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名古屋のミスを見逃さなかった川崎…首位攻防“第二ラウンド”で見えた王者の貫禄

2021.05.05

川崎の2点目を決めたDF山根(写真中央) [写真]=兼子愼一郎

 川崎の底知れなさを、つくづく感じる90分間だった。5日前の“第1ラウンド”は4-0と大差がついたが、名古屋側にしてみればフィッカデンティ監督が試合当日に新型コロナウイルス感染の疑いで欠場(その後の検査で陽性が判明)となるアクシデントもあり、ピッチ外の難しさを抱えていたマイナス面は数えられた。等々力での“第2ラウンド”でも名古屋の指揮官は不在だったが、やるべきことは明確にできてもいた。布陣を変え、インテンシティを出し、名古屋はハードに戦った。しかし最強の矛は最強の盾を切り刻み、最強の盾は捨て身の攻撃で一矢、いや二矢を報いたが、それでも敵わなかった。2点を追い上げたのは光明でも、見出すのは大敗の中にだ。「今まで積み上げてきたものが、川崎には通用しなかった」と中谷進之介は努めて冷静に語る。「3点の後の2失点は、自分のミスもあって悔いの残る勝利だった」と山根視来が言った川崎とのコントラストは、鮮やかに過ぎた。

 ミスは起きたのか、起こされたのか。代行監督を務めた名古屋のブルーノ・コンカコーチは、「何でそんなミスが出てしまったのか」と失点の場面を振り返る。セットプレーでマークにつけず、三笘薫の突破の後にDF陣がフリーズし、とどめは丸山祐市とランゲラックが連係ミスを犯してバックパスを自分のゴールに蹴り込んだ。いずれも、通常の名古屋では考えられないミスの連発だ。川崎の選手は気合十分の相手にやや手を焼いていたところもあったと言うが、だからと言って相手のミスを見逃したりはしない。またセットプレーにしても2点目の突破したエリアにしても、緻密なスカウティングがあったことも間違いなく、それまでの相手とは桁違いの精度に名古屋は陥落したとも言える。とりわけ右サイドの崩され方については修正が急務で、鳥栖戦でも、前回の川崎戦でも失点に直結している。3点目は単純なミスで意識や冷静さの問題として処理できても、前の2失点は捨て置けない。


 0-3から2点を追い上げた猛反撃については名古屋の森下龍矢が素晴らしい躍動感を見せ、マテウスが意地を見せたところもあったが、それにしても川崎の“采配ミス”があるまではチャンスが膨らみきらなかった。「ダミアンは腰を痛めていて、家長は前節でフル出場していた。コントロールを考えたことが、メッセージとして“緩み”を出すことになってしまった」とは鬼木達監督の言である。名古屋よりも早い時間帯でのエース2枚替えは、明らかに相手に勢いを出させてしまったところがある。それに乗じた名古屋がゴールを重ねたことについては地力を見せたと言えるが、自分たちで隙を作り、そこを突いていくまでには至らなかったことは否めない。もちろん前述のようにこの日の川崎のゴールは名古屋のミス絡みではあるが、それを起こさせた田中碧とジェジエウのセットプレーの精度と、三笘の突破力なくして起きないミスではあった。

 名古屋は終盤にかけて攻め続け、川崎に守りのための陣形変更を余儀なくさせたり、ピッチ端での時間稼ぎをさせたりと追い込みもした。それとて裏を返せば川崎の余裕であり、普段から「勝つためのプレー」をしている名古屋の方がむしろ当然のこととして受け入れられるものでもある。川崎とて魅せるだけが本領ではなく、点差や状況に応じた勝点獲得に注力するのは王者として必然の手段。それをさせたことは名古屋の力あってのことだが、全体としてあまりに大差がつきすぎた。2戦合計7-2は、首位攻防戦としてはひどく大味に映る。

 しかしまだリーグは3分の一ほどが終わったばかりだ。「地力の差で負けた。今の僕たちの力を認識できた2試合だった」と稲垣祥が振り返った名古屋と、「9ポイント差をつけられたのは大きい。でも2失点はなくせたので、そこにフォーカスしていきたい」と山根が語った川崎。勝っても負けても強者は反省し、次の試合の勝点を望む。直接対決はもうなくとも、この2チームが優勝争いを牽引していくことは間違いない。その過程の中で、今回の連勝、連敗がどう影響していくかは見ものである。

文=今井雄一朗

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