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「空中戦で勝てなかった」悔やむ柏の新大型FWフロート…封じた広島DF荒木隼人は無失点勝利に「気持ちいい」

2023.03.22

広島の荒木(写真左)と柏のフロート(写真右) [写真]=J.LEAGUE

 対人戦での無類の強さは健在だ。サンフレッチェ広島のDF荒木隼人が19日に行われた明治安田生命J1リーグ第5節の柏レイソル戦で圧巻の守備力を披露。J1初出場のFWフロートをほぼ封じて、1-0の勝利に貢献した。

 相手の攻撃の起点を空中戦で封じた。柏は193センチ99キロのフロートを活かそうとロングボールを入れたが、広島は守備の要がことごとく立ちはだかった。186センチ78キロの荒木は、「大きくてうまい選手はその場でヘディングされると勝てない。なるべくその場で競り合わないようにしていた」と正直にフィジカル勝負せず、相手との距離感やポジショニングを意識し、技術で体格差をカバーして競り勝った。


 さらに、地上戦でも出足の速い寄せでチャンスの芽を積んだ。87分にサイドのスペースへ走られたシーンも「絶対に負けないように付いて行こうと思っていた」と抜群の読みと気迫のディフェンスを見せて、新大型FWにほぼ仕事をさせなかった。

 ただ、広島は試合の立ち上がりから主導権を握って攻め込んだが、柏の固い守備に阻まれて得点が遠かった。守備陣としては一切油断のできない時間が長かったが、荒木は「チャンスを作りながら、なかなかゴールを奪えないときは一つのピンチで失点してしまうことがよくあると思っていた」と集中力を切らなかった。

 82分にDF塩谷司のミドルシュートで決勝点が生まれたのも、試合を通じて守備陣の安定したパフォーマンスがあったからこそ。特に相手FWを封じ切った荒木は、今季初の無失点勝利に大きく貢献。「やっぱり気持ちいいし、後ろの選手としてはうれしい」とクリーンシート達成に胸を張った。

 対するフロートは、「ほとんどの空中戦で負けてしまった。僕の強みの一つなので、もっと空中戦で勝たなければいけなかった」と悔しさを滲ませた。

「今日のパフォーマンス以上にやれると思っているし、もっと空中戦で勝てることを示さないといけない。今日の僕の出来だと、彼(荒木)にとっていい日だったと思う。もっとプレーを改善して、チームのチャンスメイクに貢献しないといけない」

 というのも、オランダ人FWは今月初めにチームに合流し、選手登録も3月10日に完了したばかり。広島戦でJリーグデビューを飾ったが、まだ本来の実力を発揮しきれなかった。

「デビューできて嬉しいけど、難しい試合で結果的に負けてしまった。来日してまだ約2週間だし、チームと練習できたのも1週間ぐらいなので、コミュニケーションや連携はこれから高めていかないといけない」

 柏のネルシーニョ監督は試合後の会見で新加入FWについて「まだ技術的にベストコンディションにはほど遠い状態ではあったが、彼が前線にいることで相手のDFに警戒心を生んでいた。本来なら前線でターゲットになってもう少しボールが収まる選手なので、グラウンダーのパスが効率よく入れば攻撃の形がもう少し作れたと思うが、空中戦の攻撃だけになると彼の本来の良さが出なかった」と話した。

 フロートは試合を通じて荒木に封じられた印象ではあったが、持ち前のパワーやスピードを徐々に発揮。59分にサイドでキープしたシーン、79分に荒木を体ではね飛ばしたながら頭でつないだシーンなどではフィジカルの強さや足元の技術を垣間見せた。

 本人は「足元でのプレーも得意だけど、今日は背後へのロングボールが多くて、なかなかリズムに乗れなかった。今日は自分にとって初戦だったし、今後はもっと質を高めていきたい」とプレー向上に意気込む。これからコンディションを上げて、チームにフィットしてくれば、覚醒してもおかしくはない。

 それはマッチアップした荒木が一番実感している。「フロート選手はまだ加入して間もないし、もう少しフィットには時間がかかると思う。逆に今度アウェイでやった時に怖い選手になっていると思う」と次の対決に向けて警戒心を強めていた。

 今回のマッチアップは広島の守備の要に軍配が上がった。次に対決する可能性があるのは、8月26日に柏のホームで行われるJ1第25節。約5カ月後、両者ともベストコンディションでの再戦となれば、より見応えあるバトルになりそうだ。

取材・文=湊昂大

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