柏に新加入となった小泉
2020年のJ1復帰後、7位が2度あったものの、2021年は15位、2023、2024年が17位と5年間で苦戦を強いられたことの多い柏レイソル。2025年はその苦境から脱し、再びタイトルを狙える強い集団を築き上げるべく、徳島ヴォルティス、浦和レッズを率いた経験を持つリカルド・ロドリゲス監督の招聘に踏み切った。
それに合わせ、14人もの新戦力を補強。指揮官と過去にタッグを組んだことのあるメンバー数人も加えている。その筆頭が浦和で2シーズン共闘している小泉佳穂だ。
当時の彼はFC琉球からビッグクラブへ赴いたばかり。J1初挑戦となった2021年は34試合出場2得点という結果を残した。それも、ロドリゲス監督の戦術にうまくマッチできたから。類まれなインテリジェンスと理解力、思考力に秀でた小柄なテクニシャンは今、恩師の下で再生を図ろうとしているのだ。
「今回、レイソルに移籍したのは、明確な理由が一つあるわけではないです。今の自分、将来の自分自身、チームのこと、プレースタイル、残りのサッカー人生があと何年あるのか、そこで何を重視したいのか…。それを総合的に考えて決断しました。もちろんリカルド監督が就任したことも小さくない部分。リカルド監督の目指すところは攻守両面で主導権を握って主体的にやりたいということ。勝利への情熱がすごく強い方なので、同じ方向を見て、同じ情熱を持ってやっていくことが大事だと思います」と小泉は改めて率直な思いを打ち明けた。
指揮官にしてみれば、徳島時代に指導した垣田裕暉、ジエゴ、渡井理己、浦和時代に指導した犬飼智也など複数の教え子がいるのは心強い部分だろう。こうした中でも、直近のプレー経験値や人間性を含めて小泉に託す部分は少なくないはずだ。個人面談でも「やり方はだいたい分かっているだろうし、プレーでも言葉でもみんなに示していってほしい」というメッセージを小泉に送ったという。
とはいえ、その小泉にも競争がある。浦和時代に渡邉凌磨や中島翔哉らとしのぎを削ってきた分、タフさは磨かれたが、柏にも“リカルドチルドレン”の渡井との真っ向勝負を強いられることになりそうだ。
4-2-3-1がベースだとすると、トップ下の定位置を2人で奪い合うという構図が想定される。
「リカルドのサッカーはボールを持つ時間をできるだけ長くして、どれだけゴールに向かう回数を増やしていくかがカギになると思っています。僕自身のゴールに向かっていく意識、クロスに入っていく意識は徳島時代よりも確実に強まった。そこをピッチ上で出していきたい」と、渡井は意欲を前面に押し出している。
小泉にとっては絶好のライバルと言える。浦和を離れるという大きな決意をして柏に来た以上、絶対に競争に勝たなければならない。
「リカルド監督の根っこはチームのために戦う、走る、チーム戦術を理解するところがベース。それを全員がやったうえで、個人でどれだけ得点に絡めるか、起点になれるかだと思っています。フォーメーション的にも4-3-3とか3バックとか、いろいろ可変するだろうし、自分は中盤で組み立てに関わりつつ、ゴール前にどれだけ顔を出せるか、ラストのところで仕事ができるのかが自分に課せられる部分。そこはしっかりやりたいです」と小泉は冷静に自らのタスクを分析していた。
確かにトップ下や2列目といった攻撃の主要ポジションを担うなら、ゴールに直結する役割を遂行することは必要不可欠である。J1参戦後の小泉を見ると、2021年が2点、2022年が3点、2023年が1点、2024年がノーゴールと確かに数字的には物足りない。
そこを改善し、チームを勝たせられる選手になれれば、柏が掲げるタイトル獲得にも大きく近づく。キーマンになると言っても過言ではない。
昨季の柏を振り返っても、昨季9ゴールの絶対的エースであるマテウス・サヴィオが攻撃をリードしていた。もちろん昨季とは監督も違えば、選手の目指すべきスタイルも異なるが、やはり攻撃の違いを作れるアタッカーの存在がなければ、チーム浮上は叶わない。小泉もサヴィオのことは多少なりとも意識せざるを得ないだろう。
「ただ、僕もサヴィオも(リオネル)メッシではないので。その選手がいるだけでワールドカップを優勝できるレベルにいるわけではないですから。やはり僕にとって大事なのは、柏がチームとしてどういう成績を残したか。それが自分の存在価値を証明する一番の方法でもあるので、覚悟を持ってやっていきたいです」
こう語気を強めた小泉は、サヴィオとも渡井とも異なるアタッカー像を模索していくつもりだ。独特のリズムでボールを収め、ラストパスを送り、自らも点を取る。柏の新たな背番号8が異彩を放つ姿を楽しみに待ちたい。
取材・文=元川悦子
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By 元川悦子