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「タイトルは全部獲りたい」…急成長を遂げる古橋が見据える先に|古橋亨梧(神戸)

2020.07.01

絶好調で2020シーズンをスタートさせた古橋の見据える先に狙うものとは…… [写真]=J.LEAGUE

 2020シーズン、2月8日のFUJI XEROX SUPER CUP 2020で幕を開けたJリーグ。古橋亨梧はさっそくこの試合でゴールを陥れ、同大会初制覇に貢献すると、チームも自身も初挑戦となるAFCチャンピオンズリーグで2戦連続ゴール。その勢いのままにJ1リーグ開幕戦でもネットを揺らし、公式戦4試合連続ゴールを記録した。

「今年の主役は俺だ!」といわんばかりのパフォーマンスは圧巻だった。しかし、当の本人は「納得のいくプレーはまだまだできていない」と語り、「まだまだ成長できる。より質の高い動きができるように」と日々のトレーニングに真摯に向き合う。


 いよいよ再開するJ1リーグ。「リーグ制覇とアジアナンバーワンを目指していく」とキッパリと言い切った古橋は、再開から一気に加速し、チームをさらなる高みへと導くつもりだ。

インタビュー・文=山本剛央
写真=ヴィッセル神戸

――今回は、サッカーキングのJ1リーグ再開特集の企画で「J1注目の5選手」のうちの一人に挙げさせていただきました。

古橋 ありがとうございます!

──まずはシーズン中断前のことから聞かせてください。FUJI XEROX SUPER CUP 2020(以下ゼロックス杯)に勝利し、初出場のAFCチャンピオンズリーグ(以下ACL)も2連勝。J1リーグ開幕戦は横浜FCと1-1で引き分けたものの、チーム状態はすごく良かったと思います。どういう手応えを感じていましたか?

古橋 結果だけを見れば負けていないことが、すごく評価できると思います。年明け1月1日に天皇杯決勝を戦ったため、オフ期間、準備期間が例年よりも短かったなかでも、いいスタートを切ることができました。その要因の一つは、(トルステン)フィンク監督のサッカーがチームに浸透しているから。チームを離れた選手、新しく入ってきた選手、期限付き移籍から帰ってきた選手がいて、顔ぶれは多少変わりましたが、ベースとなるサッカーは昨シーズンから変わっていませんからね。

――天皇杯を制覇したことによる、チームの変化は何か感じていますか?

古橋 ヴィッセル神戸にとっての記念すべき初タイトルですからね。タイトルを獲得できたという事実は、選手はもちろん、クラブにとっても、ファン・サポーターにとっても、それぞれが自信や誇りを深められたというか、すごく大きかったと思います。

――古橋選手自身はゼロックス杯から4試合連続ゴールを記録しました。絶好調でしたね。

古橋 結果的に周りの支えがあって4試合で4ゴールを取れましたが、個人として納得のいくプレーはまだまだできていません。自分が納得できていないということは、まだまだ成長できることの証だと思います。何ができなかったのか、何をするべきなのか、どういうプレーをしていけば効率が良くなるのか。そういったことを中断期間中も考えていて、より質の高い動きができるように努力を重ねています。

――2月下旬には新型コロナウイルスの感染拡大によりリーグが中断してしまいました。中断の決定を聞いたときは率直にどう思いましたか?

古橋 試合がしたいという思いはありましたが、感染拡大を防ぐための中断決定ですからね。そのときは多少なりとも驚きましたが、今思えば早めに判断できたことは良かったことかなと感じています。

――その後、3月末にチームメイトの酒井高徳選手がPCR検査で陽性反応と診断されました。身近な存在が感染したことによってコロナに対する考え方やスタンスは変わりましたか?

古橋 細心の注意を払っていても、ちょっとしたことで感染してしまう怖さがあるんだな、と感じました。高徳くんが注意していなかったから感染したというわけでは決してないので。僕自身も気をつけてはいましたが、高徳くんの感染を機により一層、感染対策を徹底するようになりました。手洗い、うがい、マスク着用はもちろん、いろいろな場面で消毒したり……。

──酒井選手の感染発覚後は古橋選手も濃厚接触者ということで自宅待機になりましたが、どういうふうに過ごしていましたか?

古橋 いつもどおりに起床して、1時間ぐらい筋力トレーニングをして、走りに行ったりしていました。もちろん、なるべく人がいない場所を選んで。それ以外はずっと家にいましたよ。料理をしたり、オンラインで語学の勉強をしたり、ゲームをしたり、みんなと同じような感じで過ごしていました。

――料理はうまくなりましたか?

古橋 いや、それほど(笑)。でも、食事面で言えば果物をこの期間で摂るようになりました。自分でスムージーを作っています。

――それはコンディション面を気遣って?

古橋 そうです。スムージーを飲むことで水分も摂れますし、ビタミンも摂れるので、体にいいかなと思ってやっています。今も毎日飲んでいますよ。

――スムージーの効果を感じていますか?

古橋 スムージーだけではなく、食事では以前よりも野菜を多く摂るようになり、体は絞れているし、いい感じですね。

――自粛期間中はサッカーができなくてもどかしい思いをしたはずですが、サッカーに対する考え方、あるいはプロ選手としての自分を客観視したり、普段考えないことを考える時間にもなったんじゃないかなと思います。

古橋 毎日「早くサッカーがやりたいな」と思っていました。約2カ月もサッカーから離れていたので、サッカーのことを考えないでおこうと思った日もありました。でも、何だかんだでサッカーのことを考えてしまう。DAZNで配信されていた昔のJリーグの試合を見たり、YouTubeのハイライト映像を見たり。つまり、何だかんだでサッカーを見たり、考えたりするので、やっぱり僕は純粋にサッカーが好きなんだな、ということが分かりました。

――自分にとってのサッカーの大切さを再認識したと。

古橋 そうですね。加えて、クラブスタッフの皆さん、スポンサーの皆さん、応援してくれるサポーターの皆さん、いろいろな人のおかげで僕たちはサッカーができているんだなということも改めて強く感じました。

――そういった思いを強くしていた中で、実際にチームトレーニングが再開したときの気持ちは?

古橋 喜びを感じました。すごく楽しかったし、僕だけでなく、みんなも楽しそうにやっていました。

――練習が再開してから3週間ぐらい経ちました。1回リセットされた体をまた作り直している段階だと思いますが、今のコンディションはいかがですか?

古橋 体はいい感じです。個人としては今、ポジショニングや動き出すタイミングの質を高められるように取り組んでいます。チームとしても、みんなのコンディションがどんどん上がってきているし、状態はすごくいい。リーグ再開が楽しみですね。今シーズンは連戦になりますが、どの選手が出ても本当にいいサッカーができると思うので、自信を持っています。

――古橋選手は2018年の夏に神戸に加入して、もうすぐ2年が経ちます。昨シーズンはリーグ戦10得点、11月には日本代表デビューも飾り、飛躍の1年になりました。神戸に来てから個人として成長したと感じている部分は、どういうところでしょうか?

古橋 難しいですね……。神戸の前に在籍していたFC岐阜にも素晴らしい選手がいて、毎日たくさんの刺激をもらい、その中で周りに支えてもらいながら結果を残せていました。その後に神戸に来て世界的な選手がいる中で揉まれ、昨シーズンはダビド・ビジャという素晴らしいストライカーと一緒にやらせてもらって、FWとして何が大切かたくさん学ばせてもらいました。彼はゴール前ではエゴイストだったので、そういった姿勢はより強く意識するようになったと思います。

――神戸に来た当初は遠慮してパスをしていた部分もあったけれど、昨シーズンは「自分が決め切るんだ」という意識が強くなったと語っていました。

古橋 正直に言うと、2018年の前半、岐阜で11点を取った時は、「自分が自分が」で好きにやらせてもらい結果も残せていて、その勢いのまま神戸に来て、加入当初は岐阜時代のプレーができていたんです。でも、試合を重ねるごとに周りに合わせてしまうというか、消極的になってしまった。とりあえず周りに預けておけば、誰かがやってくれるだろうと、その弱気な姿勢を気づかせてくれたのが家族でした。両親や弟から指摘してもらったんです。「自分の強みがあるのに、なぜその強みを生かさないのか」と。

──家族がそういうふうに指摘してくれるのはありがたいですね。

古橋 はい。それで2018年11月のアウェイでの名古屋グランパス戦から徐々に変わっていきました。その試合で1トップを任されたことで意識に変化が生まれ、カウンターの場面では一人でやり切るプレーを出していけるようになった。昨シーズン、ビジャもそういうプレーをしていたので、より強く「自分が」という意識になったと思います。

――カウンターの場面では持ち味であるスピードが生きます。速さを生かすプレーは、神戸でどう進化したと思いますか?

古橋 自分ではあまり感じていないですけど……でも、岐阜時代に比べたらドリブルをする回数は減ったと思います。岐阜の時も周りに生かしてもらっていましたけど、ワイドでパスを受けて自分で仕掛けることが多かった。今はシンプルなプレーというか、どちらかというとパスを出してもらえるので、ゴール前に抜け出す場面が増えました。周りとの連係の中でスピードを生かすことが増えたのかなと。

――GKとの一対一はもちろん、ミドルシュートからのゴールも多いですが、シュートがうまくなったという意識はありますか?

古橋 ないですね。自分ではあまりうまいとは思っていないんです。シュートを打たないと何も起こらないから打っているという感じ。

――ACLの初戦、ジョホール・ダルル・タクジム戦、右サイドの西選手からグラウンダーのパスが斜め後ろから来て、ダイレクトで蹴り込んだシュートは技術がないと打てないと思います。インフロントでインパクトしてカーブを掛けましたよね?

古橋 たまたまですよ。意識して蹴ったかと聞かれたら、怪しいし(笑)。たぶんコースはそれほど良くなかったのですが、ダイレクトで打ったからGKはタイミングを取りづらかったのかなと思います。

――謙虚ですね。神戸の攻撃陣に目を移すと、今シーズンはドウグラス選手が加入し、古橋選手とのコンビにも注目が集まります。連係面は手応えを得ていますか?

古橋 少しずつ合わせられていますが、チームとしてドグ(ドウグラス選手の愛称)の生かし方をもっと明確にしたほうが、彼にとってもいいのかなと思います。それは練習試合や公式戦を重ねていく中で、明確になってくることなので、今後はだんだんと良くなっていくのかなという期待感はありますね。

――ドウグラス選手がいることで古橋選手のプレーも生かされる場面が増えそうですか?

古橋 ドグは一人で何でもできる選手なのでとても心強いです。かつ、周りを使うプレーもうまいので、タイミングが合えば2人で抜け出して、いい形でゴールを決められるという手応えを感じています。ただ、ドグ以外にも神戸には素晴らしい選手がそろっているので、いろいろな形からゴールを取れると思います。

――今の神戸の最大の強みは、やはり攻撃力でしょうか?

古橋 そうですね。一言で攻撃力と言っても、高い位置でボールを奪える切り替えの速さも強みの一つ。守備も安定してきていますし、攻守のバランスという意味でも手応えは感じています。後ろの支えがあるからこそ、前の選手が攻撃できますし、前からプレスに行く時も、後ろへの信頼感があるから自信をもってプレスに行くことができます。

――改めて、今シーズンの目標を教えてください。

古橋 チームとしてはもちろんJ1リーグ制覇、アジアナンバーワンを目指していく中で、獲れるタイトルは全部獲りたいと思っています。可能性はあるはずなので、1試合1試合を大事にして戦っていきたいなと思います。個人としては得点王。アシストも二桁は取りたいですね。攻守においてハードワークを怠らず、どんな時もチャンスを狙い続けてゴールとアシストをたくさん積み上げていきたいです。

――優勝するためにポイントとなりそうなことは?

古橋 過密スケジュールの中でも、特に夏場の連戦はどこのチームにとっても厳しい戦いになります。そこをどう乗り越えていくか。試合によっては賢く戦うというか、したたかに勝点3を取るような試合もしていかなければいけません。夏場をいい形で乗り切れればチームにとってすごく大きな自信になると思うので、一つのポイントになりそうな気はしています。

――リーグ再開初戦、神戸はサンフレッチェ広島と戦います。広島の印象や警戒すべきポイントを教えてください。

古橋 広島さんにはなかなか勝てていませんからね(2019シーズンはJ1リーグで2戦2敗)。再開初戦はサポーターの皆さんがいなくて寂しいですが、ホームのノエビアスタジアム神戸で戦えることは僕たちにとって有利になると思います。まずは守備からしっかり入ってリズムをつかみ、僕たちがボールを保持できる時間帯もあると思うので、賢くボールを回しながら相手が嫌がるところを突いていければ勝機は見えてくるのかなと思いますね。

――最後にJリーグファンの皆さん、神戸のファン・サポーターの皆さんに向けてメッセージをお願いします。

古橋 皆さんの努力のおかげでJリーグが再開できることをすごくうれしく思っています。最初はリモートマッチ(無観客試合)になりますが、僕たちはピッチで100パーセントを出して戦います。DAZNなどをとおしてその姿を見てもらい、少しでも勇気、元気を与えられたらいいなと思っています。そして、スタジアムに足を運べる日が来たら、たくさんの人に来ていただき、みんなで一つになって戦いたいです。スタジアムで一緒に喜べる日を楽しみにしています!
   

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