2012.08.16

W杯最終予選へ向けた充実と漂いはじめた停滞感/ベネズエラ戦

遠藤(7番)の先制点が決まり、喜ぶ日本代表

 消化不良の感も残った1-1の引き分けだが、9月のワールドカップアジア最終予選のイラク戦だけを睨めば、決して悲観ばかりではないのではないか。

 キリンチャレンジカップでベネズエラ代表をホームに迎えた日本は、立ち上がりから素晴らしいプレーを披露した。6月に行われた最終予選の3連戦で10ゴールを挙げていた攻撃陣は、15分に遠藤保仁が挙げた先制点をはじめ、多くの決定機を作り出している。

 最終的に5選手がペナルティエリアに走り込んでいた得点シーンをはじめ、後半に香川真司が放った2度のヘディングシュートやクロスバーに弾かれたシュー トシーンなど、試合を通じて日本が作り出したチャンスの多くは、ペナルティエリア内に3人以上の選手が入り込んでいた。相手守備陣を背走させるとともに、 自らがエリア内に走り込む時間とスペースを作り出しているのは、随所にダイレクトプレーを織り交ぜたパスワークであり、攻撃陣が熟成されつつあることを証 明していると言えるはずだ。

 また、イラク戦で出場停止となる今野泰幸、内田篤人、栗原勇蔵の3選手の招集を見送り、大きな注目を浴びた守備陣には、ザッケローニ監督は「ディフェンスラインに関しては及第点以上の出来だったのではないか」と評価を与えている。

 長友佑都、吉田麻也とともに、伊野波雅彦、水本裕貴、駒野友一が起用されたディフェンスラインは、確かに大きな破綻は見られなかった。開始早々にイン ターセプトを狙った伊野波が振り切られて決定的なシュートを浴びるなど、得点を許したフェドールの個人能力には振り回されたが、守備が完全に崩された場面 はほとんどなかったと言えるだろう。失点シーンも、中盤でボールを失ったことに端を発したカウンターだったため、守備陣がとりたてて責められるものではな いはずだ。先制点を素晴らしいドリブル突破で演出した駒野に至っては、能力の高さを改めて証明してもいる。

 驕りや慢心ではなく、イラク戦に向けては大きな不安要素は見つからなかったと言えるだろう。

 ただ、1-1と勝ちきれなかったスコアが示す様に、どこか停滞感も感じさせる一戦ともなっている。攻撃陣は、決定機の多さで成熟ぶりを表す一方、引き出しの少なさも浮き彫りとなった。

 74分に前田遼一と岡崎慎司の2選手を代え、本田圭佑が1トップにポジションを移したあたりから、一気に攻撃のペースが落ちて流れが滞ったことは否定で きないだろう。アルベルト・ザッケローニ監督は試合後、海外組のコンディションに失速の理由を求めたが、単純に途中出場の選手との連携不足という一面もあ るはずである。本田圭佑が復帰した5月のアゼルバイジャン以降、前線の組み合わせを固定したことで攻撃陣の熟成が図れたことと同時にオプション不足、ある いは柔軟性の欠如とも言えるような弊害が表出した形となった。

 攻撃陣が固定メンバーに対する依存度の高さを露見したことと同様、守備陣にも上積みは見られなかった。伊野波、水本ともに自身の役割をそつなくこなした 一方で、吉田麻也や今野を脅かすようなインパクトは残せなかった。ロンドン・オリンピックへ出場したU-23代表から選ばれた酒井高徳も、出場機会は得ら れず仕舞いに終わっている。

 攻撃陣は選手が少しでも欠けると一気にチームが変質してしまう一種の脆さを露呈して、大きな問題が生まれなかった守備陣もあくまでもバックアッパーの域を脱せなかった事実は残った。

 ワールドカップ最終予選は、イラク戦を終えれば後半戦に突入する。ザッケローニ監督が就任してから、日本がしっかりと歩を進めていることに違いはないだ ろう。一方で、伸び悩みへの兆候もかすかに見え隠れし始めた。各選手のレベルアップや新戦力の発掘などで停滞感の打破は可能だろうが、最終予選と並行しな がらの強化は、当然ながら容易ではないはずだ。そして、ブラジル・ワールドカップまで2年を切っている。時間も、決して多くはない。

文=小谷絋友(サッカーキング編集部)

 

[写真]=Getty Images

 

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