2015.06.14

「1秒たりともムダにできない」…29歳の誕生日に決意を語った本田圭佑

本田圭佑
シンガポール戦に向け練習を行なう本田圭佑(左) [写真]=兼子愼一郎
日本代表から海外まで幅広くフォローするフリーライター。

文=元川悦子

 2018年ロシア・ワールドカップ2次予選初戦・シンガポール戦(埼玉)が3日後に迫ってきた。この重要な一戦に挑む日本代表は13日夕方、決戦の地・埼玉入りして2日目のトレーニングを2時間にわたって消化した。

 この日も24人全員が参加。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督恒例の屋外ミーティングを6分行ってから、練習がスタートした。ランニング、アップ、2グループでのスピードと強度を意識したパス回しといった流れはここ数日同様だったが、そこからいきなり10対10に突入。イラク戦先発のフィールドプレーヤーが赤ビブス、それ以外がビブスなし組に入った。前者は長谷部誠(フランクフルト)をアンカーに置いた4-3-3、後者は山口蛍(セレッソ大阪)と谷口彰悟(川崎フロンターレ)がダブルボランチに並んだ4-2-3-1の布陣。この陣容で約10分×2本プレーした。

 指揮官はクサビを使いながらタテへ素早く展開する攻めを身振り手振りで繰り返し要求。1本目には、赤ビブス組が、長友佑都(インテル)→吉田麻也(サウサンプトン)→酒井宏樹(ハノーファー)とボールをつなぎ、本田がクサビを受けに来て、柴崎岳(鹿島アントラーズ)に落とした瞬間、酒井宏が一気に右から抜け出したところに1本のタテパスが通るといういい形を見せた。その際には指揮官も「ビヤン」とフランス語で絶賛。2本目も柴崎のスルーパスに長友が走り抜けたシーンに拍手を送っていた。ボールウォッチャーになりがちなシンガポール相手には、このような素早い展開が効果的だとハリルホジッチ監督は考えているのだろう。選手たちもその重要性を今一度、頭に叩き込んだと見られる。

 18時15分になったところで「セットプレーをやりたい」という指揮官の意向から練習が非公開に。ここから選手たちは30分以上ボールを蹴り続けた。「FKからのゴールが足りない」というハリルホジッチ監督の要求に応えようと、日本代表では約2年直接FKからの得点がない本田圭佑(ミラン)も創意工夫を凝らしたと見られる。

「場面、場所、状況によって蹴るのは今までもそういう感じ。責任持って蹴る選手がいいキックをできればいいかなと思います」と話す彼は2013年8月のウルグアイ代表戦(宮城)以来の直接FKからのゴールを虎視眈々と狙っているようだ。

 この日は本田の29歳の誕生日。練習後、報道陣からバースデーケーキを贈られると「みなさんの前で笑顔をバンバン出すタイプじゃないんで」と言いつつも、心から嬉しそうな素の本田圭佑を見せてくれた。シンガポール戦は20代ラストイヤーの初ゲーム。イラク戦で代表通算29点目を挙げたこともあり、7年前(2008年6月のバーレーン戦)初キャップを飾った埼玉で、節目となる30点目を奪えれば理想的だ。

「自分としては、もう29点も取ったかっていう印象なんですけど。この間、大阪(2009年5月・チリ戦=代表初ゴール)で1点取ったのを思い出すぐらい、時が経つのは早いなと。時の流れのはやさに対して怖さを感じています。やっぱり1秒足りとも無駄にできない。これから何試合できるか分からないですけど、1点でも多く取っていきたいと、そういうふうには思っていますけどね」と背番号4を背負う男はしみじみと語っていた。

 本田の代表キャリアを振り返ると、ここまでの道のりは決して楽ではなかった。初招集されたのは、イビチャ・オシム監督時代の2006年11月のサウジアラビア戦(札幌)。そこから何度か呼ばれたが、オシム時代の出場は叶わず、ピッチに立つことができたのは、岡田武史監督(現FC今治代表)体制になってから。日本人屈指の指揮官は2008年1月にVVVフェンロへ移籍し、飛躍しつつあった彼に期待を寄せたのだろう。しかし、左サイドハーフで初出場したバーレーン戦(埼玉)は何もできず、足踏み状態が2009年まで続く。「俺が(新たな環境で)時間がかかるのはみなさんも知ってる通り。代表でも時間がかかったのはご存じでしょうから」と本人も後に語ったことがある。

 そんな遅咲きのアタッカーが爆発したのが2010年。同年1月のCSKAモスクワへ移籍でチャンピオンズリーグ決勝トーナメントの舞台に立ち、南アフリカ・ワールドカップの大活躍。カメルーン戦での先制点、デンマーク戦での直接FK弾で彼はエースにのし上がることに成功する。アルベルト・ザッケローニ監督就任後の2011年のアジアカップでもMVPを獲得。この時点で本田は日本に不可欠な存在として君臨していた。

 だが、その後も右ひざの負傷や体調不良、2014年に扉を叩いた新天地ミランでの苦境など挫折は続く。自身2度目のブラジル・ワールドカップでもコートジボワール戦(レシフェ)でワールドクラスの先制点を挙げたが、チームは惨敗。本人も「自分の物差しをゼロから作り直さなければいけない」と発言。原点に戻って3度目の世界舞台となるロシアに挑む決意を固めた。初キャップから7年という歳月でこれだけ濃密な時間を過ごした選手は滅多にいない。そういう日々を本田は忘れるつもりは一切ない。

「1試合への重みはこの年齢になって非常に感じるようになってきています。若い時に感じていた『成り上がり精神みたいなもの』を捨てずに、1試合に懸ける思い、絶対に勝つんだと、何があっても勝つんだという気持ちをもっと強く持っていきたいと。向上させていきたいなと思います。29歳の年は、これが終わっても来シーズンのチームでの戦いが待っている。満足するような結果をチームとしても、個人としても出せていないんで、もう1度、気を引き締めなおして、しっかり有言実行したいなと思ってます」

 ロシアへの幕開けとなる次戦では、本田圭佑の代表30点目、そして日本の圧倒的な強さを我々の目に焼き付けてほしいものだ。

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