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着実な進歩が生んだ日本サッカー界史上初のGL首位突破/ホンジュラス戦

ホンジュラス戦でも完封に貢献した主将の吉田麻也

 二兎を追って二兎を得たのだから、結果としては最高だった。2連勝のグループ首位で臨んだ第3戦のホンジュラス戦で最も重要視されていたのが、首位での決勝トーナメント進出を決められるかどうかと、各選手の疲労回復の2点だった。

 前者は、グループ2位のホンジュラスとの直接対決を引き分け以上で終われば決めることができる。しかし、上記のいずれも求めるとなると、過去2試合で先 発出場したメンバーを休ませることによる後者との兼ね合いが発生する。2連勝を果たしたメンバーを大幅に入れ替えながら、結果を残すことは容易ではないと 見られていた。

 ところが、蓋を開けてみると先発メンバーは第2戦のモロッコ戦から5人が入れ替わっていた。グループリーグ3試合を通じて控えGKの安藤駿介を除く全選 手がピッチに立つとともに、得点こそならなかったがスコアレスドローに終わったことで、グループ首位通過も決定。準々決勝で優勝候補のブラジルとの対戦回 避も成功した。

 決して簡単ではない課題を乗り越えられた要因には、過去2試合同様に守備の安定感が挙げられるだろう。前半の立ち上がりこそ、メンバーの入れ替えによる 中盤でのパスミスから押し込まれる場面があったが、90分間通して見るとホンジュラス攻撃陣に攻め手をほとんど与えていなかった。

 守備陣の安定には、オーバーエイジで出場している吉田麻也や徳永悠平の存在が大きいことに間違いない。ただ、周りの選手が試合を追うごとに自信を深めて いる点も特筆すべきポイントと言える。ホンジュラス戦でも相手FWに仕事をさせなかった守備面はもちろん、相手と競り合った際には大きく蹴り出さずにボー ルを繋ぐことが増え、後半に鈴木大輔が流れの中から相手のゴール前まで駆け上がるシーンが象徴するように、攻撃にも大きく関与するようなプレーの幅が生ま れてきている。5月に行われ、失点を重ねた結果、グループ最下位で敗退したトゥーロン国際大会でのひ弱な姿は、もはや見る影もない。

 もちろん、守備陣だけでなくチーム全体からも成長は感じ取れる。印象的だったのは、試合が終了してグループ首位突破が決まった瞬間、日本が大きな歓喜に 沸くことはなかったところである。無論、喜びはあったが、スペイン戦終了直後に大津祐樹の頬を涙が伝ったようなシーンはないことからも、総じて冷静に捉え ているようだった。むしろ、2位突破ながらブラジルとの対戦が決まったホンジュラスの喜びの方が大きく見えたぐらいである。

 あまり報じられていないことではあるが、実のところオリンピックでグループを首位通過したことは今回が初めてである。12年前の黄金世代はブラジルの後 塵を拝し、3位に輝いた1968年のメキシコ・オリンピックでも、突破順位をめぐっての駆け引きがあったというが、結局のところ2位通過となった。

 日本サッカー界史上初の実績を達成したにも関わらず、スペイン戦直後は感情を爆発させた大津も試合後に「勝ちにこだわってやっていた。勝って(準々決勝 に)行きたかった」と結果を悔やむ言葉が口をついた。スペイン撃破を超えるような成果を残した直後での反省は、しっかりと地に足がついていることを表して いるとも言える。それどころか、戦前の予想を覆す快進撃に一気に期待を高めた周囲の方が、選手たちの成長に追いついていない印象すら残る。

 準々決勝で対するエジプトはトゥーロン国際で2-3と敗れた相手なだけに、選手たちが慢心することはないだろうし、着実に自信をつけていることからも必 要以上に警戒する心配もないだろう。準々決勝の舞台となるマンチェスター・Uのホームであるオールド・トラッフォードは、「シアター・オブ・ドリームズ」 という別称を持つ。確かな足どりで歩を進める一方、遠く離れた日本にメダルの夢を持たせるチームにとっては、うってつけの舞台となった。

文:小谷紘友(サッカーキング編集部)

 

[写真]=Getty Images

 

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