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清水梨紗インタビュー「プロリーグになる以上、試合を見に来てもらえるかどうかは自分たち次第」

2021.05.29

昨季から日テレ・東京ヴェルディベレーザのキャプテンを務める清水 [写真提供]=東京ヴェルディ

 日テレ・東京ヴェルディベレーザの清水梨紗は、日本女子サッカーをけん引してきたチームの主将として、一人のプロサッカー選手として、誰よりもWEリーグの成功を願っている。2019年5月にプロ契約を結び、早くから「プロ選手とは何か?」を模索してきた彼女に、WEリーグへの意気込みや新生ベレーザのチーム状況を聞いた。

「昨シーズンとはまた違ったサッカーになってくる」
──ジェフユナイテッド市原・千葉レディースとのプレシーズンマッチ開幕戦は、想定外の黒星スタートとなりました。
清水 負けという結果を引きずる気持ちというのは、実はチームには全然ありませんでした。それよりも、試合開始早々の8分に得点を入れられてしまった後、ずっとベレーザがボールを保持していたにもかかわらず得点が取れなかったことのほうが大きな課題で、選手たちはそこにフォーカスして修正してきました。

──なでしこジャパン候補とU−19日本女子代表候補のトレーニングキャンプに多くの選手が参加し、大宮アルディージャVENTUS戦へ向けての調整が難しかった面もあったのでは?
清水 確かにそれぞれの選手が代表活動に参加しましたが、ベレーザに残って練習を続けてくれた選手もいました。大宮V戦に向けて全員で合わせることができたのは試合前の数日間だけだったんですけど、そこはもともと代表選手が多くいるベレーザなので、これまでと変わりはありません。それぞれの場所で活動して、さらに成長して戻ってくるというのは、何年も前からずっとやっていることですから。大宮V戦に向けての戦い方も、昨シーズンまでずっと続けてきたことの延長線上なので、選手同士が噛み合わないということは全然ありませんでした。

──大宮V戦に4−0と快勝し、チームが上向いているように見えました。
清水 まずは4点取れたということが、一番良かったですね。それと個人的には、ボールを取られた後の切り替えがすごくハマっていたと思います。これから、いろんなフォーメーションのチームやいろんな特長を持ったチームと戦うことになると思いますが、どんな相手でも“攻守の切り替え”は重要なポイントになります。大宮V戦のような切り替えの速さで相手のボールを取り切ることができたら、いつでもいい内容の試合ができるんじゃないかと思いました。

5月22日の大宮V戦は4−0の快勝。清水もフル出場で勝利に貢献した [写真提供]=東京ヴェルディ

──プレマッチでは3バックの形など、新しいことに挑戦していることをうかがわせました。
清水 シーズン前に選手が入れ替わりましたが、前線の選手はそれぞれが特長を持っているので、大宮V戦のように縦にドリブルを仕掛けるところは今シーズンも生かしていきたいですね。育成組織の日テレ・東京ヴェルディメニーナで育ってきた、スピードがある若い選手がたくさんいるので、昨シーズンとはまた違ったサッカーになってくるんじゃないかなと想像しています。

──例えば大宮V戦では、DF宮川麻都選手の猛烈な攻め上がりやMF菅野奏音選手のドリブルテクニックに、つい声を出して驚いている観客がいました。
清水 私たちは見ている方が驚いたり、惹きつけられたりするサッカーを目指していますし、それをできるのがベレーザというチームだと思っています。形にとらわれずに、と言いますか、状況によってフォーメーションを変えたり、数分後にはまた違うフォーメーションになっていたり、というのが今のベレーザなんです。こんな女子チームと対戦したことは、私はありません(笑)。

「プレーで周囲の心や感情を動かすのがプロ選手」
──今シーズンのベレーザのここを見てほしいという点はどこでしょう?
清水 先ほど言った「変化していくベレーザ」もそうですが、ゴールへの意欲もぜひ見てほしいですね。決して前へ急ぎ過ぎず、でもゴールチャンスがあったら強烈な勢いでゴールに迫っていくという攻撃は、見ている方もきっと楽しいはずです。そして、仮にそこでミスが起きてボールを取られても、どんどん人が溢れてくるようにボールを奪い返して、再び攻撃につなげていくのが理想です。そのためには予測や運動量は絶対に欠かせないので、実はベレーザの選手はめちゃくちゃ走っているという点にも注目してほしいですね。

──リーグのプロ化によって各チームにプロ選手が増えました。2年前からプロ契約をしている清水選手が考える「プロ選手の姿」とはどんなものでしょうか?
清水 自分ではまだまだと思っていますが、プロ契約を結んでからは、プレーで何かを示さなければいけないという意識に変わりました。それは結果で示すということもそうですし、プレーで周囲の心や感情を動かすのがプロ選手と言えるかもしれません。
 プロリーグになった以上、次の試合を見に来てもらえるかどうかは、自分たちのプレー次第です。プロサッカー選手としてお金をもらって生活していて、サッカーに費やせる時間は増えたので、本当に一つひとつの練習の取り組み方にこだわっています。ベレーザとしては、試合を見ている方々の心に響くものを与えられるか、そこに全力を注いでいくつもりです。
 女子サッカーのプロチームという点では、ピッチの外でチームを支える『プロ』にも女性が多いのがベレーザの特徴だと思います。現場のスタッフもそうですし、フロントにも多くの女性スタッフがいます。女性活躍社会を実現するというWEリーグの理念がありますが、私たちはピッチ内外で、リーディングチームとしてその発信を担っていきたいと思います。

──5月30日(日)には、味の素フィールド西が丘で好調のアルビレックス新潟レディースと対戦します。
清水 新潟Lは昨シーズンからチームとして出来上がっているというか、選手全員が同じ方向を目指していて一体感がある印象があります。ベレーザとしては冷静に相手を見極めて、その逆を突くような戦いができればいいなと思っています。

──新潟L戦は今季初の有観客でのホームゲームとなります。ファン・サポーターへ意気込みとメッセージをお願いします。
清水 千葉Lとのプレマッチ初戦はリモートマッチになってしまって、本当に残念に思っていました。大宮Vとの2戦目は私たちにとってアウェイだったんですが、女子サッカーを盛り上げようとする観客の皆さんの拍手が温かくて、そういう雰囲気の中でプレーできることが改めてうれしいと感じました。
 有観客で開催できる新潟L戦は、私たちの本当の意味での開幕戦と言えるので、プレマッチですけど勝ちにこだわって戦うベレーザを見届けてほしいと思います。たくさんの人に気持ちが届くよう、一つひとつのプレーにこだわって90分を戦いますので、ぜひ会場や日テレジータス、イレブンスポーツで一緒に勝利を味わいましょう!

インタビュー・文=馬見新拓郎

ベレーザと清水にとって「本当の意味での開幕戦」となる新潟L戦は、30日14時キックオフ! [写真提供]東京ヴェルディ

By 馬見新拓郎

10年以上にわたり女子サッカーを追いかける気鋭のライター

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