2013.10.16

欧州遠征連敗は後退ではなくW杯での推進力に…過渡期の日本が模索する新たな道

本田圭佑
セルビア戦で失点後に肩を落とす本田 [写真]=Getty Images

 大袈裟ではない。拳をピッチに叩きつける音がスタンドまで届いた。

 セルビア代表に0-2と敗れた日本代表は、ベラルーシ代表にも封じ込められて、0-1と2試合連続となる完封負けを喫した。ビハインドを負いながらも逆転の糸口を掴みあぐねていた68分、ピッチ中央でボールを受けた本田圭佑がディフェンスラインの背後をうかがう岡崎慎司へ、相手選手ともつれ合いながらもスルーパスを送った。しかし、ボールはベラルーシ守備陣の網にかかり岡崎に届くことはなかった。倒れ込みながらパスの行く先を追っていた本田も、自責か怒りか苛立ちか、得点への歓喜に繋がらず行き場の失った感情を隠すことなく発露した。

 ワールドカップ本大会の出場権を得られなかった2カ国相手に2試合連続で完封負けという現実は、アウェー戦という面を差し引いても精神的に堪えたはずだ。

 ベラルーシ戦後の会見に出席したアルベルト・ザッケローニ監督の表情は、心なしか普段よりも覇気がないように感じられた。

「ホームでやるのとアウェーでやるのでは、内容に差が出てきてしまっていることは認識しているから、そこに関してはやはり私の責任なのかなと思う」

 らしくなく弱気に思ったが、指揮官は自身を奮い立たせるように、言葉を繋いだ。

「遠征の最大の目的は、例えば結果が出てこないリスクはあるが、それに対して自信を失うのではなく、こういう課題があるわけだから、それをいかに解消していくのかと。チームに対しても話をしようかと思っているが、ここに自信を失うために来ているわけではなく、自分達の持っている問題や課題をいかに解決していくのかという気持ちでいようということは言うし、当然私自身が先頭に立って何がいけないのか、またホームとアウェーでの戦いの差がなぜあるのかという原因を自分がまずは見つけなければいけないと思っている」

 日本は今、過渡期なのだろう。

 すぐにでも、日本が守備を固めて結果を追求するような方向転換を行えば、ある程度結果は保証される。南アフリカ・ワールドカップでデンマークやカメルーンを相手に白星を収めてベスト16入りをしたことで、それは既に証明された。

 しかし、今の日本は新たな道を模索している最中である。

 ホームやアウェーに関わらず、試合の主導権を握った上で勝利をつかもうとしている。ただ、バージョンアップに挑んでいるからこそ直面する現実も、当然ながら存在する。

 今回の遠征では、2試合ともある程度ボールは保持できた。セルビアのシニシャ・ミハイロヴィッチ監督も試合後に、日本について「とてもコンパクトなプレーをし、技術的にオーガナイズされたキレのあるプレーをしてきた」という評価を口にしている。社交辞令や勝者の余裕を考えれば、そのまま鵜呑みにできる言葉ではないが、半分は本音だろう。

 ホームと言えど、日本と主導権の奪い合いを展開すれば劣勢に回る公算は大きい。ならば、試合のペースを譲る代わりに、日本のミスに乗ずることやカウンターを狙うことで、かえって攻撃の効率を上げるという考えに至っても不思議ではない。実際にセルビアとベラルーシは、ともにカウンターからの得点もあり、見事に完封勝利を収めている。

 日本も、ゴール前を固めてくる相手に対して手段は講じた。ベラルーシ戦では本田がボールを低い位置で受けることによって、遠藤保仁と長谷部誠の前線への飛び出しを生み出していた。試合途中には3-4-3にシステムを変更し、指揮官も「チーム全体がまとまって、良い距離で戦えるようになったのではないかと思っている。それで、攻撃も少しだが良くなったのではないか」と手応えを語った。ところが、いずれの打開策も得点という結果を生み出すことはできなかった。

 相手の堅守に手詰まりを起こすと、逆にミスやカウンターを受ける機会が増え、ファウルで逆襲を止めるシーンも目立った。親善試合ということも計算には入っていただろうが、警告覚悟の守備はワールドカップといった累積警告が関わってくる大会では、1試合で何度も犯せるものではない。対戦国のレベルが上がるにつれて、速攻の精度も高まってくることも見逃せない。

 スペインやブラジルといった世界のトップクラスの強豪国は、ゴール前に人垣を作られようが、ミスを犯すこともなくボールを繋ぎ続けることができる。必然的にカウンターを受ける機会は少なく、パスを回すことで綻びを作り、相手の守備決壊を生み出す。日本の目指しているであろう形とも言えるが、個人とチームの質ともにいまだ追いつけていないということが現状である。

 2試合連続で完封負けという結果を見れば、チームの後退と見る向きもあることは否定できない。しかし、憶測になってしまうが、アウェー戦ということも考えて日本も対戦国同様に守備を固めて相手の出方をうかがう戦い方を取れば、結果が違っていた可能性はある。一方で、チームは結果に対して一喜一憂するためのような戦い方ではなく、自分達の信念は貫いた。結果が出なかったことで称賛はされるべきではないが、評価に値するのではないか。

 本田は試合終了のホイッスルが鳴ると、ロッカールームに足早に引き上げていった。ところが、試合中に人目もはばからずに感情をさらけ出したことと反して、ミックスゾーンに再び姿を表した際、表情から曇りは感じられなかった。

「ワールドカップ用にさらに大きなものを披露しようと思って、今はそれを組み立てている段階ではある。前と同じようにすれば得点もできたかもしれないけれど、新しくやろうとしていることが上手くいかず、以前の良さが出てない。そのへんのちぐはぐさは若干あると思う。ただ、監督中心にそこは悲観していない。例えばアジアカップで優勝したときのようなサッカーをワールドカップでやるつもりはないし、一歩も二歩も先に行こうとしている」

 質問者をしっかりと見据えて言葉を紡ぐ姿は、試合で沸き立った感情を押し殺すかのように、自信に満ちていた。

「(意見を言い合うことは)どんどん出すべきだし、正直ぶつかるのが遅いくらいだと思っていますけど。結局は同じ日本人でも、育ってきた環境やサッカーをしてきた環境が違うので、サッカーに対する考え方は攻撃においても守備においても違うと思う。そこをぶつけあっているというのは、非常にポジティブだと思う。ちなみに前回のワールドカップではそれをスイスの(直前)キャンプで行ったので、そこは少なくとも進歩している。危機感は既に、あのワールドカップと似たような感じで、『このままだと負けるよ』と今の段階で話し合いになっていることは、その時点での進歩なのかなと思っています。ミーティングに妥協は許さないと思います」

 日本は、11月にも再び欧州の地で2試合の親善試合を行う予定となっている。既に決まっている試合は、前回のワールドカップで準優勝を果たし、グループリーグで勝利を許したオランダとの対戦。もう1試合は、ワールドカップ出場を決め、同国史上最強のタレントを誇るベルギーが濃厚となっている。

 ワールドカップを見据えた相手としては申し分ないが、まだ本番ではない。今遠征での2連敗を生かす道筋は、かつての戦術回帰ではないはずだ。チーム全体が共有した危機感を、目指すべき目標への推進力にすべきではないか。

文●小谷紘友

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