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浦和レッズの西川周作がさいたま市内の小学校を訪問。「レッズ先生」として子どもたちと交流

2024.11.29

「レッズ先生」として埼玉大学教育学部附属小学校を訪れた浦和の西川[写真]=浦和レッズ

 ホームタウンとの絆を深め、そして未来へとつなげていく、素晴らしい時間だった。11月7日、浦和レッズの西川周作が埼玉大学教育学部附属小学校(さいたま市浦和区)を訪問。「レッズ先生」として授業を行ったほか、ふれあいの時間を持ちながらサッカーボールを贈呈するなど、子どもたちと充実の交流を図った。

「レッズ先生」とは、「社会の一員として、青少年の健全な発育に寄与する」という理念のもと、浦和レッズがホームタウンの子どもたちのために行っている活動だ。2010年の小学校訪問をきっかけに始まり、今回で通算36回目の実施。「レッズ先生」となる選手は、夢を持つことや目標に向かって努力することの大切さなどを伝えるため、自らの経験をもとに教材となる図やテキストを自作し、授業を行う。

 また、浦和レッズは2003年にヤマザキナビスコカップ(現YBCルヴァンカップ)でクラブ史上初のタイトルを獲得して以来、タイトル獲得時の優勝賞金を地域の子どもたちに還元する取り組みを続けている。今回のサッカーボール贈呈はAFCチャンピオンズリーグ(ACL)2022優勝を記念したもので、さいたま市内54の小学校と旧浦和エリアにある36のサッカー少年団に、計2000個ものサッカーボールが寄贈される。

 実は、埼玉大学教育学部附属小学校と浦和レッズには浅からぬ縁がある。同小の校章は、埼玉県師範学校附属小学校の鳳凰と埼玉県女子師範学校附属小学校の八咫鏡を取り入れてデザインされ、昭和23年に制定されたものだ。一方、浦和レッズの現在のクラブエンブレムのモチーフとして使われている「鳳翔閣」は埼玉サッカーの発祥である埼玉師範学校の校舎。そのため、埼玉大学教育学部附属小学校では毎年、新入生に校章の意味や浦和レッズとのつながりを教える時間を設けている。

 さらに、今年は埼玉大学教育学部附属小学校にとって創立150周年のメモリアルイヤー。西川は「学校の授業で自分の夢について話をする機会は今回が初めて。伝統あるこの学校で授業をさせてもらうのはとても光栄です」と意気込みも大きかった。

 こうして訪れた11月7日。105人の4年生児童が待つ体育館に西川が登場すると、児童たちは大きな拍手で「しゅうさく先生」を迎えた。西川はまず、自作した「夢年表」に沿って、子どもの頃に自分自身がどのような夢を持ち、その実現のためにどのように努力を重ねてきたのかを語った。

 幼い頃の夢は「警察官になること」だったという西川は、「小学3年生でサッカーを始めて、最初はフォワードでしたが、体が大きかったので4年生からゴールキーパーになりました。小学生の時はまだ夢を持っていませんでしたが、とにかくサッカーが大好き。放課後に友だちが家に帰った後も1人だけグラウンドに残ってボールを蹴ったり走ったりしていて、好きなことを一生懸命やっていました」と続けた。

 プロサッカー選手になるという夢を持ったのは中学生から高校生になるタイミングで、その後はJリーグ大分トリニータでプロになり、北京オリンピックに出場し、日本代表入りと、夢を次々と実現させた。西川は子どもたちの目を見ながら、「今はまだ夢を持っていなくても、自分が好きなことを一生懸命にやってほしい」と優しく語りかけていた。

「夢年表」による授業のあとは、約20人の児童が西川とサッカーボールを蹴り合ってパス交換。見事に全員がパスをつなげると、再び大きな拍手が起きた。事前に児童から募集していたリクエストに応じて行ったPK戦では、クラスを代表して3人の児童が「GK西川」に挑戦。3人とも素晴らしいキックでPKを成功させ、西川を“脱帽”させる場面もあった。

 充実の授業時間はあっという間。西川は4年生の児童に笑顔で記念品を手渡し、握手でお別れをすると、今度は各学年の児童が待つそれぞれの部屋に行き、ボールの贈呈や質問コーナーなど、ふれ合いの時間を持った。

 3年生との交流タイムでは、「僕は3年生からサッカーを始めたんです」と言うと児童たちの目が一気に興味津々になった。そして、「最初は右利きだったけど、毎日努力して左利きになった」というエピソードを明かすと、子どもたちは「どうやって左利きになったの?」と大きくリアクション。「放課後はすぐにサッカーの練習に行って、練習のない日は公園で自主練習。シュート練習ではずっと左足だけでシュートするなど、いろいろ工夫していました。家に帰ってもゲームはまったくしませんでした」と言うと、子どもたちは「すごい!」と感歎している様子だった。


 この日のすべてのプログラムを終えた西川に感想を求めるとこのように答えた。「子どもたちの反応や聞いてくれる姿勢が素直で、とても気持ち良かったです。それに、僕のことを知ってくれている子どもたちがたくさんいて、浦和レッズというクラブがみんなに愛されていることを知る良い機会になりました」

「『挫折した時もあったな』とあらためて思い出しながら夢年表をつくったことも、自分にとって良い時間になりましたし、プロの選手と接することは記憶にすごく残ると思うので、そういう機会を僕は大事にしていきたいです。これから浦和レッズを背負っていく若い選手たちにも、こういう機会を自分からやりたいと思ってくれたらいいなと期待しています」


「質問コーナーでは女子児童から女子サッカーについての質問もあって、浦和レッズレディースの存在は大きいなと思いました。さいたまに女子サッカーをやる環境があることを知ってもらうためにも、レディースチームの先生が来るのも良いですよね」

「今回は授業でしたが、今度は埼玉スタジアムで見てもらって、また違う西川周作を感じてもらいたいですね。試合中の真剣な表情を見て、授業のときとは全然違うと思ってくれたらうれしいです」

「レッズ先生」やサッカーボール寄贈などの取り組みを見て感じるのは、浦和レッズがホームタウンを心から大切に思う気持ちと、その思いを長い間にわたってブレさせることなく継続していることだ。草の根へのアプローチはいずれ必ず大きく膨らみ、実を結ぶはず。そして、ホームタウンを明るく照らしていくに違いない。

文=矢内由美子

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