日本代表のジョーカーと成り得るのは? [写真]=Getty Images
2013年11月のベルギー戦を最後に、日本代表は活動を停止している。FIFAの国際Aマッチデーがないためで、次回のテストマッチは3月5日のニュージーランド戦だ。
「ヨーロッパでマッチメイクすべきでは?」
「国内開催でいいのか?」
「ニュージーランドでよかったのか?」
どれも正論である。
世界各地で代表チームが活動するこの日は、スペイン対イタリア、ドイツ対チリ、オーストリア対ウルグアイ、イングランド対デンマークといったゲームが予定されている。日本がW杯で対戦するコートジボワールは、ベルギーとのアウェーゲームに挑む。
ひるがえって、ザックのチームは?
『ありがとう国立競技場』というキャッチフレーズがつくニュージーランド戦は、代表チームの強化よりもイベントの色彩が前へ出ている。冠スポンサーとの契約も、国内開催となった一因にあげられる。
ニュージーランドの招聘は、ギリシャを想定したもののだろう。高さとそれに伴う強さには、共通点が見受けられる。相手がカウンタースタイルで臨んでくれば、戦略的にも類似する。
とはいえ、「強化」という意味では物足りない。国立競技場には惜別ムードとともに、13年9月のグアテマラ戦やガーナ戦のような雰囲気が漂うだろう。「勝って当然」という空気が。
国内開催のメリットは、リフレッシュ効果だ。ヨーロッパでプレーする海外組にとって、国内のテストマッチは気分転換の意味合いも含む。気心のしれたチームメートと日本語でコミュニケーションをはかれるのは、心がほぐれる時間だと聞く。オフの時間に日本のテレビを観て、日本食を味わうのもリラックスできる時間だ。
ゴールが見えてきた2013-14シーズンの各国リーグへ向けて英気を養い、ニュージーランド戦を通じてW杯の準備を再スタートさせる。そうした目的が達成されるなら、国内で行うゲームも悪くはない。
その一方で、ザックに求められるものがある。
2010年4月のセルビア戦を前にした岡田武史監督(当時)は、「23人のW杯登録メンバーのうち、70パーセントぐらいは固まっている。残り30パーセントは色々な状況を想定して決断する」と話した。
長居スタジアムで行われたセルビア戦は、0-3の完敗という結果に終わる。2月の韓国戦に続く敗退は猛烈な逆風を呼び込むが、この試合で岡田監督は「残り30パーセント」の答えを見つけている。セルビア戦で途中出場した矢野貴章を、南アフリカへ連れて行くことになるのだ。
W杯開幕を直前に控えて、ザックが見つるべきものとは? そのひとつは“ジョーカー”だ。
高さならハーフナー・マイクと豊田陽平、ドリブルなら乾貴士や齋藤学、スピードなら宮市亮といったカードは揃っている。だが、誰をどのように使っていくかの整理がついていない。攻撃のジョーカーに成り得る大久保嘉人の招集も、2013年は見送られた。
ニュージーランド戦は約4カ月ぶりのテストマッチだ。レギュラークラスに相応のプレー時間を与えたいと、ザックは考えるだろう。そのうえで、12番目以降のメンバーをどのように構成するかについて、考えを巡らせる必要がある。
彼我の力関係を考えても、積極的な選手交代のできる相手だ。いつものメンバーで予定どおりに勝つだけでは、W杯の準備にはならない。
もうひとつのポイントは、<23番目>の選手だ。前回大会で川口能活が担った役割である。試合に出る可能性はほとんどないが、チームをまとめあげる経験者だ。
川口、楢崎正剛、中村俊輔らがスタメンを後方支援した4年前を、記憶にとどめている選手はいる。だが、そのほとんどは先発出場が濃厚な選手たちだ。サブの選手が盛り立てることで、チームは一体となる。
02年の中山雅史と秋田豊、10年の川口のような役割を、ザックは誰に託すのか。組織力を強みとする日本に不可欠な人材の見定めも、W杯を勝ち抜くための必要条件である。
文/戸塚啓