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【コラム】「結果を残すことが何より」…不完全燃焼の香川、若手の躍動を刺激に巻き返しへ

2016.11.16

サウジアラビア戦はベンチスタートだった香川真司 [写真]=三浦彩乃

 何がなんでも勝ち点3が求められた2018 FIFAワールドカップ ロシア アジア最終予選のサウジアラビア戦に、日本代表は2-1で勝利した。勝利を喜ぶ輪の中に、10番を背負うMF香川真司ドルトムント)の姿もあった。しかし、心の底から喜べる勝利ではなかっただろう。ロンドン・オリンピック世代のFW大迫勇也(ケルン)、MF清武弘嗣(セビージャ)、FW原口元気(ヘルタ・ベルリン)に加え、リオデジャネイロ・オリンピック世代のFW久保裕也(ヤング・ボーイズ)が存在感を示した一戦、途中出場した香川は与えられた26分とアディショナルタイムという時間で、ほとんど良さを出せなかったからだ。

 香川自身、ピッチに入るときは「ボールを奪ったら、相手の2ボランチがかなりルーズだったので、そこでカウンターでうまく起点になればいいと思っていました。でも、それ以上に3トップが中に入って来たときのカウンターからチャンスになっていました。(原口)元気はすごく走力がありますし、(本田)圭佑くんはすごく起点になれていて、そこで完結できているところがあったので、その中でどうやって生きるかを考えていました」と、攻撃面で何をするべきかを考えていたという。

「もちろん、2点目、3点目が早く欲しかったです」と、香川も攻めたい気持ちがあったことを認める。ところが、いざピッチに入ると、1点を追うサウジアラビアが、徐々に反撃の体勢をつくってきた。そこで香川は、守備に注力していった。

「ただ、相手が想像以上に勇気を持ってポゼッションをしだしたので、僕たちもちょっとラインが下がったりして、両サイドのウイングも下がった。相手のボランチとセンターバックに対して2(大迫と香川)対4の形になり、7番がちょっと横で受けたりして、そこに振られたりもしたので、体力的に消耗することが多かったですが、そこをやるしかなかった」

 後半、日本は前線の大迫、原口、清武、本田らのボール奪取からカウンターのチャンスを何度かつくっていた。しかし、香川が入ってからは、なかなかその形をつくれなかった。相手が前に人数をかけだしたことで、日本も全体的に引くことになり、香川の前線でのプレスも空転することになってしまったからだ。

 それでも香川は黙々と走り続け、追加点のチャンスを狙い続けていた。「その時間帯を耐えたら、またチャンスがあると思っていましたし、そういう耐える時間帯に投入されたと思っているので、その役割を全うすることを考えました。その時間帯を乗り切れれば、2点目のチャンスが流れ的にはあるのではないかと思ったところ、元気が決めてくれた。戦い方としては、良かったと思います」と、チームが追加点を挙げられたことには手ごたえを口にした。

原口元気

追加点を挙げた原口(左から3人目)を称える香川(左から2人目) [写真]=三浦彩乃

 この2点目の場面、香川もゴール前に走り込み、得点に関与している。しかし、瞬時の判断で自らシュートを打つのではなく、より体勢の良い原口に打たせるため、軽くボールに触れてボールの軌道を変えたアシストについても「あれはそれまでの崩しが良かったですし、あれだけみんな中に入りこんでいれば、誰かが触れる」と、満足した様子は見せなかった。

 守備に奔走して、「役割をまっとうした」認識はあるものの、それだけでは十分ではないと、誰よりも香川自身が認識している。負傷で出場できなかったキリンチャレンジカップ2016のオマーン戦、さらにこのサウジアラビア戦、躍動する年下の選手たちを見て、何も感じないわけがない。

「ずいぶんと刺激をもらう2試合だったなと。やっぱり僕たちは結果を残すことが何よりで、それを証明した選手が試合にも出ていた。すごくシンプルに、チャンスをものにできる準備だったり意識だったりを、僕たちもあらためて、このチームでつくりあげていく。また、この状況を自分がどう変えていくか。良い意味で。それは自分次第。それは圭佑くんにしろ、岡ちゃん(岡崎慎司/レスター)にしろ、みんなが前向きなものを得られたんじゃないかなと思います」

 そう言い終えると香川は、矢継ぎ早に「ありがとうございました」と言って、ミックスゾーンを去っていった。個人的には、決して満足のできなかったであろう最終予選の前半戦が終わった。まだまだ厳しい戦いが続くであろう後半戦、香川は自身の価値を再び示さなければならない。

文=河合拓

リーガ・エスパニョーラ

By 河合拓

フットサル専門誌Pivo!編集部⇒サッカーマガジン編集部⇒ゲキサカを経て、フリーランスに。現在もサッカー、フットサルを中心に取材活動。

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