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【コラム】ハリルへの提言 サウジとの大一番に“川崎の35歳”と“長身FW”の招集を

2016.10.31

日本代表への招集に期待がかかる中村憲剛(左)とハーフナー・マイク(右) [写真]=Getty Images,VI Images via Getty Images

 勝負の11月が近づいている。10月最終週の欧州各国リーグとJリーグを受けて、11月初旬に日本代表のメンバーが発表される。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督のチームを取り巻く状況は、10月の2018 FIFAワールドカップロシア アジア最終予選当時とほとんど変わっていない。岡崎慎司がレスターで信頼を勝ち取っているのはポジティブな材料だが、所属クラブでポジションをつかみ切れていない海外組はなお少なくない。ゲームには絡んでいるものの、いまひとつ調子が上がっていない選手もいる。

 もっとも、これまでにはなかったプラス材料もある。9月、10月はW杯最終予選を2試合連続で消化したが、今回はテストマッチを戦うことができる。11月11日にオマーンを迎え、4日後にサウジアラビアと向き合う。ゲーム勘やゲーム体力に不安のある選手にとって、オマーン戦は貴重なトレーニングマッチだ。フィジカルコンディションを高められるだけでなく、コンビネーションを確認する機会としても大きい。

 さらに加えて、2試合連続で日本国内でのゲームだ。長距離移動による疲労や時差の影響を受けずに、ここまで首位を走るサウジアラビアとの“決戦”に臨める。

 条件は整っている。つまりそれは、言い訳の余地がないことを意味する。ここまで3勝1分けで首位のサウジアラビアに、必ず勝点で並ばなければならない。これはもう、歴然としたノルマである。

 サウジアラビアと引き分けた場合も、致命的に追い詰められるわけではない。ただし、来年3月以降の後半戦5試合で、ホームでオーストラリアに勝ち、アウェーでサウジアラビアに勝つといったことも必要になってくるはずだ。アウェーのUAE(アラブ首長国連邦)戦は、絶対に落とせない。来るサウジアラビア戦がドローに終わってしまうと──ライバルの動向次第というところはあるものの──ロシア行きのハードルは確実に高くなる。ホームできっちり勝点3をつかむことで、アウェーゲームは勝点1を許容範囲とする余裕を持ちたい。現状では数字的にもメンタル的にも、マージンを持てていない状況だ。

 さて、メンバーはどうなるのだろう……と書きたいところだが、ハリルホジッチ監督が大胆な方針変更をするとは考えにくい。

 サウジアラビア戦はホームゲームである。ボールを握る時間は間違いなく長い。それがそのまま試合の主導権の掌握にはつながらないが、10月のオーストラリア戦のような戦いにはならない。スペースと時間のないなかでゴールをこじ開け、カウンターへのリスクマネジメントを怠らないことが、勝点3奪取へのシナリオだ。

 攻撃のポイントは、仕掛けとリスタートになる。

 相手の守備ブロックの外でボールをまわしているだけでは、バランスを乱すことも、スペースを作ることもできない。密集へ飛び込んでいく仕掛けが欠かせず、ドリブルを得意とする選手を有効活用するべきである。

 勇敢な仕掛けの先には、リスタートの獲得がある。FKやCKの重要性については、いまさら説明する必要もない。スコアを動かす手段のひとつになる。

 ハリルホジッチ監督が持つ最良のキッカーは、言うまでもなく清武弘嗣だ。ただ、セビージャでの彼は不遇をかこっている。オマーン戦でコンディションを上げられるとはいえ、プランBを用意しておきたい。

 中村憲剛(川崎フロンターレ)である。ハリルホジッチ監督自らが「構想に入っている」と明言した「川崎の35歳(10月31日に36歳の誕生日を迎えた)」を、サウジアラビア戦のメンバーに加えたい。リスタートのキッカーになれるだけでなく、パスの供給役にもフィニッシャーにもなれ、ゲームコントロールもできる。本田圭佑(ミラン)、香川真司(ドルトムント)、岡崎らとも、すぐに分かり合える素地がある。スタメンから外れても、精神的なリーダーになれる。招集することのデメリットは、何ひとつない。

 リスタートの脅威度を増すために、空中戦を得意とするFWも招集したい。

 ハーフナー・マイク(ADOデン・ハーグ)は分かりやすい。相手ゴール前に構える彼に、対戦相手が無警戒でいられるはずがない。無関心でいられるはずがない。その結果として、彼ではない選手が決定的なチャンスを迎えることができる。チームメイトの得点チャンスが拡がることにも、ストロングヘッダーを招集する効果があるものだ。

 プライド、虚栄心、見栄え、といったものは何も要らない。ハリルホジッチ監督にはただひたすらに勝利をつかむためのメンバーを選び、戦術を練ってほしいのである。

文=戸塚啓

By 戸塚啓

スポーツライター。法政大学法学部法律学科卒。サッカー専門誌記者を経て、フリーランスとして20年以上にわたってスポーツ現場を取材。日本代表の国際Aマッチは、2000年3月からほぼ全試合を現地取材。

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