2012.07.27

“無敵艦隊”を沈黙させた強固な守備、世界中を震撼させた永井のスピード/スペイン戦

永井謙佑
驚異的なスピードで勝利に貢献した永井

 大会前の不振もあってか、優勝候補のスペインから得た勝利を表し、「グラスゴーの奇跡」という言葉が飛び交っている。しかし、ブラジルを破って同じく奇 跡と形容された1996年のアトランタ・オリンピックの初戦とは趣は大きく異なる。

 16年前の日本はワールドカップに未出場だったことを考えると一概に比較はできないが、当時は28本のシュートを打たれる完全な劣勢だった。スペイン相 手に1-0で勝利した今回も終始試合を支配されながらも、2つの点において明確な違いが存在した。

 まず、世界トップクラスの強豪国を相手にしても容易に崩されない守備である。この点は南アフリカ・ワールドカップでも実証済みとも言えるが、人数を割い て守備に徹する効力は今回のU-23代表でも証明された。実際、酒井宏樹と徳永悠平の両サイドバックは、スペインの退場処分で数的有利になった後も含め、 試合を通じてオーバーラップをする動きは少なかった。しかし、結果としてGK権田修一を脅かすような決定機を相手にほとんど与えず、アトランタのブラジル 戦のように多くのシュートを打たれ、瀬戸際まで追い詰められた状態で守り切ったわけではない。チーム全体の高い守備意識とともに、危険な場面では吉田麻也 らが体を投げ出す粘り強い守備で、スペインをほぼ完全に抑え込むことに成功した。

 もう1点は、対戦相手にない圧倒的な強みを前面に押し出して戦えたというポイントだろう。今回のスペイン戦では、永井謙佑の圧倒的なスピードがそれにあ たる。カウンターと相手のディフェンスラインにプレッシャーをかけるという攻守両面で、永井のスピードはスペインに常に危険を与えていた。永井を引き倒し 退場処分となったイニゴ・マルティネスにも、未知とも言える驚異の速さに面食らった部分が少なからずあっただろう。事実、試合後のスペインを始めとした各 国メディアは、永井の異次元のスピードを称賛していた。

 また、日本はボールポゼッションに関してはどうしてもスペインに譲る。支配率を大きく失う代償として永井のスピードを最大限に活かすため守備重視の戦術 を採ったのではないか。試合開始から、パスの出しどころは、まず永井という共通意識も感じ取れ、数的有利に立った後も、守備時にはチーム全員がしっかりと ポジションにつき自陣にスペインを迎えたことで、相手陣地に永井の快足を活かす広大なスペースを作り出していたようにも見てとれた。得点こそセットプレー からのゴールとなったが、数多くの決定機を流れの中から作り出していたことは、単純に守備戦術を採るだけではできないであろう戦いぶりだった。

 優勝候補筆頭とも言えるスペインを下した事実は波乱であり、大金星であることには違いない。彼らの実力差を冷静に見極めて、相手と同じ土俵に立つのでは なく、守備に徹する戦術を選択した上での勝利は、アトランタ大会の「マイアミの奇跡」と通ずるところでもある。ただ、16年前の勝利は相手のミスから得点 したこともあり、「奇跡」と言い表せるような偶発的な要素を含んでいた事に対し、グラスゴーでの戦いは地力で引き寄せた勝利であり、日本サッカーの確かな 成長を感じさせる勝ち点3でもあった。

文=小谷絋友(サッカーキング編集部)

[写真]=Getty Images

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