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【インタビュー】家長昭博「“自分にとってベスト”を探る重要性」

2020.12.18

[写真提供]=大塚製薬 ボディメンテ

 激動の2020シーズンJ1リーグ、他を寄せつけない圧倒的な強さでリーグ制覇を成し遂げたのは川崎フロンターレだった。4試合を残しての優勝決定は史上最速。前例のない超過密日程を強いられた中でのぶっちぎりの優勝は、現時点における文字どおりの圧倒的な強さを鮮烈に印象づけた。

 家長昭博は、今シーズンもそのチームの中心にいた。現在34歳。ひと昔前の感覚なら「大ベテラン」と呼ばれる年齢に差し掛かってきたが、ほとんど休むことなく1年間戦い続けてきた彼にその気配は感じられない。卓越した技術と屈強なフィジカルの絶妙なバランスを生むフィジカルコンディションを、彼はどのようにして作り上げているのか。「体調管理」と「コンディショニング」をテーマに、そのキャリアを振り返ってもらった。


インタビュー・文=細江克弥
写真=大塚製薬 ボディメンテ

◆27歳の時、「このままじゃダメだ」と思った

[写真提供]=大塚製薬 ボディメンテ

——現在34歳。家長選手の“コンディショニング”に対する意識は、同年代の選手やチームメイトと比較していかがですか?
家長 自分なりには“気にしているほう”だと思います。自分の体調を敏感に感じ取れるようにアンテナを張っているし、客観的にチェックしてくださる人もいるので。まずは自分で気をつけながら、他者にも管理してもらう。そういう体制を作って日々を過ごしています。

——きちんと意識するようになったのはいつ頃ですか?
家長 2回目のスペインあたりだから……27歳くらいですね。そのあたりから体調管理やコンディショニングのこと、「自分の身体はどうすればパフォーマンスが上がるのか」について真剣に考え始めました。

——なぜ、そのタイミングで?
家長 自分のサッカーがうまくいかないことが多かったので、何かを変えなければいけないと感じていました。当時所属していたマジョルカはスペインリーグの2部でしたけど、それでもレベルが高くて、ほとんど結果を残せなかった。年齢も徐々に上がってきていたので「このままじゃダメだ」と。正直、やることをやって、それでもいいプレーができないのなら、サッカーを辞なきゃいけない日が来るんだろうなと真剣に考えていました。それで一度、大きく変えてみようと。

——まずは、自分の身体に目を向けた。
家長 そうです。それまでは、何となく頭で考えてはいたけれど、何かに継続的に取り組んだことはありませんでした。やっていたのは、シンプルに身体を鍛えるためのトレーニングだけ。でも、そのタイミングから「何のためにやるのか」をちゃんと考えるようになって、長期的なスパンで体調管理やコンディショニングに取り組むようになりました。

——家長選手と言えば、圧倒的なテクニックに加えてフィジカル的な強さを兼備していることが大きな武器であると思いますが、きっとその自覚があったからこそ、改めて「身体作り」に目を向けるのは簡単ではなかったのでは?
家長 確かに、そういう自覚は中学、高校くらいからありました。小学生の頃はむしろ線が細いほうだったので、「特長」であり「武器」として自覚し始めたはプロになってからです。ただ、自分の中ではそれに頼っていたわけではありません。だからこそ“強さ”ではなく、体調を良くすること、機能的な部分を向上させることにフォーカスできたんだと思います。自分が持っている素材を、さらに良く発揮するためにはどうすればいいのか。逆に言えば、27歳でそれを考えるようになるまで、自分の身体の能力をうまく使えていなかったということですよね。

◆“自分にとってベスト”を探る重要性

[写真提供]=大塚製薬 ボディメンテ

——身体を作り直す、あるいはしっかり管理する方法として、どんなことを実践したのですか?
家長 まずは、チーム練習以外でもトレーニングの負荷を強くかけることにしました。午前中でチーム練習が終わったら、昼から個人練習をする。試合と同じくらいの強度でやっていたので、体重がかなり落ちたんですよ。コンディション的にはやせ過ぎるのは良くないと言われるんですけれど、その時は自分の感覚的にむしろ「コンディションがいい」と感じていて。そうやって試行錯誤するうちに、自分の場合、ある程度体重を落とした状態のほうが自分が持っているものを出しやすいと感じ始めました。

——選手の能力を最大限に発揮するための身体的条件、体重や筋肉量は、きっと、個々のプレースタイルや身体的条件によって違いますよね。
家長 そう思います。自分の身体やその使い方は、自分自身の“オリジナル”ですから。その感覚、つまり“自分にとってベスト”な身体を作る感覚を研ぎ澄ますことが一番大事だと思います。もちそんそれは年々変わっていくもので、あの当時の僕にとっては、かなりの負荷をかけて体重を落としたことが自分自身の感触としてものすごく良かった。

——とはいえ、体力的にはキツかったのでは?
家長 いや、それがぜんぜん。毎日楽しかったです。「こんだけやったらどうなるんやろ」みたいな感覚で、新しいものをどんどん見つけていく感覚でした。

——キャリアとしては、“2度目のマジョルカ”から2014年に日本に戻ってきて、大宮アルディージャで3年プレーしました。選手としての未来像について、当時はどんなビジョンを持っていたのでしょう。
家長 ガンバ大阪にいた頃から「世界でやってみたい」という思いはあって、でも、実際に行ってみていろんな意味で「世界は広い」と感じました。失敗もたくさんあったし、そういう紆余曲折があって日本に帰ってきた。大宮ではJ2降格を経験して、落ち込んだ時期もありました。でも、大切なのは戦うステージではなく、もっと“自分がいい選手と思われること”に対して努力するべきだなと思ったんです。まだできる、まだ挑戦できるという思いは常にあったので、まずは認めてもらえる結果を残して、チャンスを待とうというスタンスだった気がします。

——だからこそ、より明確な意志を持って自分の身体と向き合うことができた。
家長 そうですね。まずは自分が最高のコンディションでピッチに立つところからスタートしないと、話になりませんから。

◆めっちゃ楽しいけれど、やめたくなる時もある

[写真提供]=大塚製薬 ボディメンテ

——川崎フロンターレに加入してからの4年間でリーグ戦を3度制覇し、2018年はMVPに選出されました。20代後半に気づいて、自分の身体に対する取り組みを変えたことがちゃんと実っている実感があるのでは?
家長 もちろん積み重ねてきたものはちゃんとあると思うんですけれど、もっとたくさん、本当にいろいろなものが重ならないとリーグ優勝はできないし、MVPも取れないと思うので。もちろん、運もありますよね。その中の1つとして、自分が“積み重ねてきたもの”のポジティブな影響も多少はあるのかなと思います。

——コンディショニングに対する意識は、年々高まっている?
家長 そうじゃないとついていけない年齢になってきたなと感じていますから(笑)。今はもう、「楽しんでいる」というより、「やらなきゃダメ」という危機感のほうが強いかもしれません。

——でも、サッカーそのものに対しては「今が一番楽しい」と感じてるのでは?
家長 いや、そうでもないんですよ。僕はサッカーが好きだから、プレーしている時は楽しい。でもやっぱり、シーズンが終わる頃には精神的にも疲弊していて、「ああ、やっとオフになった」と思う自分もいるんです。で、シーズンが始まる頃には「また戦わなきゃいけないんだ」と思って心が重くなることもある。でも、実際にみんなとボールを蹴ると、サッカーそのものはめっちゃ楽しいんですよね。

——なんとなく、わかる気がします。
家長 結局、その繰り返しなんです。ただ、そういう中で感じるのは、やっぱりサッカーというのは“いつまでもできること”じゃなく、終わりがあるから頑張れるということ。うん。だから、めっちゃ楽しいけど、やめたくなる時もある。それが素直な気持ちです(笑)。

——この先の展望については?
家長 「毎日」と言えるくらい考えているんですけれど、「ずっとやりたい」という気持ちもやっぱりあります。でも、“やりたい”と“やれる”は違うと思うし、自分の中で「どのレベルでプレーできたらサッカー選手でいたいと思うか」という問題もある。“何歳まで”という希望はないですけれど、それでも、遠からずサッカー選手をやめる日が来るんだろうなとは感じています。難しいですよね、こればっかりは。これからどうなるのか、自分でもよくわかっていません。

◆今までとはぜんぜん違う挑戦もしてみたい

[写真提供]=大塚製薬 ボディメンテ

——体調管理の一環として、今年から大塚製薬の『ボディメンテ』を取り入れていると聞きました。
家長 今年の3月くらいからですね。こういうのも継続性が大事だと思うので、続けて同じタイミングで飲んでみたりして、まずはそれによる自分自身の変化も知りたいなと。だから、完全に毎日のルーティーンとして取り入れています。

——「飲んで体をバリアする」というキャッチコピーを聞いたこともあります。これって、乳酸菌が入っているんですよね。この乳酸菌B240が体調維持をサポートしてくれるものだと思うのですが。
家長 そうそう。専門的なことはちゃんとした知識がないので言えないんですけれど、そういうアプローチによって自分自身がどう変化するのかを確認しているところです。今はドリンクとゼリーの2種類を摂取していて、ドリンクは練習場に着いたらすぐに飲む習慣をつけている。で、身体が欲していると思えば、追加で持って帰ります。それから、ゼリーは練習終了後のロッカールームで。試合前日の就寝前にも飲んでいます。

——かなりの頻度ですね。
家長 他の人がどうしているのかわからないけれど、僕はそれくらいのペースで摂取しています。習慣化されてくると、“お守り”みたいに感じるところもあるんですよ。朝、練習場に着いて、飲んで、すーっと身体に入っていく時もあるし、「今日はあまり飲みたがってないな」と感じることもある。そういう身体のリアクションがわかることが大事なので、ある意味、自分自身の身体の“基準”になっているところもあります。

——ちなみに、食事や睡眠にはどの程度気を使っていますか?
家長 食事については、基本的には奥さんに任せています。睡眠は“できるだけ寝る派”で、基本的にめっちゃ寝るんですよ。例えば、ナイターの試合前日なら、22時から翌朝9時くらいまでずっと。たぶん、この年齢ではめずらしいですよね(笑)。

——最後に、これからのキャリアについて現時点での展望を聞かせてください。
家長 自分自身、これからどういう景色が見たいんやろうといつも真剣に思っているんです。ある程度の経験はできたと思う一方で、まだ経験していないことを経験したいという素直な思いもある。今までとはぜんぜん違う挑戦もしてみたいし、今までと違う自分を周りの人に見てもらいたいとも思います。1人のサッカー選手として、新しいことにチャレンジしたいですね。

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