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G大阪3試合連続無失点の立役者、昌子源 アクシデント続発の中で示した底力

2022.05.16

柏戦後、サポーターの応援に応える昌子 [写真]=J.LEAGUE

「今週、新型コロナウイルス陽性者が出て、チームの中でも少なからず混乱や戸惑いはありました。メンバーにユース2人(南野遥海と桒原陸人)が入っているように、今回は本当に総力戦。誰が出るか分からなかった」

 守備の要である昌子源が神妙な面持ちで語った通り、14日の柏レイソル戦を前にガンバ大阪は大いなる窮地に立たされた。コロナ陽性者7人にケガ人も加わり、片野坂知宏監督が考えるベストチームを編成できなかったからだ。


 しかも、この日は柏のクラブ創立30周年記念マッチ。1995年から99年にかけて自身も黄色のユニフォームを身にまとった指揮官にしてみれば、相手の勝利への執着心や闘争心はよく分かるはず。劣勢に陥ったとしても、何とか耐え忍び、勝ち点を奪わなければいけないと覚悟を決めたに違いない。

 昌子ら選手も同じ思いだった。

「今日の頭はキャプテンをさせてもらったんですけど、試合前の円陣でユースの若い2人に『試合に出たら何も恐れず、思い切って100%を出せ。必ず周りにいる先輩が手助けをするから』と声をかけました。中村仁郎を見ても分かると思いますけど、試合に出たら年齢は関係ない。彼らがたくましく成長していく支えに僕らがならないといけないんです」と気合を入れて、統率力を発揮しようとした。

 案の定、試合は柏ペースで進んだ。「(相手インサイドハーフの)戸嶋(祥郎)、マテウス・サヴィオのところにボールが入ってカウンターを受ける場面が多かった」と片野坂監督も振り返ったが、4-2-3-1でスタートしたG大阪は相手を捕まえきれずに苦しんだ。

 前半45分間で受けたシュートは11本。42分には柏の若きエースFW細谷真大に抜け出される絶体絶命のピンチもあった。GK一森純の好セーブで事なきを得たが、百戦錬磨の昌子もヒヤリとさせられたはずだ。

 片野坂監督はハーフタイムに4バックから3バックへの変更を指示。いち早く修正を図った。

「後半から3バックになって少しマークがハッキリして、僕が細谷選手に行ける状態になった。彼のクオリティを考えると自由にさせたら一発のある選手やし、タイトに行こうと思っていました」と昌子が言うように、三浦弦太が入ったことで安定感が確実にアップ。昌子自身も個人能力を出しやすい状況になった。

 2018年のロシア・ワールドカップでは、ロメル・ルカクらと対峙し、トゥールーズ在籍時もパリ・サンジェルマンやリヨンと真っ向勝負を演じた男の「徹底して相手を捕まえる能力」はまさに非凡。その一挙手一投足は4年前の再現を見ているかのようだった。

 守備陣にはコロナ陽性者が出なかったこともG大阪にとって救いとなった。71分にリスタートからダワンが一発を仕留めると、そこからはゴール前にカギをかけ続ける。昌子自身も「防戦一方」と表現したが、本当に厳しい展開を強いられた。

 そこで明暗を分けたのが、個の力だった。

「チームの守り方はいろいろあるけど、最後は絶対に個の力や対応力が入ってくる。個のクオリティが勝負を左右する。『最後は俺たちが防ぐ』意識が大事だと思うんです」

 こうしてG大阪は自軍の3倍の18本のシュートを打たれながら、1-0で勝利。これで3試合連続クリーンシートを達成した。新国立競技場初のJリーグ公式戦となった4月29日のFC東京戦で敗れた際、「守備を預かる者として今季の失点の数は気になるところ。点を入れられなければ負けることはない」と語気を強めた背番号3の卓越したリーダーシップや統率力が好結果に結びついていると言っても過言ではないだろう。

 相次ぐケガに苦しんだ過去2年間とは打って変わって、非常に鋭い動きを見せている昌子。こういった仕事ぶりを見ていると、日本代表復帰、W杯への逆転選出の期待も高まる。

 6月4連戦のメンバーは20日に発表されるため、間に合わないかもしれないが、彼には7月のEAFF E-1選手権、9月の代表2試合というアピールの場が残されている。

 G大阪をここから急上昇させ、圧倒的な守備力を見せつければ、2014年のブラジルW杯で最後の最後に滑り込んだ大久保嘉人のようなミラクルが起きないとも限らない。“ロストフの惨劇”を経験した選手が国際舞台に立てないままキャリアを過ごしていくのはあまりにももったいない。それは彼自身が痛感しているのではないだろうか。

「ベルギー戦の時は夜も寝られなかったんですよ。先輩たちに高いものを見せてあげられなかった。唯一の国内組という期待やプレッシャーもありました。Jリーグで戦う全員の思いを勝手に背負っていたので。どうやったら相手を止められたのかをずっと考え続けていました」

 本人もこう吐露した4年前の壮絶な経験を糧に、再び国内組からW杯へチャレンジする昌子の姿をぜひとも見てみたい。そのためにもここからのG大阪の快進撃、上位浮上は必要不可欠。いばらの道を乗り越えていくことが彼に託された命題である。

取材・文=元川悦子

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