2012.07.29

GL突破王手のモロッコ戦、16年前からの確かな進歩を証明できるか/男子サッカー

モロッコ戦でも永井の俊足に注目が集まる

 日本がスペインに勝利を収めたことで、グループDのパワーバランスは完全に崩れた。グループはおろか、優勝候補の筆頭と見られていた大本命のスペインは 最下位に沈み、残り2戦での勝利は絶対条件と言える窮地に追い込まれた。一方、勝ち点3を奪った日本は第2戦のモロッコに勝利すれば、苦しむ強豪国を横目 に早々と決勝トーナメント進出が決まる。

 そして第1戦の結果を受け、慌てふためいているのはなにもスペインだけではないはずだ。大会前に日本でも大方の意見を占めていた、スペインに敗れても残 り2勝してグループ突破を決められればという目論見は、モロッコとホンジュラスとて同様だっただろう。ただ、第1戦で日本がスペインを下し、モロッコとホンジュラスが引き分けに終わったことで、大会前の皮算用はもろくも崩れ去った。同時に日本は勝ち点3を手にしたことで、大きなアドバンテージを手に第2戦 に臨めることを意味している。

 モロッコは日本と引き分けた場合、地力で日本を上回ることは不可能になり、グループ突破は完全に他国の結果次第ということになってくる。是が非でも勝ち 点3が必要になる以上、時間の経過とともに焦りが生まれるのはモロッコである。加えて、得点を欲して前に出る必要性が生じる以上、スペイン戦で猛威を振 るった永井謙佑の快足によるカウンターの餌食になる可能性は高まる。本来であれば、引いて守る戦術で永井のスピードを封じにかかることもできたかもしれな いが、勝利が必要になる以上攻めに出なければならないジレンマに悩まされることになった。日本にも永井をはじめ、スペイン戦の疲労がどれほど抜けているか というのは懸念材料としてある。しかし、スペイン守備陣を切り裂いた姿を目の当たりにしている以上、心理的には永井がピッチに立っているだけでも、モロッコはカウンターを警戒せずにはいられないだろう。

 初戦で日本が敗れてモロッコが勝利していれば、攻めに出なければいけなかったのは日本であり、戦術の選択肢は一気に狭まるところだった。しかし、初戦勝利の副産物として、スペイン戦同様に永井を軸としたカウンターで活路を見出すことも可能となり、他の選手を起用してポゼッションサッカーで戦いを挑むこと もできることになった。起用法や戦術は関塚隆監督の判断次第だが、宇佐美貴史や好調の杉本健勇と攻撃陣の手駒を最大限に活かせる状態にあるのは間違いないと見ていいだろう。

 もちろん、先制点を許した瞬間に戦況が一変することも、肝に銘じておく必要はある。初戦勝利で日本が他国より有利に立っている状況に変わりはないが、モロッコ戦で敗れるとなると、グループ内の混沌に一気に巻き込まれる。モロッコには、ヨーロッパのクラブに所属する選手が多いことから、個人能力を侮ること ができない。加えて、ある程度の戦力差であれば、戦い方次第でひっくり返せることはスペイン戦で日本自らが実証している。それだけに攻撃よりも守備陣の出来に、勝敗の比重が大きくかかってくると言えそうだ。

 アトランタ大会でブラジルを破った「マイアミの奇跡」を思い起こさせる勝利となったスペイン戦だが、実情は理詰めのサッカーで奪い取った勝ち点3だっ た。16年前は第2戦でナイジェリアに敗れて、ブラジル撃破の奇跡を結果に結び付けられずに終わっている。「奇跡」ではない勝利を確かな実績につなげられるかどうか。モロッコ戦の結果は、日本サッカーの成長の指標として見ることができるはずだ。

文=小谷絋友(サッカーキング編集部)

[写真]=Getty Images

 

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