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日本代表のアイデンティティを貫くために…今こそ吉田を使うべき

ゴディンと競り合う吉田 [写真]=嶋田健一

 コンフェデレーションズカップの3試合で9失点を喫した日本代表は、ホームにウルグアイ代表を迎えた一戦でも、4ゴールを奪われた。強豪国との対戦の中で大量失点が続いた原因について、アルベルト・ザッケローニ監督が試合後に口を開いた。

「自分達のミスということが非常に目立つなと。そういうミスが多く出ていることが失点の多さに繋がっているのではないかと思っている」

 ウルグアイ戦でも、27分に喫した1失点目は、相手のロングボールに対してディフェンスラインが揃わず、ルイス・スアレスに吉田麻也の背後のスペースをつかれたことが、ディエゴ・フォルランのゴールに繋がった。吉田が前半終了時にロッカーに引き上げる際、給水したボトルをそのままピッチに叩きつけたところからも、失点シーンへの悔しさを垣間見ることができた。

 ところが、52分に喫した3失点目も、再びミスが直結する格好となった。左サイドからのクロスボールに対して、吉田のクリアが小さくなったところを、ペナルティエリアでスアレスに拾われ、右足のシュートを叩き込まれている。

 指揮官も「今日の試合に関してはウチのミスの多さが出てしまった。ウルグアイは非常にミスが少なかった。これが勝負を分けたと思う」と敗因について言及した。一向に減らない失点。とりわけ、2失点に絡んでしまった吉田への風当たりは強まっている。

 ただ、強豪国と対することで、粗だけが露見されたわけではない。最終ラインからの縦パス1本を見ても収穫はあった。

 ウルグアイ戦では、東アジアカップで代表デビューを果たした6選手が招集された。常連組の中に新戦力が入ることで、どのような化学反応が起こるかが注目される中、1トップでは柿谷曜一朗が先発出場した。動き出しに特長があり、これまで長らく1トップを務めてきた前田遼一とは持ち味は異なる。連携面での不安も予想されたが、最終ラインからは過去の試合同様に1トップへの縦パスも供給されていた。

 そして、パスを通していたのは、吉田だった。

 吉田自身、「時間がたてば噛みあってくると思う。自分がどうやって出したいかとか、どういう動きをして欲しいかということは伝えているし、凄い能力の高い選手なので、すぐフィットすると思う」と一定の手応えを語るとともに、今後への期待を抱かせるコメントも残した。

「どっちも一長一短というか、遼一さんはポストプレータイプなので、くさびは出しやすい。曜一朗は裏に抜けるという選択肢も多いし、可能性も持っている選手だと思う」

 当の柿谷が試合後、「コンセプトの中で自分が崩しに関われるように」とチーム戦術に慣れることの重要性を語ったことに対し、吉田の言葉は新戦力が持ち味を発揮することでチーム力にさらなる幅をもたらすことを示唆している。周囲が持ち味に合わせられるだけの技術を持っているからこそ、新戦力がコンセプトでがんじがらめになることも避けられる。

 ウルグアイ戦後には、大量失点を喫したことから守備に関わる質問が相次いだが、ザッケローニ監督は守備的な戦術に舵を切ることは明確に否定している。

「我々には、我々のアイデンティティがあり、それを貫き通さないといけない」

 アイデンティティとはもちろん、これまでにも指揮官が度々口にしてきたように、「自分達がゴールを狙う」という攻撃的な姿勢にあたる。最終ラインから攻撃の起点になることも求められ続ける以上、技術に優れた吉田の存在は今後も必要となってくるはずだ。実際にウルグアイ戦でも、日本の1点目にあたる香川真司の得点は、遡れば相手のクリアボールを吉田がヘディングでフリーの香川につないだところが起点となっていた。

 ザッケローニ監督は「多く得点を狙うチームには失点のリスクがそれだけ伴う」と語るが、それはもちろん、ミスに目をつぶると言うわけではない。ウルグアイ戦で2失点に関与した吉田は1人目の選手交代として、56分に伊野波雅彦と入れ替わりでベンチに下げられた。森重真人が東アジアカップに続き招集されていることからもあり、危機感は相当に煽られているはずである。

 ウルグアイ戦で日本の2点目を直接FKで叩き込んだ本田圭佑も試合後には、「ピンチが失点につながるというのは今に始まったことじゃない。コンフェデのブラジル戦の1失点目もそう」と失点について語った。一方で、守備陣の心情についてもおもんばかっている。

「攻撃陣がそこをとやかく言うより、3点4点取れなかったことを反省した方がチームはいい方向に行くんじゃないかと、思っています。麻也や今ちゃん(今野泰幸)にしてもね、責任感が強い2人で、みんながここであまりネガティブなことを書かずにね、彼ら自身反省していると思うし、失点も考えている」

 確かに、ウルグアイ戦では致命的とも言えるミスを犯した。より対人プレーの強さに特化した選手を加えれば、一時的に失点は減少するかもしれない。反面、最終ラインから繋ぐ意識が希薄になるのであれば、失点数と比例してチャンスの数や得点数も少なくなる可能性は十分にある。

 目先の結果を求める、あるいはチームのアイデンティティに背くのであれば、問題はないだろう。ただ、グアテマラ、ガーナと続く9月の2連戦において、ザッケローニ監督が守備を最優先に置いた布陣や戦術を採用することは考えにくい。前田をはじめ、ウルグアイ戦で招集されなかった常連組が再びチームに組み込まれ、新たな連携が試される可能性もある。

 新戦力との融合は、各ポジションだけで完結する話ではない。選手、ポジションごとが有機的に関わりあうことでチームの形をなしている。失点を減らすために、各人が守備意識や危機意識を高める必要はもちろんある。同時に、今後も全体で得点していく姿勢を維持して、最終ラインでも攻撃の起点となれるパスの出し手が求められていくならば、吉田麻也が起用されるべきではないか。

文●小谷紘友

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