日本代表のトレーニングに参加した長友と森重 ©JFA
「若い選手たちが躍動していて、それを見てうれしい気持ちになりましたね」。そう言って、DF長友佑都(インテル)は下の世代の台頭を素直に喜んだ。
4-0で勝利したオマーン戦から一夜明けた12日、日本代表は茨城県内で練習を実施。3日後に迫った2018 FIFAワールドカップ ロシア アジア最終予選のサウジアラビア戦に向けて調整を行った。体調不良でオマーン戦はベンチ外だった長友もフルメニューをこなし、復調をアピールした。
オマーン戦前、長友はこんなことを言っていた。「躍動感がないというか。みんながサッカーを楽しむ勢いのようなものが落ちているのかなと正直、思う」。ブラジルW杯以降の日本代表に抱いていた不安を口にすると同時に、次のロシアW杯に向けて若手の突き上げに物足りなさを感じているようだった。「若い選手にはギラギラしたものを出してほしい。そして、やっぱり僕らももう一度、心の底からそういうものを出す気持ちが大事」。それは挫折や逆境を経験して三十路を迎えた長友だからこその言葉であり、また自戒の念も込められていた。
その言葉に応えるように、オマーン戦では若手や新戦力が躍動。長友も「僕らが初めて代表に入った時のような生き生きとした、ギラギラとした気持ちが何人かの選手に見られたのでうれしかった」と振り返り、競争を歓迎した。
「僕らがポジションを奪ってきたように、若い選手がポジションを奪っていかないといけない。30歳を超えた選手が何人も出ているのは世代交代や底上げがうまくいっていない証拠。それは日本サッカー界にとっても良くないことだと思う。僕らを押しのけるくらいの選手がどんどん出てこないと、世界で勝つのは厳しくなる」
もちろん、簡単にポジションを譲る気はない。この最終予選で未だ出場がない長友は、「出たい気持ちは強くなっている。その気持ちを強く持って準備をしているし、トレーニングでも体中から出している」とサウジアラビア戦での先発奪回を狙う。同じ北京五輪世代のDF森重真人(FC東京)もまた、「今はもしかしたら追われる立場かもしれないけど、今の立場は自分が望んできたこと。『自分が試合に出続けたい』という思いを常に持ちながら、危機感を持ちながらやっています。今の自分にはまったく満足していない」と“ギラギラ”を失ってはいない。最終予選の行方を左右する大一番で勝ち点3を手にできるか。世代間の競争という勢いを、サウジアラビア戦にぶつけたい。
文=高尾太恵子
By 高尾太恵子
サッカーキング編集部