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選手間の距離とフリーランがカギ…なでしこ、原点回帰で巻き返しへ

2016.03.02

2日に韓国戦へ臨むなでしこジャパン [写真]=Getty Images

「いかにリスクを冒してサポートに行けるか、ボール保持者を追い越していけるかがカギになる」

 2月29日に行われたリオデジャネイロ・オリンピック 女子サッカー アジア最終予選第1節で、なでしこジャパンはオーストラリアに1-3で敗れた。試合後、FW大儀見優季は「チーム全体として、ボールを受けに行く積極性が不足していたのでは」と話を向けられ、「それは自分でも感じました」と頷いた。

「特に開始15分から20分くらいは、ボール保持者へのサポートが遅かった。サポートが遅くてボールを奪われる場面が何回かあったし、もう少し早くサポートに来てほしい場面はもちろんあった。(初戦ということで)ナーバスになりがちではあったと思うけど、緊張感がある試合こそ、もっとリスクを冒してプレーしていかないと得点は生まれにくいと思う。意識次第でどうにでもなる。自分たちが持っているものはどの相手よりも上だと思うから、それを出せるかどうか」

 中盤からのサポートを得られず、難しい時間を過ごした大儀見。ただ、オーストラリア戦で孤立していたのは彼女だけではない。相手の3トップに早いタイミングでプレスをかけられた最終ラインの選手たちがビルドアップに苦戦。パスコースを作り出す動きの量が乏しく、中盤でのボールロストからピンチを招いた。ボランチの主将MF宮間あやがオーストラリアの標的になっていたことは明らかで、3失点目もそこからのカウンターが起点だった。敵将のアレン・スタジッチ監督が「相手のリズムを崩すことに集中していた。それがうまくいった」と振り返った通り、なでしこジャパンはペースを掴めないまま自陣へズルズルと後退。そうして全体が間延びしてしまった。フィジカルに秀でるオーストラリアを相手に苦戦を強いられたのは、いわば必然とも言えた。

 敗戦から一夜明けた1日、青空の下でのトレーニングを終えた選手たちは、大儀見の言葉を言い変えるように、異口同音に課題を口にした。FW川澄奈穂美が「練習前のミーティングで『もっと勇気を持ってボールを受けに行けば良かった』という話が出た」と明かせば、宮間は「フリーランの量と質が足りなかった。相手のやり方への対応も遅れてしまった。もっと考えながら走って、フリーランの部分でもっと大きな動きを出していかないといけなかった」と話した。DF岩清水梓は「ビルドアップの時にもっと(パスコースに)顔を出して、人数をかけていこうという話があった」と、具体的に言及した。

 より多くの選手がボールに絡み、近い位置で連動することでプレーの選択肢を増やしていく――。「“いつも”よりも選手間の距離が遠かった」(川澄)初戦を経て、浮かび上がった課題は明白だ。“いつも”の距離感でプレーを続けること。そのためにリスクと運動量を厭わず、重心を前に向ける意識を持つこと。10日間で5試合をこなす短期決戦、試合の合間に行われるトレーニングで細かな修正を施す時間はほとんどないが、FW高瀬愛実が「今までに積み上げてきたイメージがあるから問題はないと思う」と言う通り、選手たちに悲観的なムードはない。本来のサッカーに立ち返ることこそ、巻き返しへの第一歩になるはずだ。

 6チーム中、2チームのみに与えられるオリンピック出場権。ただでさえ険しいリオデジャネイロへの道のりは、痛恨の黒星を経て、より過酷なものとなった。「自分たちの甘さが出て負けた」と、険しい表情で語った宮間は「追い込まれた時に力を発揮できるようにトレーニングを積んでいるつもり」と言い切る。まずは今日の第2節、韓国戦。選手間の距離とフリーランの質に着目しつつ、閉塞感を吹き飛ばす勝利を期待したい。

文=内藤悠史

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