対談前には中村俊輔と香川真司がそろってピッチでプレー。互いのプレーを披露し合った
23日に日産スタジアムで行われる横浜F・マリノス対マンチェスター・ユナイテッドの夢の対決を前に、日本代表の新旧10番でもある中村俊輔と香川真司が対談した。
2人は岡田ジャパン時代のチームメートでもあり、当時は中村がエース的存在として背番号10を背負い、香川は新進気鋭の若手としてチームに加わっていた。それ以降、ピッチ内外で絡む機会はほとんどなかったという2人だが、お互いのプレーの印象、それぞれの10番像などについて熱く語り合った。また、対談前には2人が揃ってピッチでプレーする一幕も。溜め息が出るような技の競演の様子は、アディダス公式Youtubeチャネルで公開されている。
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──2人がこうやってそろうことは今までありましたか?
中村 いや、なかったですね。
香川 そうですね。緊張しますけど、すごくうれしいです(笑)。僕にとって俊さんはレジェンドなんで。一緒にプレーさせてもらいましたけど、やっぱり緊張します。
──さっそくですが、2人はお互いにプレーヤーとしてどんなところがすごいと思いますか?
中村 ステップの細かさや重心の置き方。それと敏捷性を駆使していろんなアイデアで崩したり。対戦する時はああいうプレーをされるとマズイなと感じます。真司は日本人特有のプレースタイルですよね。自分にないものを持っていると思います。僕だったらボールを持ったらスルーパスみたいな感覚がありますけど、これからは真司みたいな俊敏性を生かしたサッカーになっていくのかなという感じもしますね。ビッグクラブでプレーする選手はこうなんだっていう。実際にプレーを見ていて「あのターンはここでこうなんだ」とか「あのトラップだと外国人選手は付いていけないんだ」とか勉強になりますし、自分が横浜F・マリノスでプレーしていく中で「ボールを持った時はこうしよう」とかいろいろ参考になる部分が多いですね。
香川 そんなに思っていただけるならもっと早く言ってほしかったですね(笑)。サポートメンバーとして一緒に南アフリカ・ワールドカップに行った時とかに。俊さんにそこまで思ってもらえているなんて思ってなかったので。すごく光栄ですし、正直本当にうれしいです。
──2人は日本代表の新旧10番でもあります。背番号10を背負う意味や重圧をどう考えていますか?
中村 (木村)和司さんやラモス(瑠偉)さんが付けていて、小さい頃から憧れていた背番号だったので「自分が付けていいのかな……」という思いもありましたけど、そのうち、自分色に染めていけばいいんだと思うようになりました。やっぱり日本代表の10番を付けられるのはたった一人なので、それが自分だというのはすごいモチベーションになりましたね。
香川 僕にとっては夢みたいなことで、最初はその歴史を考えてプレッシャーを感じたりもしました。だけど、やっぱり俊さんの言う通り徐々に自分のカラーにしていければって思うようになりましたし、日本代表で10番って言ったら「中村俊輔」っていうイメージが強いんで、そこは自分で結果を残して「香川真司」という自分なりの10番像を作っていければいいのかなと思います。
──日本代表で最初に背番号10を付けてプレーした時はどうでしたか?
中村 僕は元々10番が大好きで小学生の時からずっと10番を付けていましたし、プレッシャーよりも喜びのほうが大きかったですね。
香川 僕はどちらかと言うと10番には全く縁がなくて、そんなに好きな番号ではなかったんです。もちろん憧れてはいましたけど、プレースタイルを考えたらあんまり自分向きじゃないなって思っていて。ただ、日本代表で付けさせてもらうようになって、この番号でチャレンジしていきたいなと思うようになりました。実際に付けていくうちに好きな番号になりましたし、毎試合、光栄に思いながらプレーしています。
中村 やっぱり10番というとジーコや(ディエゴ)マラドーナの印象があるんですよね。ゲームを動かして観客を魅了して勝敗を左右する絶対的な選手。僕は横浜F・マリノスで3年目に和司さんが付けていた10番をもらいましたけどすごく重かったです。でも和司さんからご飯に誘ってもらったことがあって「自分の色に染めていけばいい」と言われてすごく楽になったんです。真司はこの番号にふさわしい実力もありますし、時間が経てば定着してくると思うので、さっき僕も真司自身も言っていたようにがんばって自分のものにしていってほしいですね。
どちらも日本屈指のテクニックを持っている選手同士、話題はサッカー選手の商売道具であるスパイクのこだわりについても及んだ。
香川 僕は基本的には軽くて、フィット感があれば一番ベストかなと思ってるんですけど。そういう意味ではadizero F50はすごく良いスパイクですね。昔から軽いのが好きで、自分のプレースタイル的にもスピードというものが求められるので、軽くて足に合ったスパイクというのが一番ですね。
中村 僕は足先でのプレーが多いので、やっぱり軽いものが第一優先というか、昔から好きですね。
──スパイクによってテクニックの質が変わってくるものでしょうか。常に試行錯誤しているというお話も伺ったことがありますが。
中村 新しいモデルにチェンジして手渡された時の感覚ですね。僕はキックが大事なので、あまり当たりがよくなかったりすると、キックの仕方を少し変えてみたりとか試行錯誤します。どんどん新しいものが出てくる、開発が進んでいくので、それに技術を合わせていくのが大変ですね。
──スパイクの進化に合わせて自分の技術も上げていく必要があるという。
中村 そうですね。それに追いつかなきゃいけないっていう。例えば昔はスパイクのスタッドが刃型だったんですよね。僕は横の動きが多いので、それが大好きだったんです。でも違う選手は、縦に行く時に刃型だと滑ってしまうと。で、最近のスパイクは、丸でも刃型でもない三角になっていますよね。これだと前にも行けるし、横の動きも行けるんです。
──完璧なコメントですね(笑)。
香川 そんなコメントできないです(笑)。でもその通りだと思います。進化していますよね。
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日本代表新旧10番対決となるスペシャルマッチ、横浜F・マリノス対マンチェスター・ユナイテッドは23日19:20キックオフ。試合の模様はTBS系列で生放送される予定だ。