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J1新記録へ導いた冷静な主将・谷口彰悟「まだ試合は続いていく」

川崎のキャプテンを務める谷口彰悟 [写真]=金田慎平

「10連勝した後、1回負けて、そこから引き分けを挟んでこういう状況を作り出したのは自分たちの力。記録に対するプレッシャーは正直、感じていませんでした。名古屋(グランパス)には前回負けていますし、ダブルは達成させたくなかった。シンプルに勝ちたい気持ちが強かったので、受け身にならず、アグレッシブにできたと思ってます」

 川崎フロンターレにとって、J1新記録の11連勝がかかる大一番となった18日の名古屋戦。8月23日にアウェイで今季リーグ戦唯一の黒星を喫した因縁の相手を撃破することが、彼らに託された命題だった。前回は金崎夢生のヘッド一発に沈んだだけに、守備の要・谷口彰悟はエース完封と無失点を誓って、等々力競技場のピッチに立った。

 序盤は川崎ペースでスタートしたが、徐々に名古屋が押し返す展開になった。中村憲剛が「4-2-3-1みたいな形でスタートさせたけど、ダブルボランチの(田中)碧と守田(英正)の脇のところを締めきれずに使われていた」と指摘する通り、前田直輝に決定的シュートを打たれるなど、多少なりとも嫌な雰囲気も漂った。

 それを断ち切ったのが、前半終了間際の先制弾だ。ここまでプレースキックを蹴っていた中村ではなく、田中碧が右CKに向かった瞬間、谷口は巧みな位置取りを見せ、ニアサイドでボールをフリック。ファーでフリーになっていた三笘薫が合わせる形になった。

「最近セットプレーで点を取れていなかったので非常によかった。こういうギリギリの展開の時はセットプレーがすごく重要。自分たちが逃しちゃいけないポイントだと分かっていた」とキャプテンマークを巻く男は安堵した。大卒新人の若武者の今季11得点目がチーム全体に大きな活力を与えたのは間違いないだろう。

 さらに川崎は後半、課題だったセットプレーから2ゴールを叩き出す。ジェジエウの2発を演出したのは、間もなく40歳になろうという大ベテラン。「2点目はFKですけど、直接狙うにはちょっと遠くて、相手のDF陣と味方がどこに入ってるか確認して蹴りました。3点目はショートコーナーでアドリブに近い形。GKに届きそうで届かない、速くないボールを、何かが起きるように蹴りました」中村憲剛はしてやったりの表情を浮かべた。

 このようにベテラン・若手・外国人とあらゆる選手が効果的な仕事を見せ、3-0と無失点で勝利。彼らはついに悲願の新記録を樹立した。冒頭のコメント通り、29歳のキャプテンは心から喜んだに違いない。

 今季の川崎は2年ぶりのタイトル奪回を目指してシーズンに挑んだ。だが、2月22日のJ1開幕戦でサガン鳥栖に0-0と勝ち切れず、不完全燃焼感を抱えたまま新型コロナウイルス拡大による中断期間に突入してしまった。3月はまだ練習できていたが、4~5月は活動休止も余儀なくされた。そんな中、谷口は「リーグ戦で勝てなくて消化不良な感じだったのが逆によかった。きちんと課題が見えたというか、やるべきことが分かったので。ポジティブに中断期間を迎えられたし、トレーニングもリアリティを持ってやれている。『こういうことができれば点が取れるんじゃないか』というのは選手個々が感じているし、有意義な時間になっていると思います」とつねに前向きさを失わず、少しでも前進することを考え続けた。

 キャプテンの積極的姿勢が大きなプラス効果をもたらしたのだろう。川崎はリーグ再開後、2月時点での懸案事項だった攻撃面の課題を完全に払拭。鬼木達監督の「1試合3点以上取って勝つ」という大目標を着実に実践し、首位を独走。向かうところ敵なしの状態だった。そんな彼らがいったん立ち止まり、自らを客観視する好機になったのが、苦杯を喫した名古屋戦だったのだ。

「(金崎に奪われた)決勝点のシーンは僕が弾いていたら問題なかった。個人の対応ミスですし、反省しないと。前半終了間際の時間帯も含めてあの失点がゲームを難しくしたのは間違いない。僕もディフェンスラインもチーム全体も改善していかないといけない」とキャプテンは自戒を込めて語っていた。J1新記録の11連勝一歩手前で白星街道がストップしてしまったことも、大きな心の傷となったに違いない。

 けれども、今季のJ1は超過密日程。一瞬たりとも立ち止まっているわけにはいかない。谷口はすぐさま気持ちを切り替えた。続く8月26日のヴィッセル神戸戦は後半途中まで1-2とリードされ、ズルズル行きそうな気配も漂ったが、旗手怜央の同点弾でドローに持ち込むことに成功。何とか踏みとどまった。これで吹っ切れたのか、8月29日の清水エスパルス戦以降は再び10連勝し、宿敵・名古屋を撃破して前回越えられなかった大きな壁を越えることができた。

 快挙の立役者の1人がリーダーである背番号5だというのは、紛れもない事実と言っていい。川崎の場合、小林悠やレアンドロ・ダミアン、三笘ら華やかな攻撃陣に目が行きがちだが、苦しい時に率先してチームをまとめ、守備の立て直しに貢献したのは谷口だ。しかも今回の大一番では先制点も演出している。一見、地味に映りがちな存在が持てる力を発揮しているからこそ、川崎は首位を独走できる。その事実を改めて再認識させるキャプテンの働きぶりだった。

「まだ試合は続いていくので、次に向けて準備していくという流れを変えずに続けていかなければいけないと思っています」

 力強く語る谷口がシャーレを掲げる時は、刻一刻と近づいている。小林悠の長期離脱というアクシデントも起きたが、川崎が歩みを止めることはないはず。早ければ11月中旬とも言われる歓喜の日が今から待ち遠しい。

文=元川悦子

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