2014.09.10

まだまだ険しい4-3-3完成への道も、武藤・柴崎ら新戦力の躍動には手応え/元川悦子

日本代表
武藤(右から2人目)の先制ゴールを祝福する日本代表メンバー [写真]=Getty Images

 ハビエル・アギーレ新監督の初陣となった9月2連戦は、5日に札幌で行われたウルグアイ戦が0-2の完敗、9日に横浜で行われたベネズエラ戦が2-2のドローと、残念ながら待望の初勝利はお預けとなった。それでも新指揮官の目指すサッカーへの理解が深まり、武藤嘉紀(FC東京)や柴崎岳(鹿島アントラーズ)ら新戦力が結果を出すなど、収穫も少なくなかった。

 9月1日から9日間の合宿で、アギーレ監督は自身が目指す4-3-3の基本コンセプトを選手たちに植えつけた。その一端が7日の公開練習で明らかになり、両センターバックがボールを持ち上がって1トップやサイドに長いパスを出し、そこからスピーディーなカウンター攻撃を組み立てるスタイルがベースになっていた。3トップのワイドに入った本田圭佑(ミラン)や柿谷曜一朗(バーゼル)はザッケローニ監督時代とは比べものにならないほどのアップダウンを求められる。岡崎慎司(マインツ)は「それをやらないと世界では勝てない。走って守備をするというスタンダードを実践したうえで個々のストロングポイントを出さないと。今、世界ではカウンターからより多くのチャンスが生まれているのも事実。そのことはみんなとも話してます」と、仲間とともにザック時代のポゼッションスタイルと決別を再確認したという。

 そういう中で2試合を戦ったわけだが、ウルグアイ戦は4-3-3の初めてのトライで、初キャップの坂井達弥(サガン鳥栖)や皆川佑介(サンフレッチェ広島)らが入り、細貝萌(ヘルタ・ベルリン)や森重真人(FC東京)らも不慣れな位置でプレーしたことから、基本戦術をこなすだけで手一杯という状態だった。多くの選手たちが「守備は組織的にうまく守れていた」と前向きにコメントしたが、その肝心な守りに2度のミスが出て2点を献上。攻撃面ではあまり迫力を出せなかった。皆川と武藤が決定機を迎えたものの決めきれず、本田や岡崎ら既存メンバーもよさを出せないままタイムアップを迎えることになってしまった。4-3-3完成への道が険しいことを再認識させる初戦だった。

 それから3日の練習を経て、迎えたベネズエラ戦も前半はかなり苦戦した。この日はスタメン5人を入れ替え、ブラジル・ワールドカップメンバーの大迫勇也(ケルン)や柿谷らが先発した。実績ある攻撃陣が揃ったことでもう少し攻めに厚みが加わると思われたが、彼らの距離感が遠く、どうしても後ろが重くなる傾向が強かった。不用意なミスからカウンターを食らうなど、逆にやりたいことをベネズエラにやれていた印象だった。それでも前半38分の柴崎→大迫→森重→柿谷とパスがつながり柿谷がGKと1対1になった場面は、アギーレ監督が狙っているカウンターからのビッグチャンスだった。こういう形をどうやって増やしていくかが今後の課題と言っていいだろう。

 後半になって岡崎と武藤が出てくると、日本の攻撃は一気に活性化された。マインツで1トップを務める岡崎は、屈強なDFを背負っても何とか時間を稼いだり、タメを作る工夫ができる。彼が前へ前へと全体を押し上げてくれるから、武藤や本田、柴崎らも高い位置を取れる。武藤の得点も岡崎がDFと競ったこぼれ球を彼が拾って決めたものだし、2点目も岡崎が左に流れて上げたクロスに柴崎が合わせた形だった。そういう意味でも少し前進が見えたのではないだろうか。

 武藤と柴崎という90年代生まれの若い世代が躍動したこともチームの活性化につながった。本田も「1点目も2点目も完全に(自分を)おとりにされて決められるという昔の自分を思い出すシーン。でもそこは勝負なんで。僕は当然、満足できないですけど、彼らには今日の試合で結果を出せておめでとうと言いたい」と悔しさをにじませつつ、チームの底上げを前向きに受け止めた。ザック体制では固定した選手が毎回のように試合に出ていてチームが沈滞化した印象が強かっただけに、競争激化は非常にいい部分だ。

 こうしたプラス面があった一方、2試合で4失点という失点の多さは相変わらずの課題だ。日本は以前から不用意なミスからゴールを与えてしまう傾向が強かったが、せっかく守備ブロックを作る戦術を導入しても同じことを繰り返していたら意味がない。ウルグアイやブラジル相手にワールドカップなどの大舞台で1点を与えたらその時点で負けるというくらいの強い危機感を守備陣はもちろんのこと、チーム全体が刷り込まないと、こうした問題点は改善されないと言える。

 攻撃面もベネズエラ戦の後半以外は散漫な印象のまま終わってしまった。日本にはロッベン(バイエルン)のような傑出した個の力とスピード持つアタッカーはいないだけに、3トップだけでは相手を崩しきれない。インサイドハーフや両サイドバックが確実に攻め絡むようないい距離感を保たないと、今後も苦戦を強いられるだろう。アギーレ監督は攻撃に関してはそこまで細かい約束事を与えていないというから、選手たちが自ら連携を取りながら攻めのバリエーションを広げていくべきだ。そういう積極性や自主性をどう育てていくか。そこも今後の大きなテーマだ。

 10月には新潟で行われるジャマイカ戦と、シンガポールで行われるブラジル戦の2連戦が組まれている。そこに誰が選ばれるかは今後3週間のクラブでの出来不出来次第だが、とにかく内容ある白星がほしい。次こそはキッチリと勝って、新たなチームに弾みをつけてもらいたいものだ。

文=元川悦子

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