21日に埼玉県内でトレーニングを開始した日本代表 [写真]=兼子愼一郎
2018 FIFAワールドカップ ロシア アジア2次予選ラストとなる3月24日のアフガニスタン戦と、29日のシリア戦(ともに埼玉)。最終予選進出のかかる重要な2連戦に向け、21日から日本代表が埼玉県内で合宿をスタートした。
初日は本田圭佑(ミラン)、香川真司(ドルトムント)、川島永嗣(ダンディー・U)、ハーフナー・マイク(ADOデン・ハーグ)を除く20人が参加。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督恒例の開始前ミーティングが10分程度行われた後、選手たちはランニングへと突入。前日試合だった槙野智章、柏木陽介の両浦和レッズ勢と森重真人(FC東京)、欧州組の岡崎慎司(レスター)や清武弘嗣、酒井宏樹(ともにハノーファー)、酒井高徳(ハンブルガーSV)、原口元気(ヘルタ)、長友佑都(インテル)の9人は室内でストレッチをして早めに上がり、それ以外はボールコントロールやミニゴールを使った6対6などで汗を流した。
欧州組は昨年11月のシンガポール・カンボジア2連戦以来の代表合流となる。が、プレミアリーグ優勝争いの主役になっているレスターの岡崎のような者がいる一方、ブンデスリーガ1部残留が絶望的になったハノーファーで苦悩する清武、酒井宏、山口蛍のような者もいて、それぞれの状態はまちまちだ。キャプテン・長谷部誠(フランクフルト)にしても今シーズンは左右のサイドバック、右MF、ボランチと多彩な役割を託され、今月の監督交代後はコンスタントに試合に出場できていない。吉田麻也(サウサンプトン)が「僕もVVVフェンロで残留争いに身をおいたことがあるので、気持ちはよく分かりますけど、代表は代表なので。チームで出ている人も出ていない人も、勝っている人も勝っていない人も、代表で勝つために出しきらなければいけない」と強調した通り、いかに頭を切り替えてこの代表2連戦に集中するかが肝要なのだ。
山口などは今回が欧州組として初めての代表合流になるため、より高い集中力を持って9日間活動しなければならない。「やっぱり時差ぼけなんで眠たい(苦笑)。やっぱりドイツでプレーして個の技術がすごく高いなと思うし、プレッシャーも速いからフリーで持てるシーンが全然ない。日本で取れたボールがこぼれたり、取れなかったりすることも感じます。ホントに1つ1つが気を抜けないってのはあります。今はドイツの経験をそこまで代表に持ってこられるわけじゃない。ただ、ハノーファーでは勝ちが全然ないから、代表2試合で勝ち癖をつけて帰ることが大事。その勢いをチームに持っていきたいです」と彼は代表をクラブでの浮上のきっかけにしたいと考えている。相手が格下のアジア勢であろうとも、自分自身の確固たる成長が感じられれば、今後にも少なからず希望が見えてくる。そういう方向に持っていきたいものだ。
逆に岡崎の場合は、快進撃を見せているレスターから多くのプラス要素をもたらせる。本人は「クラブのことを還元とはあまり捉えてない。代表はまた違う場所だし、いつも通り結果を出しに来ている」と冷静な口ぶりではあったが、この3カ月間コンスタントにピッチに立ち続けてきた自信と手応えは他の誰よりもあるはずだ。
「今はチーム自体が物凄いスピードで上まで上がってきている。チームは改めて1人じゃなくて全員の力が噛み合って勝てるんだと感じてます。代表もすごいスピードで上がるためには、やっぱり型にはまるプレーをしていても勝てない。規律を守るべきところは全員がやらなきゃいけないけど、やっぱり結果を出すようなやつらはちょっとぶっ飛んでる。言われてることだけをやってたらレスターはこの順位にはいない。全員が持ってる力を出して、それが全てが噛み合ってるから、今みたいなありえない状況になってる。『共鳴する』じゃないけど、みんなが全力でやってそれが連動すれば日本代表は一番強くなる。全員が本能的にサッカーできた時こそが、日本代表のホントの力だと思う」と岡崎は説得力のある発言をしていた。
全員が持てる力を全て出し切ることの重要性は、2014年のブラジル・ワールドカップ惨敗を経験した本田や川島ら全員が強く認識している部分。今回、岡崎が自身の経験値を踏まえてこう発信してくれたことで、チームが前向きな方向に進めばいい。クラブの明暗に関係なく、山口なら日頃のタフな環境で磨き続けている球際や寄せの強さ、長谷部なら10年間の代表キャリアから体得した戦況の読み、吉田であれば冷静なカバーリングとフィードといった長所や武器を最大限組み合わせて、「最終予選も確実に勝てる」と思わせるような力強い戦いを、今回の日本代表には強く求めたい。
文=元川悦子
By 元川悦子