2013.09.11

選手の意識を変えるザックの言葉…攻守のバランスを見出すために

日本代表
先制されながらもガーナ戦は3得点を奪い、快勝した日本 [写真]=足立雅史

 記者会見は監督にとって一個の戦場だ。欧州出身の監督は、よりその傾向が強い。彼らは言葉の弾丸を携えて壇上へと進む。8月29日、グアテマラとガーナの試合に向けたメンバー発表記者会見。そこへ臨んだアルベルト・ザッケローニ監督もそうだった。

 ザッケローニ監督への質問は、守備そのものと、守備陣の人選に関するものが目立った。それは織り込み済みだったのだろう。紡ぐ言葉は流れるようで、事前に準備してきたのだと察せられた。そこで強調されていたのは、この一点のみだったと言ってもよい。

「ディフェンスラインだけの問題ではない」

 アジア予選でクオリティーを欠くチームを相手にするうちに、日本代表の守備の規律は明らかに落ちてしまっていた。本田圭佑も香川真司も守るべきときに守っていなかった。大雑把に要約してしまえば「お前らちゃんと守備をしろよ」ということだろうか。新たに招集した大迫勇也と齋藤学について問われた際も「大迫も齋藤も攻守両面からチームに貢献できる選手だから選んだ。現代サッカーで求められるのは攻守で貢献できる選手であり、それがグローバルな選手だ」と強調することを忘れなかった。監督として求めるのが派手な攻撃でのアピールではないことを強調しつつ、二人にポジションを奪われたくないと思うであろう選手たちには「じゃあ、ちゃんと守れよ」と言外のメッセージを送っていた。

 もちろん、これだけでは言葉の外側で叱責を受けた攻撃陣の選手たちが、すねてしまう恐れもある。「コンディションが上がっていなかった。シーズン的に良くない時期だったからだと思う」と、かばうのも忘れなかった。サボりではなく、動けなかったから仕方ないというロジックの提示は、裏を返せば「もう9月なんだから、体は動くだろう。ちゃんと守れよ」というメッセージでもある。

 ロッカールームの中のことはわからないが、実際に選手を呼んでから直接的、間接的に強調されたのも、「ちゃんと守れよ」という部分だったことは想像に難くない。なぜなら、ピッチ上でそうした傾向は反映されていたからだ。グアテマラ戦については、相手のクオリティーの問題はあった。ただ、そうしたチームを相手にしたとき、しばしばないがしろになっていた守備面の規律は安定的に維持されていた。奪われたら、奪い返す。シンプルに前から圧力をかけるプレーを中盤から前の選手たちが実践していた。前が守備で頑張れば後ろの士気も上がるもの。グアテマラ戦はアジアで戦う内に少々ぼやけてしまった部分を再獲得していく過程となった。なんだかんだ言って、勝利に優る薬もないのだ。心理面でも「ゼロ」に抑えて勝った意義は大きい。「無意味な試合」と酷評する向きもあるが、新たな選手を混ぜて刺激を与えるという点を含め、価値のある試合だった。

 このため、ガーナ戦の「内容」については、あまり心配していなかった。実際、守備の規律を保っていた日本代表のパフォーマンスは総じて合格点だろう。重要なのは前線が守備の意識を保った状態で、きっちり得点を奪えていること。長らく得点能力こそが課題を言われてきた日本代表だが、現段階で「とりあえず点は取れるから、失点を減らしたい」となっていること自体が進歩の証である。「得点はできるものの、失点が多い」チームのほうが、逆のケースよりも改善しやすいもの。得点力は個人の力に負う部分が大きいからだが、守備は違う。日本のCBが個人能力を欠くという一面は確かにあるが、サッカーは「CBが強くないから守れない」といった競技ではあるまい。日本の前線には「とりあえず得点はできる」と期待させるだけのタレントがいるのだ。先月の時点で早くも「ブラジルW杯はもうダメだ」といった声すら聞かれて驚いたが、個人的には日本代表の前途についてそうした絶望感は持っていない。安易な楽観をする気はないが、この代表は決して弱くない。そして何より、もっと強くなれる可能性がある。

文●川端暁彦

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