ウルグアイ戦で選手に指示を送るアギーレ監督 [写真]=Getty Images
ハビエル・アギーレ監督はベネズエラ戦後に「この日本代表のスタイルは確立されていない。世界中のどの監督に任せても、5試合でスタイルを確立することは難しい」と語った。
実際のところベースとなる[4-3-3]にしても基本中の基本だけ伝えて、あとは選手の判断にゆだねている部分が大きいし、そのために起きたミスもある。アタッキングサードに関してはチャレンジのミスがあってもいいが、ビルドアップで代表としては考えられないミスが何度か起きたのも、相手のプレッシャーが厳しいからという理由だけではない様だった。
もしアジアカップまでこの2試合しか無かったら、アギーレ監督はもっと慌ててリスクの少ない形を取っていたかもしれないが、選手選考も含め、未知の部分を大きくしたのだろう。ただ、どちらにしても対戦相手の特徴や試合展開によって、守備の位置や3人の中盤の組み合わせ、ポゼッションの度合いなどは変化がありそうで、10月、11月の4試合でも基本的な方向性をさらに踏み込んで伝えながら、対戦相手に合わせてアレンジを加えるはず。
アジアカップではもう少し高いポジションで戦うチームになるかもしれないし、布陣も多少入れ替わるかもしれないが、今のところ気になるのは中盤を省略したビルドアップが多すぎることだ。アギーレ監督は相手のプレッシャーがかかっているところで無理につながないこと、速いテンポで縦につなぐことを指示している。そのためCBから前線に当てる、ウイングに付けるパスが多くなったが、中盤でアクセントやリズムの変化を起こさないと、相手の罠にはまりやすく、前線の選手がボールを持っても強引な仕掛けがメインになってしまう。
ベネズエラ戦の終盤など、相手が疲れて間延びしたところでは中盤の選手がボールを持つ回数も増えたが、今回のウルグアイやベネズエラに対し、これだけ中盤を使えない様だと、中立国でブラジルと対戦したら、ほとんど中盤を使わないサッカーになってしまうかもしれない。アギーレ監督はさらにテンポを上げることを求めているが、相手が強くなればなるほど、カウンター依存度の強いチームになっていくのではないか。
「素晴らしいスタイルだと言われても、ランキング44位だったりすれば、あまり良いと言われないスタイルでも20位以内に行きたい。だからスタイルはあまり重視していない」という話の筋は分かるし、日本が世界で戦うには柔軟な対応力のあるチームになっていくことが重要だが、ベースとして中盤を使う意識がないと、対応力はあっても、自分たちからアクションを起こせないチームになってしまう。その意味でも、アジアカップに向けてアギーレ監督がどういうコンセプトを注入してくるのか。今後の選手選考も含めて期待と不安が入り混じる状況だ。
文=河治良幸