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監督交代や看板選手流出で激震走るC大阪…主将・清武弘嗣はチームを救えるか

2021.02.01

C大阪の主将を務める清武弘嗣 [写真]=金田慎平

 新型コロナウイルスに翻弄された2020年のJ1リーグを4位でフィニッシュし、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)プレーオフ出場権を手にしたセレッソ大阪。しかしながら、ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督が契約満了となり、柿谷曜一朗や木本恭生、マテイ・ヨニッチといった看板選手が次々と流出するなど、チームに激震が走っている。

 2021年シーズンはかつて香川真司や乾貴士、南野拓実を大きく伸ばしたレヴィー・クルピ監督が就任。J1歴代最多記録となる185ゴールを誇る大久保嘉人や実績十分の原川力らを補強したものの、サポーターからの風当たりは依然として強い。1月22日にYouTube配信された新体制発表会でも辛辣な書き込みが目立った。


 その現状を認識したうえで、懸命に前向きな方向へ持って行こうとしているのが、キャプテン・清武弘嗣である。

「サポーターの方々の気持ちは昨季が終わる前から横断幕にも出ていましたし、僕自身もすごく感じていました。ユン(ジョンファン監督)さんからロティーナになったここ4年間は『セレッソとしてこうやっていく』という方向性を示してくれた時間だったので、不安になる気持ちも分かります。

 でも(監督が)変わった以上、僕たちはやるしかない。ユンさんとロティーナの守備を継続しつつ、もう少し攻撃的にできれば一番の理想です。本当にそれができるかどうかはキャンプをして、練習試合をしながら確かめていかないといけない。そういう中で、4年間を知っている選手たちが『ここに立ち返るんだ』というのを新しい選手たちに伝え、擦り合わせをしながら、いいチームを作っていきたい」と強い覚悟を口にしたのだ。

 幸いにして、クルピ監督と清武の間には「強固な信頼関係」がある。というのも、2人が共闘した2010~2011年にかけての2年間、C大阪はACL出場権を獲得するなど一定の成果を残し、清武自身も劇的な成長を遂げているからだ。

 当時の彼はまだ20歳そこそこの若手だったが、ロンドン五輪代表のエースに名乗りを上げ、2011年8月の日韓戦でA代表デビューも果たした。宿敵を4-1で叩きのめしたこの一戦のインパクトは非常に大きく、ザックジャパンの大黒柱・本田圭佑に「キヨはホンマ、よかった。セレッソの育成って面白いですね」と言わしめるほどだった。翌年夏にはドイツのニュルンベルクへ移籍したが、短期間で一気に階段を駆け上がれたのも、攻撃意識を鮮明にしていたブラジル人指揮官のアプローチと采配による部分が大だと言っていい。

「レヴィーは『つねに数字にこだわれ』と言ってましたね。監督が変わると決まった時、そのことが頭の中をよぎりました。今季のセレッソは若い選手が多いですけど、彼らも数字を残せば自信がつくはず。数字さえ出せれば僕や真司君みたいに海外へ行ける選手はいると思う。それを大事にしてほしいです」と清武は指揮官の哲学をピッチ内外で浸透させていくつもりだ。

 ロティーナ時代にはモンテディオ山形から個人昇格した坂元達裕やユース上がりの瀬古歩夢が頭角を現したが、今季も西川潤や藤尾翔太、松本泰志、中島元彦ら楽しみな若手が数多くいる。彼らがかつての香川や乾、清武のようにグングン伸びていってくれれば、周囲の不安は一掃できる。そうなるように、C大阪との契約を3年延長したキャプテンは持てる力のすべてを注いでいく覚悟だ。

 クルピ監督の方も、清武の意見には耳を傾けるだろう。今のところはシュートやゲームを黙って見ているだけだというが、徐々に攻守の戦術構築を本格化させると見られる。その過程でコーチングスタッフ含めて話し合いを重ね、ベストな方向を見出していくことができれば、昨年までの手堅い守りが大きく崩れることはないはずだ。

「キャプテンという立場にある以上、選手の考えを代弁する場面は出てくると思います。でも、最終的に戦術を決めるのは監督だし、僕らはそれについていくしかない。ユンさんの時もロティーナの時もそうでした。監督を信じてついていくというのはレヴィーになっても変わらない。僕はこのチームでリーグ優勝したいと強く思っていますし、そのためには結果を残すしかない。ゴール・アシストともに2桁を目指して戦っていきます」

 昨季は33試合出場8得点8アシストと、2017年にC大阪に復帰してからベストシーズンを過ごした清武。ケガに苦しみ、一時は本気で引退も考えたという男が眩いばかりの輝きを取り戻したことは、Jリーグ全体にとっても朗報だった。その状態を今季も維持し、「30代になってもコンスタントに仕事のできる老獪さ」を示してくれれば、チームも彼自身ももう一段階ステップアップできるに違いない。

 新生・セレッソの成否を左右するのは紛れもなくこの男だ。31日からスタートした宮崎キャンプでどこまでディテールを突き詰められるのか…。彼の統率力と戦術眼に期待するしかない。

文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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