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【徹底分析】ホームで勝利必須の日本、難敵サウジの攻略法とは?

2016.11.14

オマーン戦を4-0で勝利した日本。15日、首位サウジとの埼スタ決戦を迎える [写真]=Getty Images

 日本代表は15日に、2018 FIFAワールドカップ ロシア アジア最終予選で首位を走るサウジアラビアと対戦する。11日のオマーン戦は“仮想サウジ”の意味合いもあったが、システムの違いやオマーンが若手中心で来たこともあり、戦術的には参考にしにくいものがあった。

「サウジアラビア戦はもっともっと厳しくなるだろう」

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はそう気を引き締めるが、日本がホームで勝利することが困難かと言えばそうではない。DF吉田麻也(サウサンプトン)は「しっかり戦えば能力的には日本の方が上だと思う」と語る。

 ここまでのサウジアラビアの戦いを見ても十分に勝機はあるが、相手の特徴を把握して、良さを出させないことが重要だ。ここでは攻撃と守備に分けて解説する。

【攻撃】自陣ではつなぎ、敵陣では仕掛ける

 サウジアラビアはどのような攻撃を仕掛けてくるのか。オランダ人のファン・マルバイク監督が指導していることもあり、基本的には後ろから丁寧につないでサイドに起点を作るスタイルだが、つなぐ選手と仕掛ける選手がわりとはっきりしているのが攻撃の特徴だ。

[4-2-3-1]をベースにディフェンスラインとボランチでボールを運び、相手陣内で1トップか2列目の3人がボールを持って前を向けば、その選手が積極的にドリブルを仕掛けてくる。そこから細かくつなぐケースはあまり無く、一発のミドルシュートやラストパス、クロスを積極的に狙ってくる傾向が強い。

 その中で10番のMFナワフ・アルアビド(アルヒラル)はプレーの選択肢が多く、MFタイシール・アルジャッサム(アルアハリ)とのワンツーなども使ってくる。2列目の3人はポジショニングが流動的であり、局面によってアルアビドが仕掛けに参加してくるエリアは異なるが、とにかくボールホルダーを自由にさせないことを優先的に考えて守備のバランスを取っていく必要がある。

 基本的には前の4人で仕掛けるが、サイドを起点にする場合はもう1、2人が攻撃に絡んでくる。その頻度が最も高いのは右サイドバックのDFハッサン・ムアト・ファラタ(アルシャバブ)だ。彼がクロスを上げて来る場合、ゴール前には4人の選手がターゲットとして構えている。1人ひとりが特に危険なわけではないが、ゴール前でごちゃごちゃするとこぼれ球なども発生しやすいので、的確にクリアしていく必要がある。

 最も危険なのは高い位置のドリブルでファウルを誘ってくること。最初から意図的にファウルさせようとしているわけではないかもしれないが、横にかわしに行きながら、守備者にコンタクトされると簡単に倒れる。ドリブラーとの一対一は正当なタックルでもコンタクト無しにボールを奪うことは簡単ではない。

サウジアラビア

ファウルを誘うプレーには注意が必要だ [写真]= Getty Images

 いざボールを持って前に向かれた時は、タイトに守りながら注意して対応する必要がある。もっとも、その前にサウジアラビアの攻撃を潰してしまえば、深い位置でファウルを気にする必要もない。吉田は「つなごうとするんですけど、最終的にはロングボールが多いかなと思いますね」とも言う。日本のディフェンスが前からのプレッシャーで簡単につながせないこと、ロングボールを蹴られてもDFラインが落ち着いて跳ね返し、セカンドをマイボールにしていきたい。

 セットプレーはPKを与えないことが第一だが、高い位置の直接FKも危険だ。キッカーは右利きのアルジャッサムか左利きのMFヤヒア・アルシェハリ(アルナスル)で、角度があまり無い位置だとギリギリまでどちらが蹴ってくるか分からない。GKの西川周作(浦和レッズ)はUAE戦でFKから失点しており、かなり意識的にトレーニングしているようで、いざそういうシーンになれば日本の守護神を信じるしかない。

 では、日本が突くべきポイントはどこか。

【守備】3ラインの間に隙が生じやすい

 3ラインをベースとする守備は基本的に組織としてオーガナイズされているが、2列目の選手がそれほどタイトにプレッシャーをかけてくるわけではないので、相手陣内では基本的にボランチとディフェンスラインとの勝負になる。ボランチのMFアワド・アルファラジ(アルナスル)とMFアブドゥルマレク・アルハイブリ(アルヒラル)は中央を固めるが、あまりワイドにスライドしてこないため、その外側は自由にボールを持ちやすい。

 ボランチの外側にあるスペースを有効活用しながら、4バックの間を突いていきたい。1人がDFの間に入ると、その選手に寄せる守備者の周囲にギャップが生じやすい。そこを別のアタッカーが同時的に突けば、スルーパスなどからフリーで裏に抜け出すことが可能だろう。そうした状況で最後に立ちはだかるのは経験豊富なセンターバックのDFオマル・イブラヒム・オスマン(アルナスル)。相棒のDFオサマ・ハウサウィ(アルヒラル)も健在だ。

 左右のサイドバックは縦の仕掛けには強いが、カットインの対応に甘さが見られる。FW原口元気(ヘルタ・ベルリン)やFW齋藤学(横浜F・マリノス)、FW浅野拓磨(シュトゥットガルト)は一度ワイドなポジションを取ったところから、鋭くサイドバックの内側を狙っていけば、そのままシュートやショートクロスなど、ペナルティエリア内での決定的なプレーに持ち込める可能性は高い。攻めるサイドを変えながら、そうした仕掛けができる状況をどんどん作っていくことが有効だ。

浅野拓磨

サイドから仕掛ける場面を多く作ることが重要になる [写真]=Getty Images

 サウジアラビアの最大の弱点がセットプレー、中でもCKの守備。特に0-0の状況では最も得点の期待がかかるシチュエーションだ。純粋な高さにしても、180センチを超えるのはセンターバックの2人とFWのナイフ・ハザジ(アルナスル)ぐらいで、左サイドバックのDFマンスール・アルハルビ(アルアハリ)は170センチだがゴール前の守備に参加している。だが、それ以上に問題なのは周囲の動きにまどわされてマークする相手を自由にさせるケースが目立つことだ。

 MF清武弘嗣(セビージャ)などがシンプルに正確なキックをニアかファーに蹴ることができれば大きなチャンスになるが、ショートコーナーやサイドチェンジで揺さぶりをかけるのも有効だ。ヘディングを得意とするFW大迫勇也(ケルン)はセットプレーの得点力にも期待がかかるが、吉田やDF森重真人(FC東京)がゴールする可能性もある。少し後ろの位置からタイミング良くゴール前に飛び込んでいく選手に最もゴールのチャンスがあるかもしれない。

文=河治良幸

By 河治良幸

サッカージャーナリスト。プレー分析を中心に、Jリーグから日本代表、海外サッカーまで幅広くカバー。

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