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【コラム】賑わうJの移籍市場、日本代表への影響は?…W杯前年のJ復帰という選択肢

2017.01.20

“Jリーグ復帰”が日本代表にもたらすものとは [写真]=VI Images via Getty Images

 今オフの移籍マーケットは、例年以上の賑わいを見せた。中村俊輔(ジュビロ磐田)や大久保嘉人(FC東京)、佐藤寿人(名古屋グランパス)や田中マルクス闘莉王(京都サンガF.C.)らが新天地を求めた。

 日本代表を率いるヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、違う視点から移籍市場を見つめているに違いない。チームマネジメントにプラス効果の移籍がある。


 たとえば、太田宏介のJリーグ復帰だ。

 オランダ・エールディヴィジのフィテッセで、このレフティーは戦力として見なされていた。ただ、不動のレギュラーではなかった。彼と同じ左サイドバックでは、長友佑都が苦しんでいる。インテルでの立場は、太田よりもさらに難しい。

 長友がケガで日本代表を離脱していた間、ハリルホジッチ監督は酒井高徳をスタメンに指名していた。この25歳は安定感をもたらしてくれるが、所属するハンブルガーSVではボランチが定位置となっている。日本代表の左サイドバックの候補者で、左サイドバックとしてクラブでポジションをつかんでいる選手はいないのが現状だ。

 それだけに、太田のFC東京復帰は日本代表に好材料だ。フィテッセに残留する選択肢はもちろんあっただろうが、定位置確保の可能性は国内のほうが格段に高い。そうでなければ、彼自身もFC東京も困ってしまう。ゲーム勘とゲーム体力をしっかりと磨くことができ、代表スタッフもパフォーマンスのチェックが容易だ。日本代表でプレーすることを考えれば、誰にとってもメリットは大きい。

太田宏介

DF太田宏介は2年ぶりにFC東京へ復帰した [写真]=Getty Images

 そもそも、欧州のクラブだからといって、試合に出られない状況を甘受するべきなのだろうか。練習でも学べるもの、身に着くものがあるとしても、ピッチに立たなければ進歩の速度は遅くなる。実戦から遠ざかることで、メンタルにも悪影響が及ぶ。「自分の評価をこれ以上落としたくない」という気持ちから、ミスを恐れがちになる。アグレッシブさが影を潜めてしまうのだ。

 どれほど実力のある選手でも、監督と相性が良くなければスタメンに、メンバーに、入るのは難しい。同じポジションに新たな選手が加入することによって、優先順位が下がってしまうこともある。ブラジル人のなかにも、欧州に適応できずに母国へ戻る選手はいる。Jリーグで力を発揮できずに帰国した選手も。

 そうした選手のキャリアは、そのまま下降線を辿っていったのか?

 そうでは、ない。

 自分ひとりではどうしようもできない状況を改善するために、試合に出られる環境を求めるのは当然だ。そのなかで、日本人にもっとも馴染みのあるJリーグへ戻ってくるのは、決して失敗ではないと思うのだ。欧州というマーケットにとどまることの意味は見落とせないが、Jリーグで力を蓄えてまたチャレンジする、という発想を排除するのはもったいないだろう。

 太田を呼び戻したFC東京は、高萩洋次郎にもオファーを出しているという。韓国KリーグのFCソウルでプレーする彼は、ハリルホジッチ監督が追跡している選手のひとりだ。ほかでもない高萩自身がロシア・ワールドカップの出場を望むなら、Jリーグ復帰はそのための有効な手段と成り得る。

高萩洋次郎

3年ぶりのJリーグ復帰が報じられている高萩 [写真]=Getty Images

 ベルギー1部リーグのシント・トロイデン(STVV)を退団した小野裕二は、Jリーグ復帰が濃厚だ。古巣の横浜F・マリノスとサガン鳥栖の二者択一と見られているが、いずれにしても、国内復帰は日本代表入りへつながっていく。

 今年は2017年である。ロシアW杯の前年だ。欧州で個人を磨き上げるのも大切だが、日本代表で安定したパフォーマンスを見せるためにもJリーグへ戻る、という選択肢があってもいい。ハリルホジッチ監督を悩ませるようなアピール合戦を、Jリーグで見たいものである。

文=戸塚啓

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