2013.07.31

ろう者サッカー男子日本代表、アイルランドに敗れてベスト8進出ならず

試合終了後のGK松元卓巳 [写真]=中村和彦

 第22回ソフィアデフリンピックのサッカー競技は29日、グループリーグの最終戦が行われ、ろう者サッカー男子日本代表がベスト8進出をかけアイルランド代表と対戦した。

 グループリーグ通過のためには3点差以上の勝利が必要となった試合に向けて、「今日はみんなが歴史を変える日」と送り出されたスターティングメンバーは、GK松元、ディフェンスラインは左から桐生、細見、野呂、村田。ボランチには中島と竹内。2列目左に松本、右には古島、トップ下に渡邉、1トップに河野。第2戦に引き続きの先発となったのは中島、細見、古島。他の選手たちは第1戦以来の先発となった。

 アイルランドのシステムは4-4-2。ディフェンスと中盤の2ラインがスペースを消し、攻撃の際はロングボールをディフェンスラインの裏に放り込んでくる。日本はトップ下の渡邉が前線で体を張って起点となり、中盤でパスを回し隙を伺う。しかし前半10分、ボランチの中島が足をとられて転倒、ボールを奪われアイルランドに先制を許してしまう。日本は立ち上がり早々から、4点を取らなくてはならない苦しい展開となってしまった。

 まずは同点に追いつきたい日本は中盤でのパス回しから右サイドへ展開、松本がクロスを蹴り込むとアイルランドのディフェンダーがハンドの反則。日本にPKのチャンスが転がり込む。渡邉がGKの動きを見て冷静に蹴り込み、前半25分、日本は試合を振り出しに戻した。

 アイルランドのロングボールに対しては、ディフェンダーの桐生や村田がディレイ(攻撃を遅らせ)し、中盤と挟み込んでボールを奪いチャンスへとつなげる。28分には、河野が右サイドから裏に抜け出し強烈なシュートを放つものの、GKに阻止され惜しくもゴールにはならない。その後も、竹内、河野、渡邉、古島とパスが小気味よくつながるが松本のシュートは枠を捉えられない。逆に32分、アイルランドが裏へのロングボールに抜け出すが追走する野呂と細見が止めることができず、勝ち越し点を許してしまう。しかし直後のアイルランドの強烈なシュートは、松元が素晴らしい反応でゴールマウスに立ちはだかる。37分には連戦の疲れが抜けきれない中島に代え吉野が投入された。前半終了間際の古島のシュートはGKに阻まれ、日本は1点のリードを許したまま前半を終えた。

 デフリンピック開幕以来の最高気温を記録した試合当日、肌に突き刺さる太陽光が選手たちの体力を奪い去っていく。思わず顔を下げてしまう選手がいるなか、GK松元やFWの河野から「顔を上げろ」という声が出る。鼓舞する声が選手たちの耳に届くことはないが、鼓舞するする姿は目に飛び込んでくる。ろう者サッカーは、顔を上げてお互いを見ないと何も伝わらない。

 後半に入り、パスでゆさぶり且つ前線の動き出しが必要との意思統一がなされ、1トップの河野がパスを引き出すことも増えてくる。24分には河野と渡邉のパス交換から河野がシュート、しかしゴール左にそれていく。守備陣はGKの松元が再三の好セーブを見せ、追加点を許さない。しかし日本はアイルランドの壁をなかなか崩すことが出来ない。日本は中盤でゆさぶりサイドに展開、いい形の攻撃はあるものの、最後は中央で網にかかることも多かった。アイルランドの守備陣の立場から見れば、日本は目の前でパスを廻すだけで、さほど脅威には感じていないようにも見えた。試合はそのまま1対2で終了。その結果、日本はナイジェリアと並びグループリーグの3位となりベスト8進出はならなかった。

 デフリンピックのサッカー競技には順位決定戦がある。今大会はグループリーグ3位のチームが9位~12位決定戦へ、4位のチームが13位~16位決定戦へまわる。勝ち点、得失点差、総得点で並んだ日本とナイジェリアは、コイントスの結果、ナイジェリアが3位、日本が4位となり、日本代表は31日に行われるサウジアラビアとの順位決定戦を戦う。勝てば日本は13位~14位決定戦に、敗れた場合は15位~16位決定戦に回る。

 再三ゴールマウスに立ちはだかったGKの松元は、4年前の台北での大会に初めて参加し、その時はただがむしゃらにプレーするだけだった。今大会は「最低でもベスト8」とリベンジに燃えていた。最低限のラインを超えられなかった悔しさ、情けなさなどの感情をおさえることができず、松元は試合終了後、涙を流した。

「自分も含めてみんな日の丸を背負っているという自覚、実感がまだまだ足りない」

 順位決定戦は、代表としての自覚、誇りを確かなものにするためにも、格好の場となるはずである。

〇プロフィール
中村 和彦
1960年福岡県生まれ。早稲田大学文学部在学中より、助監督として映画の世界に入る。主な監督作に「棒 Bastoni」(2001年)、「日本代表激闘録AFCアジアカップ カタール2011」(2011年)をはじめとするサッカー関連DVDなど多数。知的障害者サッカー日本代表を追った長編ドキュメンタリー「プライド in ブルー」(2007年)で文化庁映画賞優秀賞受賞。ろう者サッカー女子日本代表を追った「アイ・コンタクト」(2010年)では、山路ふみ子映画福祉賞を受賞。著書に「アイ・コンタクト」(2012年岩波書店刊)がある。

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