2013.07.29

当面はハーフナーとの競争か? 韓国戦で起死回生のクリアを見せた大型FW豊田陽平

豊田陽平
今後の代表入りに期待がかかる豊田 [写真]=Getty Images

 5分のロスタイムも残り1分を切った。日本に1-2でリードされた韓国は凄まじい気迫で同点弾を狙い、最後の最後で右サイドからのスローインを得た。これをキム・チンス(アルビレックス新潟)が思い切り投げ、ゴール前で待ち構えていたホン・ジョンホ(済州)が頭で競り勝った。日本の守護神・西川周作サンフレッチェ広島)も防げず、完全に枠をこじ開けられたと選手の多くも思っただろう。しかし、ゴール前には185㎝の大きな壁が立ちはだかっていた。後半43分、高萩洋次郎(広島)に代わって満を持してピッチに立った豊田陽平サガン鳥栖)が得意のヘッドでクリア。チームの絶体絶命のピンチを救った。

「自分のポジション的に守らなければいけないところだというのがまず頭にあった。危険だなって思ったので、瞬時に動いたらボールが来た感じです」と反射的に動いていたことを本人は強調した。直後にタイムアップの笛が蚕室オリンピックスタジアム鳴り響き、日本の大会初制覇が決まると、豊田は全身でド派手なガッツポーズを見せた。

「あの時間の出場だったので、とにかく日本のために、やらないとっていう気持ちでのぞんだので、自然と得点したかのようなガッツポーズになってしまった。もし入って引き分けで終わるのと、勝ちで終わるのとでは全然違う。ロッカーではみんなに褒めてもらいました。アピールという意味ではどうか分からないけど、少しは日本の力になれたのかな。そんな気持ちが大きいです」と彼は試合後、素直な思いを打ち明けた。

 今回の東アジアカップでは、前田遼一ジュビロ磐田)やハーフナー・マイク(フィテッセ)のポジションを脅かす0トップ候補として真っ先に起用されると見られていた。が、フタを開けてみると、21日の中国戦と28日の韓国戦の先発1トップに名を連ねたのは、万能タイプの柿谷曜一朗(セレッソ大阪)。彼は中国戦でいきなり1ゴール1アシストを記録し。韓国戦でも値千金の2点を叩き出している。

 豊田が国際Aマッチデビューを飾った26日のオーストラリア戦でも、同じポジションを争う大迫勇也鹿島アントラーズ)が2点を挙げた。前線でしっかりと体を張って起点を作るとともに、相手を引きつけてスペースを作り、大迫の2点をお膳立てするいぶし銀の働きは光ったが、本人としては「限られた時間の中で結果を残さなければならないっていう点で、ゴールを奪えなかったので悔しいです」と不完全燃焼感をのぞかせた。

 それでも冒頭の起死回生のクリアに象徴される通り、豊田は持ち前の泥臭さと献身的姿勢を前面に押し出した。「とにかくがむしゃらにっていうところは常にあります。サガン鳥栖でも味方のために、チームのためにといったところの犠牲心を植えつけられていますし、そういったところを日本代表でも少しでも出せたかなっていうのはあります」と彼自身も言う。

 韓国戦の柿谷の決勝点にしても、原口元気浦和レッズ)がシュートを放った瞬間、彼が中央を走ってゴールまで駆け込んだから、ファーサイドにいた柿谷のマークが薄くなったのだ。「あの時間帯はロングボールが入ってくるので、うまく曜一朗が衛星のように動いて、自分の競ったボールに反応してくれるようにしようとは思ってました」とライバルであるはずの点取屋をお膳だけすることを最優先に位置付けていたのだ。アルベルト・ザッケローニ監督は汚れ役を積極的に買って出る前田を高く評価しているが、その傾向がより強い豊田のことも前向きに捉えたに違いない。

 ピッチに立った時間こそ短かったが、今回の東アジアカップを通して豊田は前田とハーフナーのよさを併せ持った選手であることを色濃く印象付けた。前田ほどの足元の技術はないが、身を粉にして働ける部分は彼を超えているかもしれない。ハーフナーと比較しても、高さは彼には及ばないが、空中戦の迫力や力強さや得点以外の幅広い仕事を果たせる点は豊田の方が上だろう。その長所を突き詰めていけば、2人の牙城を崩すチャンスはきっと巡ってくるはず。彼のような空中戦に絶対の自信を持つ選手はザックジャパンのオプションを増やすためにも必要なのだ。

 最初の関門は代表定着だ。その早道は1トップの控えであるハーフナーに勝負に勝つこと。オランダで昨季11得点を奪っている彼を超えるには、鳥栖に戻ってからゴールに絡む仕事をコンスタントに見せ続けるしかない。「帰ってからのシーズンがすごく重要になる」と豊田本人にもそういう自覚は強いようだ。

 8月14日のウルグアイ戦には欧州組も勢ぞろいする。柿谷も代表に残留する可能性があるだけに、豊田が残る保証はないが、北京五輪代表でともに戦った本田圭佑(CSKAモスクワ)らと組み合わさった時、この大型FWがどう輝くのかは非常に興味深い。彼には東アジアカップのいい感触を忘れないでほしいものだ。

文●元川悦子

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