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協会はアギーレ監督続投を支持…課題は選手層の薄さと決定力不足

2015.01.24

UAE戦後、香川に声を掛けるアギーレ監督 [写真]=Getty Images

 22歳の柴崎岳鹿島アントラーズ)の値千金の同点弾で1-1に追いつきながら、本田圭佑ミラン)と香川真司ドルトムント)のPK失敗で格下と目されたUAEにまさかの敗戦を喫した日本代表。アジア連覇はおろか、98年フランスワールドカップ出場前の96年UAE大会以来のベスト8敗退に、日本サッカー界はまたも重苦しいムードに包まれた。

 2014年6月のブラジルワールドカップで惨敗を喫してからまだ半年。選手たちもサポーターも4年前の2011年カタール大会に続く王者の座を得ることで、溜飲を下げたかったはず。その思惑から大きく外れる結果となり、本当にショックが大きかった。

 スペイン時代の八百長疑惑に巻き込まれている影響もあって、ハビエル・アギーレ監督の進退問題がより熱を帯びてくる可能性も少なからずある。だが、一夜明けた24日の早朝、シドニー空港で報道陣の取材に答えた日本サッカー協会の大仁邦弥会長は「アギーレ監督就任後のここまでのチームの持って行き方はさすが。いいチームになっている」と続投を支持する姿勢を鮮明にした。同時に、スペイン司法当局からの告発がまだ裁判所に受理されていない実情も明かした。スポンサー関係にも理解を取りつけ、アギーレ体制続行の外堀はすでに埋めている様子だった。

 続いてコメントした霜田正浩技術委員長も「PKで負けてしまって次のステージ進めないのは非常に残念。強い相手とあと2試合やってどれだけできるかを見たかった。皆さんに申し訳ないと思っています」とまずは陳謝した上で、「この4試合で将来進むべき方向は見えてきた。アギーレさんと毎日一緒にいるとロッカールームでの選手への働きかけとか、練習メニューの組み立て方、試合の采配など監督としての力量は素晴らしい。就任してからの時間も短かったし、今回は次へ進むための1つのステップ。この結果に対して今はどうのこうのは考えていません」と去就問題をシャットアウトして先へ進もうとしている意向が色濃く伺えた。

 確かに大仁会長や霜田技術委員長が言うように、アギーレ体制で戦った今大会の日本はアルベルト・ザッケローニ監督時代より攻撃バリエーションが多彩になり、守備面も安定感が増した。初戦からずっと同じスタメンで戦い、20日のヨルダン戦(メルボルン)から中2日で23日のUAE戦(シドニー)を迎えたことで、選手たちの動きが重く、非常に悪い入りをしてしまったことが響いたが、確かに内容面では前進した印象もあった。

「4戦連続先発が同じだったことは監督とも話はしてます。連戦になってくるので、選手のやりくりも必要になってくると思ってましたけど、勝ってるチームをいじらないというセオリーを今回はある程度のところまでは踏襲をしながらチームのベースづくりをやろうという話をしてましたんで。組み分けが出た時点で1位通過したらこういうスケジュールになることは分かっていたんで、そのつもりで準備もしてきました。もちろん選手は疲れてましたが、それを敗因に挙げたくない」と霜田技術委員長はあくまでチームの土台作りを優先するために、固定メンバーで戦ったことを強調した。しかし、2018年ロシアワールドカップでは30代半ばになる遠藤保仁ガンバ大阪)や長谷部誠フランクフルト)らベテランに依存し過ぎた嫌いも大いにある。土台作りを優先するなら、若い柴崎や武藤嘉紀FC東京)をもっと積極的に起用してもよかった。そのあたりは議論が必要になるだろう。

 今大会の日本は決定力不足が顕著だったが、それは今回に限ったことではない。ただ、本田と香川の2枚看板が沈黙したら点を取る術が見当たらないのもまた事実だ。特に香川はヨルダン戦で何とか1ゴールを奪ったものの、UAE戦に象徴される通り、イージーなチャンスを外しすぎた。4年前のカタール大会の準々決勝・カタール戦で3得点すべてに絡んだゴール前の鋭さとキレが今の彼からは残念ながら感じられなかった。

「真司はやはり代表チームで活躍してくれなきゃいけない選手の1人ですけど、次に活躍してくれる選手が出てこなきゃいけないし、ずっとこれから真司とか圭佑に頼っていく日本代表ではないので。真司も早く彼のトップパフォーマンスをもう1回取り戻して、代表で活躍してくれる日が1日でも早く来てくれることを望んでますけど、真司がダメなら俺がやるって選手も出てきてほしい。真司はまだまだトップパフォーマンスではない」と霜田技術委員長もエースナンバー10の不調を認めていた。だからこそ、彼らに依存したチーム作りは危険がある。清武弘嗣ハノーファー)など好調な若手をより積極活用していくことも、今後の日本代表に求められるテーマだ。

 昨年のアジア大会(仁川)に挑んだU-22日本代表が8強止まり、U-16、U-19代表がともにアジア予選敗退と、下の年代を見てもスーパーなタレントがいないだけに、日本の若返りは簡単ではない。かといって、今回のように計算できる選手ばかりを使っていても未来はない。勝ちながら選手を入れ替えチームを活性化していく難しさをどう克服していくのか。今こそ日本サッカー界は強い危機感を持ち、一丸となって問題解決に努力していく必要があるだろう。

文=元川悦子

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