2012.08.13

強烈な印象を残したメキシコ…ブラジルW杯で脅威的な存在に/ロンドン五輪

オリンピックで初の金メダルを手にしたメキシコ

 ロンドン・オリンピック男子サッカーは、メキシコが優勝候補のブラジルを2-1で破って、初の金メダルを獲得した。

 ベスト4に残ったのは、メキシコ、ブラジル、韓国、日本の4カ国。南米、北中米、アジアが2カ国という構図となった。アジアが2カ国も残ったのは、非常に印象的だったが、やはりメキシコの強さが際立った。

 目を引いたのは、非常にチームがタフだったということだ。5月のトゥーロン国際大会では、中1日でグループリーグの試合をこなし、決勝ではトルコを下して優勝したが、そういう経験が活きているのであろう。

 今回、中2日の連戦における戦いにもほとんど力を落とさず、6試合を駆け抜けていった。もちろんサイドのハビエル・アキーノとマルコ・ファビアンを中心とした攻撃力も凄かったが、とりわけ目を引いたのはグループとして守備が非常に機能していたことである。日本もメキシコのさぼらない守備に手を焼いたが、ブラジルもこの堅守に苦しめられた。ブロックを敷いて連動して守り、球際には厳しくいく。ジオバニ・ドス・サントス以外、全員がメキシコのリーグでプレーし、お互いを理解していることが大きいのだろう。今後、メキシコの戦い方がスタンダードになって行くと、日本がグループとして戦う優位性は損なわれていくかもしれない。そのメキシコで目を引いたのは、ブラジル戦も日本戦でもゴールを挙げた9番のオリベ・ペラルタである。脅威は、その決定力だ。日本戦でも扇原貴宏から奪って、そのまま右足で決めた。ブラジル戦も奪ったボールを受けて、そのまま迷いもなくゴールに向かって左足を振り抜いて決めた。迷いがなく、ゴールに一直線に向かう姿勢は、まさにストライカーだ。

 メキシコで攻守に効いていたがボランチのホルヘ・エンリケスである。190センチ近くの身長で、懐が深く、なかなかボ-ルを奪えない。扇原が「潰しとかパスとか、非常に参考になった」というボランチは、非常に運動量も豊富で、メキシコの隠れMVPだった。

 期待以上に活躍したのは、日本である。

 本大会前のメキシコ戦で、永井謙佑の1トップを採用し、そのシステムがハマった。守備も吉田麻也が入ったことで全体がコンパクトになり、ラインが安定した。そうすることで前線からのプレスが可能になり、永井を筆頭に高い位置でチェイシングし、ボールを奪って攻める型ができた。

 スペイン戦は、守るときは全員で我慢して、逆にカウンターで何度もチャンスを作って、勝利した。この勝利が日本の流れを作り、グループリーグでは素晴らしい戦いを見せ、首位通過を果たした。

「首位通過もそうですが、1試合1試合、手応えを感じたし、無失点で3試合を終えられたのは、大きな自信になりました」 

 吉田がそう語るように、日本は試合をこなすごとに成長していった。

 準々決勝のエジプト戦は、永井が先制し、相手が10人になったこともあるが、スペイン戦、モロッコ戦からの課題だった追加点も奪い、ダメ押しも決めて3-0で勝った。この試合は、日本の成長を改めて示すことができた試合だった。

 だが、日本の快進撃もここまでだった。

 エジプト戦で永井が負傷し、4試合をフルパワーで戦ってきたことで、日本は疲弊していた。準決勝のメキシコ戦は、先制こそしたものの初失点し、ミスで逆転ゴールを奪われ、力尽きた。メキシコのタフさとしたたかなサッカーに日本は、太刀打ちできなかった。3位決定戦も韓国のロングボール攻撃にミスも重なって負けたが、ベスト4という成績は色褪せることはない。全6試合の真剣勝負は、「どの試合もいい経験になった」と、永井が語るように、今後に向けての糧になったはずだ。また、2ゴールを挙げるなど活躍が目立った大津祐樹、守備をまとめた吉田らは現地でも高く評価され、すでに水面下で移籍交渉が進行しつつあるという。

 日本や銅メダルに輝いた韓国が、ロンドン・オリンピックを盛り上げる一方、精彩を欠いたのは、スペイン、ウルグアイ、イギリスだ。

 スペインは、ブラジル、メキシコと並んで優勝候補だった。ところが日本の術中にハマり、初戦を落とすと、つづくホンジュラスに敗れ、早々にオリンピックから姿を消した。欧州選手権の優勝からフアン・マタやハビ・マルティネスらが参戦し、チームに融合する時間が足りない影響もあり、今ひとつチームとして機能していなかったが、優勝候補の敗退は大会の華が消えたようで、どこか淋しいものがあった。

 ウルグアイもグループA組では、開催国イギリスとともに予選突破候補だった。だが、2戦目にセネガルに0-2で敗れ、3戦目でイギリスと戦い0-1で敗れた。FWにルイス・スアレスとエディンソン・カバーニ、中盤にエヒディオ・アレバロをオーバーエイジ枠で入れたが、スペイン同様に機能していなかった。

 イギリスは、グループリーグこそセネガルを抑えて首位で突破したが、準々決勝で韓国にPK戦で敗れ、開催国としてメダル獲得はできなかった。

 期待外れではなかったが、優勝できなかったブラジルも決勝のメキシコ戦は、それまでの強さが垣間見えなかった。

 メンバーは、ネイマールを始め、アレシャンドレ・パトや、日本と同じようにチアゴ・シウヴァ、マルセロらDF陣をオーバーエイジ枠として採用するなど、悲願の金メダル獲得に向けて最強の布陣を敷いてきた。決勝でも後半は怒涛の攻撃を見せたが、メキシコの堅い守備を打ち破ることができなかった。どんなに強く、前評判が高くても全6試合を最高のパフォーマンスで戦うことは、やはり奇跡に近い。オリンピックという中2日で戦う大会の難しさをブラジルや日本の戦いを見ていて、痛感させられた気がする。

 世界的なサッカーの流れは、ブラジルが敗れ、世界チャンピオンのスペインが早々に消えたので、明確なものは見えて来なかった。ただ、全体を通して言えるのは、やはり守備の力が非常に大きくなっているということだった。個人ではなく、グループで守り、失点を防ぐ。そのような国が結果を残している。それは、ともにグループリーグを無失点で首位通過したメキシコと日本がベスト4に残ったことからも言えるだろう。
 
 脅威は、今後のメキシコだ。この世代がA代表の中心となっていくと、攻撃は個人能力と連動した突破力を持ち、守備は組織で連動したディフェンスをする。それが90分間、しっかりできたらメキシコは、ワールドカップで恐るべき存在になっていくのではないか。そう、思わせてくれるほど、ロンドンでのメキシコは非常に印象的で、強かった。

文/佐藤俊

写真/Getty Images

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