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【J2展望】今季はJ1昇格のまたとないチャンス! 一方、残留争いは下位4チームがJ3降格でよりシビアに

2021.02.24

今季のJ2は、J1からの降格チームが存在しない [写真]=Getty Images

 昇格の好機到来――とは、今シーズンのJ2のことだ。

 何しろ、昨シーズンの上位2チーム(徳島ヴォルティスとアビスパ福岡)が消えたうえに、J1からの降格チームが存在しない。例年と比べて、昇格争いのハードルが下がったことになる。


 一方、残留争いはシビアだ。

 例年とは異なり、下位4チームがJ3へ降格する。競争率の上昇<20/22→18/22>が今シーズンの戦い模様に少なからず影響を及ぼすことになるだろう。撃ち合いを挑むよりもリスクヘッジを意識しながら、しぶとく勝ち点を狙うチームが増えるかもしれない。

 今シーズンの規定に従って、過去5季の残留ライン(※18位の勝ち点)を探ると『45ポイント』が目安となる。ただし冒頭でも触れたとおり、上と下の実力差が詰まったと仮定すれば、昨シーズンのように『50ポイント』あたりまで跳ね上がっても不思議はない。

 ただでさえ戦力格差の小さいリーグだ。そこで『負けない戦略』が幅を利かせることになれば、昇格ライン(2位の勝ち点)は自ずと下がるだろう。大分トリニータが2位にすべり込んだ2018年のように『75ポイント前後』の争いになる可能性もある。

 昇格争いの有力候補と言えば、V・ファーレン長崎だろう。昨シーズンの実績(勝ち点80の3位)では、頭ひとつ抜けた存在だ。その上、主力の多くが軒並み残留。主砲エジガル・ジュニオを含め、J2屈指の戦力を維持した。そうなれば、あとはベンチのマネジメント次第。コーチから昇格した吉田孝行新監督が手に余るほどの駒を上手に捌けるか。そこが焦点だろう。

 その長崎に戦力面で引けを取らないのが、京都サンガF.C.だ。大型補強を試み、豪華な陣容を整えている。もっとも、最大の『補強』は曺貴裁新監督だろう。過去に湘南ベルマーレを二度昇格へ導いた実績に疑いの余地はない。実装されるのは、強度の高いフットボールだ。ハイテンポで攻守の両輪を回しながら、敵を圧倒していく。そこに絶対の決め手となるピーター・ウタカがうまくハマれば、昇格へ大きく近づくはずだ。

 大御所の遠藤保仁を擁し、J1への返り咲きを狙うジュビロ磐田も候補の一角に数えていい。昨シーズン途中に就任した鈴木政一新監督がチームの設計を見直し、遠藤を経由しながら細かくパスをつなぎ、ゲームの主導権を握る戦法を軌道に乗せた。遠藤や大森晃太郎など歴戦の勇士が揃っているだけに、前線の決め手に目途が立てばJ1への視界が開けるだろう。

 また、攻守の両面でモダンなフットボールを展開するモンテディオ山形にもチャンスがありそうだ。昨シーズンは序盤でつまずき、一時は下位に低迷したが、石丸清隆新監督の方針が根づいた終盤に巻き返して7位でフィニッシュした。得失点差17はトップ3に次ぐもの。攻守のバランスに優れた証である。主力数人を失ったが、的確な補強で穴を感じさせない。主砲のヴィニシウス・アラウージョがフル稼働なら、優勝も狙えるか。

 昨シーズンの実績に着目すれば、ヴァンフォーレ甲府(4位)やギラヴァンツ北九州(5位)も無視できない存在だが、主力をごっそり引き抜かれた影響をどう見るか。新戦力の出来が浮沈に大きくかかわるという意味ではアルビレックス新潟や松本山雅も同じだろう。ただ、ゲームモデル自体はしかと確立されているだけに、快進撃を演じても不思議はないはずだ。

 多くのタレントを抱える大宮アルディージャとジェフユナイテッド千葉にも耳目が集まるところ。主力の入れ替えはあったが、十分に昇格を狙える陣容と見ていい。あとはチーム戦術を含め、指揮官の思惑をどこまで形にできるか。大宮は岩瀬健新監督、千葉は就任2年目を迎えたユン・ジョンファン監督のマネジメント次第か。

 混戦に拍車をかけそうな刺客の存在にも触れるべきだろう。昨シーズンのリーグ戦で前のめりのフットボールを貫き、J2最多の68得点を叩き出した水戸ホーリーホック、J2随一のボール保持力を誇る東京ヴェルディ、破格のハードワークをもって攻守の両輪を回し続ける栃木SCがそうだ。まさに三者三様だが、尖った戦法で活路を開く個性派という点では共通している。このあたりは、いかにもJ2のチームらしい。

 独自路線を貫く昇格組のブラウブリッツ秋田も、新たな刺客として名乗りを上げるかもしれない。昨シーズンのJ3で28戦無敗の新記録を打ち立て、最速優勝を果たしたチーム力がどこまで通じるか。昨シーズンの北九州の例もあるだけに、開幕から目が離せぬ存在だろう。

 いずれにしても、今シーズンは昇格へのまたとないチャンス。J1から一度に4チームが降格してくる来シーズンの厳しさを考えれば、この機を逃すわけにはいくまい。最後の最後まで結末の見えない争いが繰り広げられることになりそうだ。

文=北條聡

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