2013.06.21

ユーロ2012準優勝のイタリアに10番の風格見せるも、悔しさを爆発させた香川真司

香川真司
イタリア戦終了直後、天を仰ぐ香川 [写真]=Getty Images

「ブラジル戦ではチャレンジせず消極的な戦い方をしてしまった。次のイタリア戦こそは自分たちのサッカーをしよう」と日本の選手全員が結束して挑んだ19日のイタリア戦(レシフェ)。その意気込みは開始早々の20秒にいきなり表れた。右サイドに開いた本田圭佑(CSKAモスクワ)からのパスに香川真司(マンチェスター・U)が積極果敢に走り込み、中央を陥れようと試みる。これは相手守備陣につぶされたが、まだ目の覚めていなかったイタリアを驚かせるには十分すぎるプレーだった。

 その後もエースナンバー10をつける男は左サイドや中央に柔軟に動いて攻撃の起点を作り、相手のスキを伺いながらゴール前へ次々とアタックする。前半17分には中央のやや遠目から放ったミドルシュートが世界的守護神、ジャンルイジ・ブッフォン(ユヴェントス)の両手をかすめるなど、この日の香川のゴールにこだわる姿勢は際立っていた。

 それが結実したのが、1-0でリードした前半33分の2点目の場面だった。本田が香川との右ショートコーナーから中に入れ、相手守備陣がクリアしたこぼれ球に今野泰幸(G大阪)が反応。前線につないた。中央が混戦になる中、牛若丸のような軽やかな身のこなしでエースがスルリと抜け出し、反転しながら左足でボレーシュートを放った。

「うまく反転できて、押さえることを意識していた。いい場面でゴールを奪うことができたし、冷静に決めることができたと思う」と本人も満足する芸術的な一撃に、ブッフォンは微動だにできなかった。彼は世界最高峰クラブのマンチェスター・ユナイテッドでプレーしているトップ選手であることをアズーリに見せつけたのだ。

「よく話題に出るのが香川。彼はチームのスターだ」と前日会見でダニエレ・デ・ロッシ(ローマ)が警戒し、チェーザレ・プランデッリ監督も「興味深い選手」と名指しで挙げるほどイタリア代表も香川に注目していたが、それだけの能力の高さをこの大舞台で改めて示したといえる。

「点の取れる新たな10番像を築きたい」とザックジャパン発足時から言い続け、誰よりも得点いう結果に固執してきた香川のスーパーゴールが白星に結びついていれば、アルベルト・ザッケローニ監督もチームメートもご満悦だったに違いない。しかし、この日の日本は前半終了間際と後半立ち上がりと終了間際という最悪の時間帯にミスから失点を繰り返してしまう。突如として降り始めたスコールのような大雨の中、マリオ・バロテッリ(ミラン)のPKが決まって2-3に逆転された時、もはや日本の勝利と1次リーグ突破は不可能だと思った人々も多かったはずだ。

 そんな苦境に直面しても、香川は決して攻撃の手を緩めなかった。彼の小気味いいドリブルとフェイント、キレのあるゴール前での動きは停滞しがちだった日本に再び活力を与えた。そして岡崎慎司(シュトゥットガルト)のヘッド弾で3-3の同点に追いついた後、香川にこれ以上ない決定機が巡ってくる。長友佑都(インテル)の左からの折り返しを相手守備陣がクリア。これを拾った岡崎のシュートが右ポストに直撃する。その跳ね返りを香川がヘッドで詰めるが、またもクロスバーを叩いてしまう。「このシーンをモノにできていれば……」と本人の中でも悔やみきれない得点機に他ならなかった。

 このビッグチャンスを逃した直後、イタリアはワンチャンスからセバスティアン・ジョヴィンコ(ユヴェントス)が決勝点をゲットする。タイムアップの笛がアレナ・ベルナンブコに鳴り響いた瞬間、日本の10番はガックリとピッチに腰を落とし、呆然としてしばらく動けなかった。

 華麗なシュートの技術の高さと創造性が認められ、このゲームのマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた香川。しかし彼に笑顔はなかった。記者会見でも「やはり決定力の違いはある。自分たちの方がチャンスは多かったのに決めきれていないところが多かった」と消え入るような声で反省の弁を口にするのが精いっぱいだった。

「真司はヨーロッパへ行ってから自分への要求がメチャメチャ高くなった。チームへの貢献度が非常に高い試合でも『アシストだけじゃ満足できない。得点取らないと満足できない』って言い続けてる。実際、試合後に暗かったり、その試合のビデオをひたすら見て分析したりもしてますからね」と今野が言うように、香川という人は自分の納得レベルが凄まじく高い。自分がゴールを挙げ、チームを勝利に導けて初めて安堵感を覚える。そういう人間だからこそ、このイタリア戦は悔しさと劣等感でいっぱいになったのだろう。

 その激しい感情をぶつける先は22日の最終戦・メキシコ戦(ベロオリゾンテ)しかない。すでに日本もメキシコも敗退が決まり、消化試合になったしまったが、日本にとっては1年後のブラジル本大会の成否を左右する貴重な国際舞台だ。ここで白星を挙げられなければ明るい未来はない……。そう思って香川は最後の気力を振り絞るに違いない。

 そんなエースナンバー10には今度こそゴールと勝利という2つの結果をしっかりと手にしてほしいものだ。

文●元川悦子

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