆長年のライバル・イランとの準決勝

 2位通過した日本は準決勝で強豪イランと対戦。勝てば出場が決まる大事な戦い、気合十分の両選手が入場した。3分、GK照喜名辰吾のシュート性のパスをゴール前で後藤崇介がヘディングでコースを変え、日本の得意な形で先制。だが、直後にFKを与え同点にされてしまう。2点目、3点目も照喜名のシュートをゴール前でコースを変えて常にリードしたが、いずれも直後にファウルをとられFKとPKで失点。茂怜羅オズのFKで加点するも、FKで失点するシーソーゲーム。4-4で迎えた23分、初めてリードを許すと、最終ピリオドで追加点を奪われる。直後に赤熊卓弥がオーバーヘッドで1点を返すが、その後、立て続けに失点。終了間際に後藤が1点を返したが、6-8で敗戦。日本はアジア予選で初めて決勝進出を逃し、3位決定戦に回ることになった。

◆W杯出場権をかけたラストチャンス・3位決定戦

 相手は日本の力をもってすれば勝てるレバノン。だが、日本は12人中5人が初のアジア予選。今年1月、新メンバーを招集して試合を重ねてきた日本だが、崖っぷちでの戦いは初めて。後がない一戦に大きなプレッシャーがかかった。照喜名や茂怜羅など経験豊富な選手たちが、「自分たちがカバーするから思い切りやってほしい」と若手を鼓舞して決戦に臨んだ。

 気温31度、14時キックオフ。2分、大場のサイドチェンジから小牧正幸が落とし、エースの後藤が押し込んで、幸先のよいスタート。日本は落ち着いた試合運びで得点を許さず、12分には、大場が胸トラップから振り抜くと、原口翔太郎がコースを変えて追加点。第2ピリオドで決定力を見せつけられるが、直後に反撃。小牧のループシュートがポストに直撃し、こぼれ球に後藤が詰めて3-1とすると、後藤が相手ベンチ前でゴールパフォーマンスをして敵を揺さぶった。

 最終ピリオド、キックオフからの強烈なミドルシュートで再び1点差に詰められたが、2分後に大場が相手ボールをかっさらうと、後藤とのコンビでゴールを奪う。1分後、またも1点差に迫られ、気の抜けない展開だったが、後藤の裏をついたパスから小牧がヘッドでつなぎ、大場が決めて5-3とすると、日本はゆっくりとボールを回した。試合終了間際には、GK照喜名のスローイングから後藤が渾身のオーバーヘッド。分かり合ったプレーでゴールを奪い6-3で試合を決めた。この日4ゴールを挙げた後藤は「みんなで3.11を意識していて、僕の背番号も11。勝って日本に勇気を与えたいと思っていた」と嬉しそうに振り返った。

 日本は3位となりW杯出場権を獲得。第1回大会から9回目の連続出場を決めた日本だが、W杯出場は当たり前のことではない。日の丸をつけてプレーすることの重みは想像以上だ。キャプテンの茂怜羅は、「出場を決めた瞬間、1トンぐらい体が軽くなった気がした」と話した。今年、代表100キャップを達成し、一番多くアジア予選を経験している照喜名も「これほど苦労するとは思いもしなかった。今大会では初の3位決定戦で3.11のタイミングで出場権を獲得できた。W杯でも今までにないことを日本代表が起こせるように頑張りたい」と、安堵の思いから新たなスイッチを入れた。アジア予選でのかつてないこの経験はW杯の舞台で必ず生きてくるだろう。

【AFCビーチサッカー選手権マレーシア2017 日本代表成績】
▼グループステージ
3月6日 vsカタール 14○0
3月7日 vsイラク 11○2
3月8日 vsUAE 4●5

▼準決勝
3月10日 vsイラン 6●8

▼3位決定戦
3月11日 vsレバノン 6○3

文=Noriko NAGANO

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