2013.08.15

W杯開幕まで約300日、ザック・ジャパンに求められる“刺激”とは

長谷部誠
ウルグアイ戦の先発メンバー [写真]=足立雅史

 来年のブラジル・ワールドカップ本大会開幕まで約300日。ザック・ジャパンは東アジアカップで代表デビューを果たした6選手を加えて、南米王者ウルグアイとの一戦に臨んだ。

 この試合では予選を勝ち抜いた主力組と新戦力との融合が注目されたが、東アジアカップ組からスタメン起用されたのは柿谷曜一朗のみ。後半途中に豊田陽平と山口螢が起用されたものの、森重真人青山敏弘工藤壮人には出番が与えられず、交代枠を2つ残したまま、大敗を告げるホイッスルがスタジアムに鳴り響いた。

 周囲はコンフェデレーションズカップを終えたチームにどれだけ変化を加えるのかを期待していただけに、結果と選手起用だけを見れば「消化不良」のようにも思われる。ただし、指揮官ならではの配慮とチーム作りにおけるステップだったと考えることもできるのではないだろうか。

 アルベルト・ザッケローニ監督は、ワールドカップ出場権の獲得後、「コンフェデが終わったら最終章に入る。そこから全員がスタート地点に戻り、新しい競争が始まることになる。Jリーグでも良い若手が育ってきており、良い競争があるのではないかと思う」と語っていた。

 その序章となったのが先の東アジアカップ、そこで目に留まった選手を招集したのが今回のウルグアイ戦だ。一方でこれまで試合出場にかかわらず呼び戻していた欧州組、中村憲剛や前田遼一といった常連組を「ベテラン、代表の常連の選手は信頼しリスペクトしているが、その選手たちのパフォーマンスは計算できる。トライする時には新しい選手を試してみたい」と招集を見送った経緯がある。

 現在、日本代表には予選を勝ち抜いた主力組、その他の欧州組と国内組、東アジアカップ組という“ラージグループ”ができたと考えていい。もちろんこれから台頭してくる選手もいるだろう。ポイントは本大会に向けてザッケローニ監督が彼らをどのように見定め、融合させていくか。そして本大会を戦う23人の組み合わせを考えていくかとなる。

 ウルグアイ戦後、本田圭佑は東アジアカップ組の柿谷について「準備期間が短い中で、初めてにしては非常に順応していた。本来はもう少しできるとは本人も思っているだろうし、Jで見せている実力を出し切れなかったと思う」と評したように、今回のスケジュールでは新戦力の実力を引き出し、現有戦力と融合させるための準備期間が足りなかったのは明らか。それでも指揮官は本大会に向けてのチーム作りにおいて、これまでスタメンで起用してきた選手をベースにしながら、新しい血を加えていく意思表示をしたのは間違いない。

 ウルグアイ戦の事前合宿に際し、一番最後に合流した内田篤人はチームの変化について、こう語っている。

「新しい選手が入って来て、ちょっと緊張感みたいなものはあった。誰が試合に出るのかって。静かにボール回しをしたりとかね。それも悪くないと思う」

 この内田が語った緊張感こそが、今のザック・ジャパンに求められる「刺激」だ。

 内田は以前、自分の置かれた立場について「一度(代表から)落とされるくらいのほうがいい」というコメントを残している。刺激と危機感を植えつけたいと考えたのだろう。ウルグアイ戦後には「(失点には)個人のミスも絡んできているし、もう一度考えなきゃいけないのかなと。システムとかは監督が考えることなので、選手同士で守備の意識を選手同士で話し合わなきゃいけない」とも話していた。

 世界と伍するためには、ちょっとしたミスが失点に絡んでいる現状、決定機をしっかりと決められない課題を改善していかなければ話にならない。

 本田はそのために必要なものとして「個の力の向上」を挙げている。当然ながら選手それぞれが意識を高めていかなければ、「個の力」が上がっていくことはない。

 そこでプラスになるのが、「刺激」という名の緊張感である。日本代表におけるポジション争いの激化を受けて各選手が意識改革し、所属チームに戻ってのトレーニングや試合でレベルアップを図ることこそが、代表チームの強化につながる。勝負どころの見極めや集中力の維持、危機察知能力、ゲームの流れを読む力も個々の進化が不可欠となる。ウルグアイ戦で失点に絡むミスをした吉田麻也の途中交代に関して、ザッケローニ監督は「予定どおり」というコメントを残しているが、それを本人を含むラージグループの選手たちがどう受け取るかだ。

 チームを率いる立場の人間として、ザッケローニ監督は今回のウルグアイ戦でいきなり大ナタを振るうのではなく、チームに少しの「刺激」を注入するにとどめた。そこにはこれまで重用してきた選手への配慮があったのだろう。ただし、その一方、コンフェデ、ウルグアイという強豪相手の試合で、良くも悪くも選手個々の技量や将来性において見えたものがあるはず。精神的支柱として位置する選手に対しても、“聖域なき改革と競争”をもたらすタイミングを検討すべきだろう。

 ウルグアイ戦でまずファーストステップを踏んだとすれば、指揮官には9月に行われる代表戦でさらなる「刺激」を入れていくことを期待したい。次回の代表招集はグアテマラ(9月6日/長居)、ガーナ(同10日/日産ス)との2連戦となることで今回よりも期間が長く、多くのメンバーを集めることが見込まれる。もちろん2試合を有効に使った「刺激」の入れ方も可能となる。

 本大会開幕までに残された時間は300日程度。指揮官がチームに投下する「刺激」が、競争意識と個々のレベルアップにいかなる変化と進化を生み出すのか。ザッケローニ監督の決断と思惑に注目だ。

文●青山知雄(Jリーグサッカーキング編集長)

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