2013.11.20

本番まで約200日…W杯本大会へ、日本代表の成長は続く

日本代表
ベルギー戦で勝利を収めた日本代表 [写真]=Photonews via Getty Images

 はっきり言えば、想像以上の出来だった。

 日本代表は19日にベルギー代表と敵地で対戦し、3-2で競り勝った。勝利という事実は、取り立てて大騒ぎすることではない。今の日本は世界のどこの強豪国が相手だろうと、白星を掴む可能性は秘めている。それでも、試合前に不安はあった。

 何より、コンディションである。

 日本は、16日にオランダ代表と試合をこなしていた。2-2の競り合った試合から、中2日でのアウェー戦である。対するベルギーは、14日にコロンビア代表とホームで対戦していたことで、日本戦は中4日で迎えていた。アルベルト・ザッケローニ監督もオランダ戦後に、「日数が少ないのでどこまで回復できるかというところを考えたい」と懸念を口にしていた。埋めようがないハンデと思えた以上、攻め込まれながらも少ないチャンスをものにすることで活路を開くことが現実的だったはずだ。

 しかし、蓋を開けてみれば完全に杞憂に終わった。

 先発メンバーを6人入れ替えた日本は、オランダ戦の疲労を感じさせることなく終始主導権を握った。オランダ戦同様にミスで先制を許してしまったが、組織立ったサッカーで逆転勝利を掴んでいる。前線からの守備は非常に効果的で、ディフェンスラインから攻撃を組み立てる姿は、ベルギーの攻撃が前線のタレント任せだったこともあり、より際立った印象を残した。

 これまでは、攻撃か守備の一方だけに比重が大きく傾くきらいがあったが、今回の2試合で披露した攻守が一体となったサッカーは、指揮官が遠征前に語った「理想のバランス」という面で明確な指標になり得るはずだ。短期決戦のワールドカップを戦う上で最大の懸念点とも言える連戦でのコンディション維持の面でも、これまで出場機会に恵まれていなかった選手達が高いパフォーマンスを披露したことで、一定のめどが立った。これまでも度々あったパフォーマンスの乱高下は影を潜め、選手をローテーションで起用することにより、チーム全体のコンディションを保つことが可能となった。長谷部誠が語ったように「チームのなかで目に見えて競争が増えてきている」と、競争意識の高まりを呼び込むことにも成功している。

 試合後に今野泰幸が、「やるべきことが間違っていなかったなということが、わかったという手応え」を語った通り、周囲の喧騒に惑わされることなく自分達の信念を貫いた結果、年内最後の一戦で来年の大一番への道筋が見えてきたのである。強豪国に相手に勝利した結果のみならず、今回の遠征で得た収穫は数多い。

 そして、まだまだ大きな伸びしろが残っている。

 先制点のシーンである。

 15分に右サイドをロメル・ルカクに突破され、折り返しが中央に送られる。GK川島永嗣が飛び出していたことでゴール前はがら空きだったが、酒井高徳が戻っていたため、事なきを得たかと思われた。ところが、酒井は背後から迫る相手選手に気づいておらず余裕を持って対応したところ、ゴール目前でケヴィン・ミララスに入れ替わられてボールを流し込まれてしまっていた。

 何しろ、敵地ながら序盤から主導権を握れていた。攻勢に水を差すかのような先制点の献上については、試合後に本人も「引きずっていましたよ」と振り返ったが、何度となく天を仰ぐ姿から、傍目からもショックの大きさは窺い知れた。

 ただ、気落ちする酒井に対して、手を叩き大声を張り上げて鼓舞する選手がいた。試合中にも何度となく酒井に声をかけ、ハーフタイムにロッカーに戻る際は、気にするなと言わんばかりに背後から尻を叩いて切り替えを促す。振り返れば、オランダ戦で同じくミスから先制点のきっかけを与えた内田篤人に対して、盛んに声をかけて奮い立たせていたのも彼だった。

 今回の連戦ではセンターバックのパートナーが代わりながらも2試合続けて強国のFWと堂々と渡り合った、吉田麻也である。

 吉田自身、3月のヨルダン代表戦や6月のコンフェデレーションズカップ、8月のウルグアイ代表戦と、今年に入って失点に直結する大きなミスを犯していた。その度、激烈な批判にさらされてきたが、忘れがたい苦い経験は彼を何倍にも大きくしたようだ。

 実際にオランダ、ベルギーという世界のトップレベルと対峙した今遠征でも、チーム自体は4失点を喫したが、彼自身で言えば強豪国の選手に対しても互角の勝負を演じていた。パフォーマンスはもちろんのことながら、ミスで気落ちする仲間を鼓舞する姿は、紛れも無く守備陣の柱と言えた。

 ミスを犯したことは猛省するべきではあるが、そんなことは言われるまでもなく選手自身が最も感じていることだろう。酒井にしろ、オランダ戦の内田にしろ、ミスを犯した後のリカバリーは素晴らしかった。互いに得点に絡むプレーを披露し、日本の攻勢に間違いなく貢献していた。彼らの姿勢が、更なる伸びしろや成長を感じさせる所以である。

 身を持って感じる強烈な痛みや苦しみが、成長を加速させる肥やしになるのであれば、親善試合のミスも全くもって無駄ではない。選手の一戦一戦にかける思いを軽視するわけでは毛頭ないが、重要なのはテストマッチでの勝敗ではない。何より優先されるべきは、本大会での成果である。とは言え、代表は来年3月まで活動がないため、今遠征での手応え、あるいは悔しさはというものは、各々が所属チームで自身の実りに変えていくしかない。

 日本がベルギーを破った同日、ヨーロッパでのプレーオフをはじめ、世界各地でワールドカップの出場権をめぐる熾烈な争いが繰り広げられた。フランス代表が地獄の淵から蘇り、想像もつかない重圧がかかっていたであろうクリスティアーノ・ロナウドは、驚異のハットトリックでポルトガル代表に世界への切符をもたらした。大きな苦しみが躍進の基になるのであれば、彼らもまた、計り知れない経験を経たことになる。

 既に出場権を得ている各国も、当然ながら熟練度の向上に余念はない。王者のスペイン代表はもちろん、ドイツ代表もクラブの隆盛が好影響を生み出すはずだ。そして、迎え撃つのは、ブラジル代表である。王国の威信にかけても万全の準備で大会に臨んでくることは目に見えている。前進を続けているのは、当然日本だけではない。

 ワールドカップの開幕まで、約200日。黄金に輝くトロフィーをかけた争いの開戦まで、既に7カ月を切った。まさに、成長は待ったなしである。

文●小谷紘友

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