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先輩たちへの感謝を胸に…岩渕真奈が担う2020年への“責任”

2016.03.10

北朝鮮戦後、ピッチを一周する岩渕(左)と宮間(右) [写真]=Getty Images

「若い時、やんちゃな時からお世話になっている先輩たちばかりなので…。“このメンバーで戦う最後なのかな”と思うと…」

 あふれる思いを抑えきれなかった。9日に行われたリオデジャネイロ・オリンピック 女子サッカー アジア最終予選の最終節・朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)戦。決勝点を挙げたなでしこジャパンFW岩渕真奈は試合後、目に涙を溜めてテレビインタビューに応じた。主将MF宮間あやとピッチを一周する際も、そしてミックスゾーンで記者団からの質問に答えている間も、それは変わらなかった。

「今までは、うまくいかない時でも結果が出て、それでカバーできていた部分があった。自信が崩れた時、乗り切る力が足りなかった」

 2012年のロンドン・オリンピック、昨年の女子ワールドカップ・カナダ大会にも出場した22歳にとって、今大会は“今までとの違い”に苦しみ続けた日々だった。結果が付いてこない――。開幕2試合勝ちなしと苦境に陥り、「こういう時こそチームが1つになって、なでしこらしくやらないといけない。明るく楽しくやるのが一番だと思う」と、努めて前向きに振る舞った。それでも4日の第3節・中国戦に敗れると、7日の第4節・ベトナム戦キックオフを待たずして、オリンピック出場の可能性は潰えた。

 4大会ぶりの予選敗退が決まると、選手や監督の去就問題が盛んに報じられるようになった。今まで常に“末っ子”のような立場でメンバー入りしてきた22歳にとって、「“自分もこんな人になりたい。こんな選手になりたい”と思うような先輩たち」が連日取り沙汰される状況は、苦しいものだったに違いない。「どうなるのかはわからないですけど、いろいろな情報が耳に入ってきたので…」。そう言って、岩渕は言葉を詰まらせていた。

 そんな中でも、ラスト2試合に連勝したチームにあって、背番号16は輝きを放っていた。第4節・ベトナム戦では大会初スタメンで先制点を記録。北朝鮮戦でも決勝点を挙げ、終わってみれば全5試合に出場(うち4試合は途中出場)してチームトップの3ゴールと気を吐いた。「勝利につながるゴールを取れて良かった」と言う岩渕に笑顔はなかったが、しかし少しばかりホッとした表情が窺えた。

「この大会で学んだことはたくさんある。なでしこジャパンとして戦う気持ちは大切だということ。今日のような試合を最初からしなければいけなかった。いろいろな悔しさがある。自分はもう若くないけど、ここでさせてもらった経験を次につなげなければいけない」

 今月18日に23回目の誕生日を迎える岩渕は、今大会のなでしこジャパンで下から3番目に若い選手だ。「自分はもう若くない」と言うが、その立ち位置と今までの経験値、そして今大会の活躍を踏まえれば、当然ながら次代のなでしこジャパンを担う役割が期待される。記者団からの質問は、自然と2020年の東京オリンピックへと向けられた。

「東京オリンピックが次の大きな大会になるけど、どういうメンバーになるかわからないし、そこに自分がいるかどうかもわからない。毎日、自分のいる場所でやれることをやらないといけない。このユニフォームを着る機会がまた来たら、ゼロからのスタートだけど皆さんに応援してもらえるようなチームを作らないといけない」

「もちろん、(東京)オリンピックに出たい気持ちはあるけど、『(アジア)予選がないから出られる』というような気持ちで臨む大会ではないと思う。予選がないからこそ、やらなければいけないことがたくさんある。どんなチームになるかわからないけど、個人的にはそこをしっかりと目指していく。自国開催でもあるし、出場するだけでなく、その先につながる大会にしたい」

 2020年へ、そしてその先へ。静かに紡がれた言葉には、未来を担う自覚と責任がにじみ出ていた。

「ピッチ外での信頼もピッチ内での信頼につながると思う。ピッチの内外でチームを引っ張っていける存在になりたい。そして、大事なところで試合を決めることができる選手になりたい」

 視線の先には、ともに栄光の時を分かち合ってきた先輩たちの姿がある。次は自分がそんな存在に――。岩渕の新たな挑戦が始まる。

文=内藤悠史

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