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1トップの競争激化を歓迎…ライバルの成長すら促す岡崎慎司の“人間力”とは

2015.11.15

14日にプノンペン市内での練習に参加した岡崎慎司 [写真]=兼子愼一郎

 日本代表の1トップ争いが一気に激化している。だが、このポジションに長らく君臨してきた岡崎慎司レスター)は、泰然自若として前を見据える。

 10月にテヘランで行われたイランとの親善試合で武藤嘉紀(マインツ)が起死回生の同点弾を叩き出し、11月12日の2018ロシアワールドカップ アジア2次予選のシンガポール戦では金崎夢生鹿島アントラーズ)が豪快な左足ボレーを決めて勝利の火付け役となった。

 その一方で、抜群の勝負強さを武器に1トップとして不動の地位を築き、代表通算47ゴールという頭抜けた実績を残してきた岡崎慎司も彼らの勢いに押されつつある。今シーズン開幕前にマインツから新天地への移籍を選択したが、そのイングランドで出番が減少傾向にあり、ゴールを思うように奪えていないことも少なからず影響しているのだろう。それでも彼は競争激化を前向きに受け止め、自身の新たな活力にしようとしている。

「メンバーの固定は良くないというのが自分の考え。今の時期にいろいろな選手が力をつけていくことが重要だと思うし、出ていない選手がそれを見て『もっと出たい』って気持ちを出さないと。今、こうやってベンチになることも、自分が望んでいたこと。それも自分自身が1トップに入った時に満足できるプレーをしていなかったからだと思う。やっぱり一番はチーム(レスター)でFWとしての役割を重ねなければいけないのかなと。今は日本代表として呼ばれているし、代表チームが勝つこと、予選を突破することが最優先。いろいろな選手が活躍することが重要だと思います」

 岡崎はとにかく代表全体の底上げを第一に考えている。彼自身の言葉からも分かるとおり、岡崎慎司という男は他の選手のいい部分とともに、自分に足りないところを素直に認めて、真摯に受け止められる度量の大きさを持っている。武藤や金崎らに対してもリスペクトを欠かすことはない。

「夢生は今まで苦しい時にボールをキープしたりするタイプじゃなかった。すごく体が強くなった。ポルトガルとか海外で頑張った分、伸びたんじゃないかと思います。武藤にもマインツに行く前から『1トップをやったほうがいい』と言ってた。あのプレースタイルは絶対にハマると思っていたから。あいつが今のマインツにもたらしたものは大きいし、そこでマッチした武藤も素晴らしい」と彼は自分の後釜に座った後輩にあえてアドバイスまでしていたのだ。その器の大きさは常人のレベルをはるかに超えている。

 その武藤や金崎を含め、FWはコンスタントに結果を残さなければ評価されない。ある試合で華麗なゴールを奪っても、その後にノーゴールが続けば、周囲の目線は一気に厳しくなる。まさにレスターでの岡崎がそうだった。開幕2戦目のウェストハム戦でプレミア初ゴールを奪った時には「レスターは最高の補強をした」とイングランドメディアに大絶賛されたが、最近は苦境ばかりがクローズアップされがちだ。そういう悩みをいかに克服するかがFWの勝負どころだと彼は指摘する。

「マインツにいる武藤もそうだけど、今後自分と同じ疑問を持つようになると思うんですよね。チームが勝てない時に『どうしたら自分が勝たせられるようにできるか』と。『どうしていかなきゃいけないか』って悩みはどこへ行っても尽きないから。日本代表でプレーしていても、1試合良くても次に悪かったら『やっぱりダメか』って思われる。1トップはそういうポジションなんです」

「自分も右サイドから1トップに行ってみて、本当に重圧が掛かるポジションだと思った。チャンスメークだけじゃダメだし、ゴールを取るか取らないか、ボールを背負った時にキープできるかできないかという、ホントに一番大事な部分を任されているんだと。だからこそ、最前線の選手は“個”の部分でも存在感を見せなければいけない。そうなるためにも、みんながいい争いをすることが大事だと思う。大迫(勇也=ケルン)や曜一朗(柿谷=バーゼル)だったり、まだ芽が出てないかもしれないけど、今後につながるプレーをしている選手も海外にいるし、みんなが高いレベルでやらないと。前の選手が存在感を発揮するようになれば、チームの全体の三角形、五角形(総合力)はデカくなるんじゃないかと思いますけどね」

 この物言いからも、彼がいかにチームを第一に考えているかが理解できるだろう。お互いに刺激を与え合うようになることが日本代表、そして自分のレベルアップにつながるという確固たる信念を持っているからこそ、あえてライバルたちにエールを送る。自分自身も努力を惜しまない。

 そんな男の人間性に周囲も惚れ込んでいる。後輩の宇佐美貴史ガンバ大阪)や原口元気(ヘルタ・ベルリン)は代表合宿のたびに岡崎を質問攻めにしているというのだ。

「僕はよくオカちゃんに質問をします。『点を取る時に何を考えてるのか』とか。意外に『こだわってない』って言ってましたけどね。『こだわってたらイライラしちゃうから、得点にはこだわっていないんだ』と。そこは参考にしようと思ってます。それと、オカちゃんをマネしたいと考えて取り組んでいるのが、左右両サイドからのダイアゴナル(斜め方向)の走り。ザックさん(アルベルト・ザッケローニ元監督)の時代はあれで何点取ったのか分からないですよね。相手と駆け引きしてタイミングを合わせる才能はすごい」と、原口は正直な意持ちを口にしていた。

 原口や宇佐美がトップデビューを果たした頃、岡崎は滝川第二高の土のグラウンドで泥だらけになってゴールに向かっていた。清水エスパルスに加入後、20歳を過ぎてもまだJリーグ公式戦のピッチにはまともに立てなかった。そういう遅咲きの努力家にエリートの若者たちが尊敬の念を抱くことは日本代表、日本サッカー界にとってもプラスになる。まさに“切磋琢磨”の一言だ。

 岡崎を中心とした代表のFW争いは今後も繰り広げられていくだろう。その第一人者には、コンスタントなゴールという形で絶対的な存在感を示し続けてもらう必要がある。誰よりも岡崎自身が17日のカンボジア戦で結果を求めていることだろう。だが、決して焦りはない。懐の深い努力家が周囲を高めることで自らをも磨き上げ、日本代表と日本サッカー界をこれまで以上にけん引していく。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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