合宿初日のトレーニングに参加した長谷部誠(中央)
文=元川悦子
16日のシンガポール戦(埼玉)から幕を開ける2018年のロシア・ワールドカップアジア2次予選。11日にはイラクとの親善試合(横浜)も控えているため、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は万全を期すべくシーズン終了直後の欧州組を前倒しで招集。1日から千葉県内でトレーニングを開始した。
初日は長谷部誠(フランクフルト)、川島永嗣(リエージュ)、吉田麻也(サウサンプトン)、清武弘嗣、酒井宏樹(ともにハノーファー)、大迫勇也(ケルン)、酒井高徳(シュトゥットガルト)、原口元気(ヘルタ・ベルリン)の8人が参加。恒例の青空ミーティングを15分弱行って選手たちを力強く鼓舞した後、フィジカル強化に移った。
大半の選手が1週間程度のオフを取った直後にも関わらず、指揮官はピッチ外周1分20秒〜2分・トータル22分半という強度の高い走りを手始めに、タッチライン約110mを18秒で走るダッシュ、センターサークル内でのパス交換、狭いエリアでの6対2、腹筋背筋・体幹強化などハードなメニューをふんだんに盛り込んだ。練習時間は初日から2時間強。吉田は「あんまり休むわけにはいかないでしょ」と苦笑いしていたが、長谷部は想定外と受け取ったようだ。
「結構きつかったですね(苦笑)。監督は『明日からのトレーニングのウォーミングアップ』だって言ってましたけど、やってる僕たちとしてはかなりきついフィジカルトレーニングだったかなと。みっちり2時間超えてますし、なかなかハードかなと感じます。自分たちが想定していたより量が多いですね」とキャプテンは本音を吐露していた。
こうやって指揮官が初日からハードな練習を課すのも、コンディションを整える意味合いはもちろんのこと、選手たちの競争意識を煽る意味合いが込められていると見られる。ハリルホジッチ監督体制になって35歳の遠藤保仁(ガンバ大阪)が招集見送りとなり、3月のチュニジア、ウズベキスタン2連戦に参戦した今野泰幸(ガンバ大阪)、5月の国内組代表候補合宿に参戦した大久保嘉人(川崎フロンターレ)も外れ、フィールドプレーヤー最年長になった長谷部は厳しい現実をより強く感じている。
「前回、大枠であれだけの合宿をして『僕たちは友人である、ファミリーだ』っていうメッセージを送ってくれましたけど、今回は23人(招集は25人)で、前回選ばれた中から結構ふるい落とされてますし、シビアなところは間違いなくシビア。その辺の危機感はやっぱりあります。今回ダメだったら次はないかなというくらの危機感を持たせてくれます」と、長谷部はハリルホジッチ流のアプローチにいい意味で刺激を受けていた。
吉田にしても、年長の丹羽大輝(ガンバ大阪)がセンターバック争いに新たに参戦してきたことがあって、サバイバルの熾烈さをより感じているという。
「シーズンは終わりましたけど、あと2試合いいパフォーマンスを出さなきゃいけないし、これから代表チームで競争が激しくなるというのはみんな自覚してること。他の選手が来る前にしっかりコンディションをまた上げてかなきゃいけないかなと思います」と自らに言い聞かせるようにコメントしていた。
3日には岡崎慎司(マインツ)と長友佑都(インテル)、5日には本田圭佑(ミラン)と香川真司(ドルトムント)が合流して欧州組が全員揃うことになるが、彼らだけのトレーニングである2〜7日は毎日2部練が予定されている。しっかりコンディションを整え、ベストパフォーマンスを出せるように持っていくことが、彼らにとっての最初の命題と言っていいはずだ。