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なでしこ、苦い経験を最高の結果にするアジア杯に…急務は守備安定 上位5カ国がW杯出場権獲得

2018.04.06

アルガルベ杯で相手と競り合う熊谷紗希 [写真]=Getty Images

 なでしこジャパンは4月6日に開幕する、AFC女子アジアカップヨルダン2018に臨む。同大会の上位5位チームには、FIFA女子ワールドカップフランス2019への出場権が与えられるため、なでしこジャパンはオーストラリア、韓国、ベトナムと同組のグループBで、まずはグループ2位以内に入ってW杯出場を確定させ、大会2連覇を目指す。

 4年前のAFC女子アジアカップベトナム2014に、若手選手を多く加えて臨んだなでしこジャパンは、宇津木瑠美(当時モンペリエHSC/フランス)、中島依美(INAC神戸レオネッサ)らが中核となって出場した。その中で初のアジアカップ制覇を経験しながら、宇津木は翌年のFIFA女子ワールドカップカナダ2015で主力に成長して準優勝にまでたどり着いた。

 世界の舞台で活躍するための足がかりとして、今大会では結果を残すと同時に、選手個々の成長にも期待したい。

 昨年12月のEAFF E-1選手権2017や、今年2~3月のアルガルベカップ2018(ポルトガル)では、守備が安定せず、いずれも好成績を収められていない。なでしこジャパンが来年以降の世界大会で好成績を残すためには、守備の安定が急務といえる。

 DFラインは熊谷紗希(オリンピック・リヨン/フランス)を中心に形成していくと思われる今大会では、参加8チームの中で最少失点を目指してほしい。過去の強いなでしこジャパンには、ひとつのプレーに周囲の複数の選手が声をかけて『アシスト』する、丁寧な守備があった。

 4月1日のMS&ADカップ2018・ガーナ女子代表戦では、一種の事故のような形で24分に失点したが、高倉麻子監督、鮫島彩(INAC神戸レオネッサ)、田中美南(日テレ・ベレーザ)は試合後、一様にその失点を悔やんでいた。当然、アジア杯のような真剣勝負の場では1失点が試合結果だけでなくチームの運命をも左右する。

「ヨルダンで海外組と同流して、対戦相手ごとに攻撃パターンや特徴を分析して、細かい決まりごとや守り方を決めていく」と話す鮫島や、その鮫島の逆サイドでプレーする有吉佐織(日テレ)も、国際Aマッチ数50を超えた今こそ、さらなるリーダーシップを発揮してほしい。

 コンディション不良のため、ガーナ戦に参加しなかったMF長谷川唯(日テレ)は、ヨルダンに向けた移動中になでしこジャパンと合流した。ただ、高倉ジャパンの中では出場経験が豊富なため、周囲との連携は問題ないだろう。

「代表では力を充分に発揮できていないので、自分がチームの中心となれるくらい、チームを勝たせる選手になる」と、年々力強いコメントをするようになってきたため、アジア杯で満足のいく結果を残して、さらなる進歩を遂げられるか。

 なでしこジャパンが入るグループBを見ると、初戦の格下・ベトナム戦以外は気の抜けない戦いばかりだ。

 第2戦の韓国は、アジア杯の予選大会(平壌)で朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)と1-1で引き分けるなど、予選大会を勝ち抜いてアジア杯本大会に出場してきた。北朝鮮のアジア杯への道と同時に、W杯への道も絶ってきただけに侮れない相手だ。オーストラリアは2大会前のアジア杯優勝チームで、なでしこジャパンとしては2連敗中という相性の悪い相手だ。

 グループAは中国が1位で勝ち上がってくることが予想されるため、大会終盤のどこかで中国と対戦する可能性も非常に高い。

 思えば、高倉ジャパンはまだ何も手にしていない。

 EAFF E-1選手権2017で優勝を逃し、東アジアの舞台であっても勝ち切れない現実に、寒風吹くフクダ電子アリーナで涙に暮れた選手が多くいた。当時のなでしこジャパンは、実力はもちろん、精神面でも優勝には値しないチームだったのかもしれない。

 それらの苦い経験は、アジア杯優勝のためにあったのだと言うためにも、ヨルダンで最高の結果を得るしかない。W杯とその先に続く道に、揺るぎない自信を持って出場できるか。アジア杯は、その大きなチャンスと言える。

取材・文=馬見新拓郎

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