2013.06.05

重圧のかかるPKをど真ん中に蹴り込む強心臓! 大黒柱の存在感を示した本田圭佑

オーストラリア戦で同点ゴールを決め、喜ぶ本田 [写真]=兼子愼一郎

 オーストラリアの左MFオアー(ユトレヒト)が内田篤人(シャルケ)らをかわし、蹴り込んだクロスが意外な方向に飛び、そのままゴールネットを揺らした。「ヤバいヤバいとしか思わなかった」と今野泰幸(G大阪)が焦燥感を露わにした相手のアクシデント的な先制点が生まれたのは後半37分だった。残り時間はわずか8分。ザッケローニ監督はハーフナー・マイク(フィテッセ)や清武弘嗣(ニュルンベルク)ら残されたカードを次々と切り、同点弾を狙った。

 そして後半45分がわずかに過ぎた頃、清武との右ショートコーナーから本田圭佑(CSKAモスクワ)が強引に持ち込んで、ニアサイドにいた栗原勇蔵(横浜FM)目がけてクロスを入れる。それがマッケイ(長春亜泰)の腕に当たり、奇跡的なPKをゲットした。

 決めれば5大会連続のワールドカップ出場が決まるという壮絶な重圧のかかるPKを前に、ペナルティスポットで蹴るのはもちろん背番号4をつけたエースだ。彼は「真ん中に蹴って取られたらしょうがない」と覚悟を決め、名手・シュウォーツァー(フルアム)目がけてシュートを放った。次の瞬間、激しくネットが揺れる。「圭佑ならなる。必ず決めると思ってた。蹴ったのが真ん中ですからね。そこが彼のメンタルを物語ってると思いました」と長友佑都(インテル)も話すように、この男の強靭な精神力が起死回生の一撃につながったのは間違いない。敵将、ホルガー・オジェック監督も「本田1人がピッチに立つだけで違いを生む」と脱帽していた。ザック監督も日本の選手たちも本田の復帰に助けられる格好となった。

 ザック体制発足後、日本代表は5敗しているが、うち4試合は本田不在時だ。3月のヨルダン戦(アンマン)、そして先週30日のブルガリア戦(豊田スタジアム)もそうだった。そんな停滞感を払しょくするために、誰もが彼の代表合流を待ち望んでいたに違いない。

 その期待通り、本田は立ち上がりから前線でしっかりとタメを作り、攻撃のリズムを生み出した。「圭佑がいるのはデカい。すごい落ち着くし、相手も来たくてもこれないみたいな感じだから。必然的に攻撃の時間がなくなるし、リスクマネージメントもしやすくなるから、すごいやりやすかった」と今野も太鼓判を押していたが、本田がいることで香川真司(マンチェスター・U)や岡崎慎司(シュトゥットガルト)にスペースが生まれ、長谷部誠(ヴォルフスブルク)らボランチもより高い位置でプレーできる。相手にボールを奪われた時もファーストDFとしてオーストラリアの攻めを遅らせてくれるから、後ろの負担も軽くなる。この日、日本守備陣が天敵・ケーヒル(ニューヨーク・レッドブルズ)に目立った仕事をさせなかったのも、もちろん今野らの頑張りも重要だが、本田が鋭い守備をしていたのも大きいのだ。

 それでも本田自身は自らの出来に満足していなかったようだ。その証拠に、試合後のミックスゾーンを無言で通り過ぎて行った。チーム最多のシュート7本を放ち、後半9分に香川の折り返しに右サイドから詰めたシーンを外すなど、エースに必要不可欠なゴールという確固たる結果を残せず、勝利しきれなかったのが不本意なのだろう。「こんな戦いをしていたら世界トップを目指すなんてとんでもない」と本人は自らに言い聞かせていることだろう。

 今の日本代表にとって最重要課題の1つと言えるのがフィニッシュの部分だ。アジア相手にチャンスを数多く作りながら決めきれない試合はこれまでも多かった。対戦相手のレベルが上がれば上がるほど、その決定機の数は減る。それを確実にモノにしなければ、上へはいけない。ゴールを量産することで自らのキャリアを切り開いてきた本田には、その重要性が誰よりもよく分かっているはずだ。

 それゆえ、彼にはもっと得点への鋭さを高めてもらう必要がある。7本シュートを放ったら2本くらいは決めきれるようになって初めて、本田はメディア相手に饒舌に話すようになるのだろう。彼自身の中で葛藤があるうちは今のような状況が続くのかもしれない。

 我々としては、本田が1つのハードルを超える日を心待ちにするしかない。まずはいったん気持ちを切り替え、コンフェデレーションズカップに照準を合わせることが肝要だ。ブラジル、イタリア、メキシコという強敵相手から次々と得点を挙げ、南アフリカ・ワールドカップの再現を見せてくれれば、本人の気持ちもチームも盛り上がる。そんな本田の輝きを多くの人々が待ち望んでいる。

文=元川悦子

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