前日練習を行った日本代表MF香川真司(右から二番目)[写真]=兼子愼一郎
日本代表の2015年アジアカップ(オーストラリア)連覇の行方を左右すると見られるイラク戦(ブリスベン)が翌16日に迫った。12日のパレスチナ戦(ニューカッスル)は4-0で勝利した日本代表だが、遠藤保仁(ガンバ大阪)が下がった後半はペースダウンが著しく、内容的にも芳しいものではなかった。この調子でイラク戦に入ってしまうと2連勝が遠のくことになりかねない。ここはしっかりと気合を入れて第2戦に挑むことが肝要だ。
その日本代表は15日夜、試合会場のブリスベン・スタジアムで公式練習に臨んだ。それに先駆けてハビエル・アギーレ監督と、この一戦で代表キャップ数150を記録する遠藤が会見に臨んだ。
指揮官の八百長疑惑の告発をスペイン司法当局が受理したというニュースが前夜に飛び込んできて、会見場は物々しい雰囲気に包まれたが、「私はサッカーの話しかしない」とメキシコ人監督は疑惑に関する質問を全てシャットアウト。大会に集中する強い姿勢を見せた。遠藤が150試合出場について「明日出られるかどうか次第ですが…」と笑いを取ったことも場を和ませた。アギーレ監督は遠藤のキャラクターに助けられた格好だ。ピッチ上の選手たちも動揺した様子は感じられず、重要なゲームに向けて集中を高めている様子だった。
パレスチナ戦では4得点中3点をお膳立てしたものの、アギーレ体制発足後はいまだゴールのない香川真司(ドルトムント)も、今度こそ会心の一発を決めたいところ。そこはイラク戦勝利の行方を大きく左右するポイントになるかもしれない。本人も「パレスチナ戦でゴールに絡めたことはよかったですけど、やっぱり得点が欲しいので、そこは常に狙いたいですけど」と得点への渇望を口にし続けている。
インサイドハーフは攻守両面に絡まなければならない負担の大きいポジションだけに周囲のサポートは欠かせない。左FWで2戦連続で先発すると見られる乾貴士(フランクフルト)は、「1つポジションも下がっているし、難しい部分は出てくるけど、真司は常に前に来ているし、時間の問題だと思う」と強調しつつ、「前を見ているあいつを生かすためにアシストできたら波に乗れると思う」と、外からいいボールを供給することを意識するつもりだ。同じ左サイドに位置する長友佑都(インテル)も「イラクには右サイドに強力な選手がいるので、そこの1対1の勝負はかなり大事になっていく。クロスの精度も高めてしっかりとチャンスを作っていかないといけない」とサイドのマッチアップで勝つことで、より香川がチャンスになるような形をお膳立てしていくという。
長友と香川はザックジャパン時代、左のタテ関係を形成し、日本の生命線とさえ言われてきた。が、2014年ブラジル・ワールドカップではそのタテのラインが徹底的につぶされ、2人とも沈黙してしまった。今は乾を交えたトライアングルの関係になったが、左サイドバック職人としては香川をサポートしたい意識は変わらない。「明日決めますよ、彼は」と長友は改めて太鼓判を押していた。
そうやって周りから後方支援を受ける香川だが、イラク戦では高温多湿の気象条件とも戦わないといけない。試合前夜の20時時点でも気温30度、湿度50%と、ブリスベンはニューカッスルとは比べものにならないほど暑い。「この気候だから体力的に消耗しやすいので、90分を通してうまく戦わなければいけない。より効率のいいサッカーをしていきたいし、ペースを自分なりにコントロールしたい。交代で出る選手だったりも大事だと思います」と、香川自身も頭を使いながら戦っていく重要性を口にした。
エースナンバー『10』の得点が生まれれば、日本は確実に上昇気流に乗っていける。明日は香川に期待したい。
文=元川悦子