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今まで以上にサッカーのある日常を楽しみながら|森島寛晃(C大阪社長)

桜スタジアム建設募金団体の代表理事に就任した森島社長。クラブ社長との二足の草鞋を履く [写真提供]=セレッソ大阪

 日本代表としても活躍した“ミスター・セレッソ”こと森島寛晃氏は現在、セレッソ大阪の代表取締役社長としてクラブ経営に奮闘している。

 社長就任2年目の2020シーズンは好スタートを切った矢先、新型コロナウイルスの猛威によってリーグが中断。前例のない多くの困難にぶつかった。それでも、森島寛晃氏は持ち前の明るさを失わず、選手、クラブスタッフ、サポーター、地域の方たちと協力、連係しながら一つひとつ困難を乗り越えてきた。

 いよいよ再開するJ1リーグ。「少しでも元気や活力を与えられるように」と意気込む森島社長はサッカーのある日常を今まで以上に楽しみながら、力強く前へと進んでいく。

取材・文=山本剛央
写真=セレッソ大阪、Jリーグ、白井誠二

  
──2019シーズンは社長就任1年目でした。どんなシーズンでしたか?

森島 クラブにとっては記念すべきクラブ創設25周年のシーズンでした。(ミゲル・アンヘル)ロティーナ新監督を迎えて、チームの体制も刷新したなか、AFCチャンピオンズリーグ(以下ACL)出場権とタイトル獲得を目標に掲げてスタートを切りましたが、序盤はなかなか噛み合わなかったところもありました。得点を奪えずに勝ち切れない試合が続いてしまったり……。しかし、終盤は右肩上がりに調子を上げ、最後の12試合は9勝1分2敗という好成績を残すことができました。選手もボールもスムーズに動くようになりましたし、守備面でも25失点とリーグ最少を記録。順位は5位でしたが、34試合で39得点だった攻撃面をもう少し改善できれば、優勝争いに加わっていけるのではないか。そういった期待を抱くことができたので、今シーズンにつながる1年になったと思います。

──社長業としてはいかがでしたか?

森島 いろいろな経験が足りないなかでのスタートになりましたので、自分が先頭に立ってみんなを引っ張っていくということは正直、1年経っても満足にできなかったなという印象です。まずは市役所や区役所、スポンサー各社さんなどにご挨拶に行くことがスタートラインでした。そうしたなかでセレッソが地域密着というか、地域の人たちに応援していただいていることをクラブとして、私個人としても大事にしていかなければいけないと強く思いました。ただ、やはり1年目は周りのスタッフに支えられたことが大きかったと思います。クラブスタッフは本当に大変ですが、みんなよく頑張ってくれています。

──そして迎えた2020シーズン。JリーグYBCルヴァンカップでは松本山雅FCを4-1、J1リーグ開幕戦では大分トリニータを1-0で勝利し、連勝スタートを飾りました。

森島 非常にいいスタートになりましたね。キャンプからいい準備ができていたし、チームからも一体感を感じられていました。新しく入った選手たちがチームにいい刺激を与え、競争も活性化している。「すごく楽しみだな」と思っていましたし、実際に最初の2試合でその期待感が結果としても表れて、「さあ、ここから行こう!」という空気になっていたのですが……。

選手が主体的に情報発信をしてくれたことは
クラブとしても、とてもありがたかった

2月22日のJ1リーグ開幕戦は、ブルーノ メンデスが決勝ゴールを挙げて1-0で大分に勝利。幸先の良いスタートを切った [写真]=Jリーグ

──大分戦の3日後の2月25日、新型コロナウイルス感染拡大の影響によってJリーグは試合の延期を発表しました。この決定を聞いたとき、どのようなことを思われましたか?

森島 25日はルヴァンカップ第2節の前日でした。セレッソはアウェイでのベガルタ仙台戦を予定していて、チームがトレーニングを終えて移動するというタイミングで延期決定の知らせが入ってきたのですが、そのときは正直、「急過ぎる」と思いましたね。チームも「え!? 行かないの!?」という感じで、戸惑いというか、かなりドタバタしていましたし、私を含めて延期決定をスムーズに受け止められていないという印象でした。もちろん、「今後どうなっていってしまうんだろう」という、得体の知れない不安もあったと思います。

──その後、一度は再開日が発表されたものの、感染拡大が収まらず白紙に戻る、ということが繰り返されました。

森島 Jリーグを中心に何度も会議を重ねるなかで、世の中の状況を踏まえると慎重にならざるを得ない状況でした。3月は感染リスクを抑えながらチームは活動していましたが、感染拡大に伴い3月下旬から活動を停止。そのオフ期間にはセレッソからも感染者が出ました。この事態により、新型コロナウイルスの脅威を感じるとともに、クラブとしてはより強い危機感を持って感染防止対策を徹底していかなければいけないと再認識しました。

──4月7日には緊急事態宣言が出されました。チームは感染者が出たことで、選手、スタッフの皆さんが濃厚接触者として保健所の指導の下、自宅待機となっていましたが、緊急事態宣言下の時期はどのようなことを考えていましたか?

森島 まずは選手、クラブスタッフ、その家族、みんなの安全を確保すること。それを第一に考えて行動しなければいけないと強く思いました。その上で、活動が極めて制限されるなかで何をしていくのか。サッカーをお見せすることはできませんが、ファン・サポーターの皆さん、スポンサーの皆さん、地域の皆さん、セレッソを支えていただいている方々に向けて、発信や情報共有をしっかりとやっていかなければいけないと思っていましたが、クラブとして対応が少し遅れてしまった部分もありました。特設サイトを作ってスポンサーさんの取り組みや、スタジアムに出店しているお店の情報を発信したりしましたが、スピード感という意味では反省点が残りましたね。

──ただ、選手たちはInstagramを使ってライブ配信をしたり、クラブの動画コンテンツに出演したり、さらに柿谷曜一朗選手、都倉賢選手に至ってはこの時期にYouTuberデビューをしたり、積極的にファンの皆さんとの接点を作っていましたね。

森島 クラブから選手たちに依頼したことも二つ返事で引き受けてくれていましたし、SNSなどを使って選手が主体的に情報発信をしてくれたことは、クラブとしてもとてもありがたかったです。選手やサポーターの皆さんが応援ソングの『CEREZO(さくら)満開』を歌って踊る動画があったと思うんですが、実は選手発信だったんですよ。都倉(賢)選手が「何か作りたい」と言ってくれて、クラブと会議して内容を決めたんです。そうしたらサポーターの皆さんも自主的に動画を撮ってくれて、本当に素晴らしい作品になりました。大変なときだからこそ生まれた連帯感というか、選手とサポーターの皆さんが一緒に取り組めたのは本当に良かったなと。

──その他にも、選手たちによるジャニーズ手洗いダンス動画を配信したり、藤本康太アンバサダーがマスクを自作する動画をアップしたりと、感染拡大防止に向けた啓発活動をすごく積極的にやられていました。

森島 啓発活動は「今、こういう状況だから」というわけではなく、以前からもJリーグや自治体と連係しながら取り組んでいます。セレッソは大阪にあるクラブですからね。大阪府、大阪市からの協力依頼があれば、しっかりと対応します。セレッソだから、というわけではなく、プロスポーツクラブの責務の一つとして、啓発活動はやっていかなければいけないと思っています。

──その一方で、リーグが中断したことによりスポンサーの露出が減ってしまうことが課題の一つだったと思います。5月29日にはオンラインでスポンサー各社に向けた「状況説明会」を開催されました。反応はいかがだったのでしょうか。

森島 普段もそうですが、活動ができない苦しい状況に置かれたときも、クラブはスポンサーの皆さんに支えていただいています。だからこそ、私たちはいいサッカーを届けなければいけない。改めてそう感じていましたが、新型コロナウイルスはスポンサー各社にも影響を与えています。にもかかわらず、スポンサーさんから「こういうときだからこそ、支えるよ」と声を掛けていただいたり、背中を押してもらいました。そのような有難いお言葉はクラブ内で共有し、みんながすごく勇気づけられています。オンラインでの状況説明会は初めての試みでしたが、きちんと誠意をもってお伝えすることで、クラブの状況を理解していただけたのではないかと思います。皆さんから「やってもらえて良かった」という声もたくさんありましたし、今後も定期的に開催していきたいですね。いろいろなコミュニケーションが生まれる機会でもあるので、うまく活用しながら今後につなげていきたいと思います。

思いや感情を共有する
大阪が誇れるスタジアムに

6月17日、桜スタジアム建設募金団体の代表理事に就任。より良いスタジアムを目指し募金活動にも力を入れていく [写真]=白井誠二


 
──『桜スタジアム』(旧称キンチョウスタジアム)の改修事業についても聞かせてください。6月17日には桜スタジアム建設募金団体の代表理事に森島社長が就任されましたね。

森島 桜スタジアムは来年3月に完成する予定ですが、まだまだ募金活動を頑張っていかないといけません。残り1年を切っているタイミングで代表理事に就任し、身が引き締まる思いでいます。スタジアムがより良くなるように、しっかりとやっていきたいと思います。

──2019年7月から建設着工していますが、工事はコロナ禍による影響を受けましたか?

森島 影響はほとんど受けることなく、改修工事は順調に進んでいます。クラブのオフィスはスタジアムの中にあり、毎日、工事の進捗を目にすることになりますが、だんだん屋根ができてきたり、スタンドが新しくなってきたり、少しずつ形が整ってきています。その過程を直接、目にしているだけに私たちもより楽しみや期待を感じていますね。

桜スタジアムのメインスタンド側の完成図。収容人数は2万5,000人に増え、ACL開催も可能になる [写真提供]=2016桜スタジアム建設募金団体

──2万5,000人収容の球技専用スタジアムに生まれ変わります。セールスポイントになる機能性や設備面などについて教えてください。

森島 やはり何よりも迫力を感じられることが、桜スタジアムの良さだと思います。スタンドからピッチまでの距離は一番近いところで5.8メートル。距離が近い分、一体感を感じられます。選手とサポーターが一つになって戦っているような、そういう熱い雰囲気になるのではないかと期待していますね。また、試合のない日でも皆さんに足を運んでもらえるような場所にしたいと考えています。今はまだ計画段階ですが、地域の企業の方が利用できるオフィススペースやブックカフェ、育児支援施設、教育施設などを併設する予定です。そういった施設を地域の皆さんに身近に感じてもらい、愛されるスタジアムになっていければ、それが一番のセールスポイントになりますからね。ぜひとも期待してもらえればと思います。

──スタジアムの改修費は寄附金で賄う予定で、寄附金募集の第四期が3月中旬からスタートしています。ですが、コロナ禍もあって苦戦していると聞きました。改めて、森島社長の思いを聞かせてください。

森島 まずはこれまでにご支援いただいた多くの皆さんに、改めて感謝申し上げたいと思います。ですが、目標の66億円に対して、残り31億円ほど足りていない状況です。多くの人が新型コロナウイルスの影響を受け、厳しい社会情勢になっていますが、まだまだ寄付金の募集活動を頑張っていかないといけません。新しくなるスタジアムはサッカーはもちろん、さまざまな球技がプレーされるなかで、ボールを通じてたくさんのつながりが生まれる場所です。選手たちはプレーを通じて、サポーターの皆さんは応援を通じて、思いや感情を共有する、大阪が誇れるスタジアムにして、日本だけでなく、アジア、世界へ向けて、ここ長居からスポーツを通じて発信していきたい。その魅力あるスタジアムを造るため、ぜひ皆さんの力をお貸しいただきたいと思います。スタジアム募金への協力を、ぜひともよろしくお願いいたします!

サッカーをとおして皆さんに
元気、勇気、希望を届けられるように

──いよいよ7月4日にJ1リーグが再開されます。再開日決定の一報を聞いたときは、どのようなお気持ちでしたか?

森島 決まったのは5月29日だったと思いますが、そのときはまだ自粛ムードが強かったですし、100パーセントで喜べないというか、不安な気持ちを拭えないところもありました。ですが、日程が決まったのはすごくポジティブなことです。明確な目標が定まり、そこを目指して準備をしていくことで選手、スタッフは前向きに取り組んでくれていると思います。正直、「ちょっと時間がないな」という印象はありますが(苦笑)、ファン・サポーターの皆さんもきっと楽しみに待ってくれていると思いますから、最善の準備ができるように頑張っていきたいですね。

──準備段階においてはどういうことが大事になってきますか?

森島 選手たちにとってはコンディション面はもちろん、頭の切り替え、心の持ちようというのは難しさがあるはずです。キャンプを終えて、シーズンが始まった直後に中断し、コンディション面もリセットされて先が見えない状況に置かれていました。その異常事態を経て、心と体のバランスというか、気持ちを整理するのは簡単ではないのかなと思いますね。

──新型コロナウイルスの不安が完全に拭えないことは選手の精神面への負担になりえます。その上、リモートマッチ(無観客試合)という経験したことのない試合で、いつもどおりのパフォーマンスを発揮するのは簡単ではないと?

森島 そうですね。選手の誰もが経験したことのない環境に置かれています。無観客試合から始まり、だんだん制限が緩和されていきますが、そういった環境は少なからず気持ちの部分に影響を及ぼすはずですから。そういった意味でもイレギュラーなシーズンは準備段階から難しさはありますね。

──選手だけでなく、ファン・サポーターの皆さんも生活スタイル、応援スタイルが変わっていくなか、Jリーグのクラブに求められる変化とはどういったことでしょうか?

森島 何よりもまずファン・サポーターの皆さんの安心・安全が第一です。その方針を根幹に据えて、調整、対応をしていく必要があります。サッカーの醍醐味は、スタジアムで味わう熱気や喜びにあると思いますが、今シーズンは現場で感じられる熱さ以外にもサッカーの魅力、生の声をいかにして届けていけるか。これはとても重要な要素になってくると思います。これまではスタジアムで大きな声を出して声援を送っていただいていましたが、今の状況では大きな声を出すことは難しい。そんな状況下で、どのようにしてスタジアムの雰囲気作りをしていくか。また、安全対策を徹底していくことに関しては、私たち運営側の準備も大切ですが、スタジアムに足を運んでくださる皆さん一人ひとりに高い意識を持っていただくことも必要不可欠です。そこの意識への働き掛け、発信はしっかりとやっていかなければいけないと考えています。

──リモートマッチ(無観客試合)になったり、お客さんの数が制限されることで、経営面にも大きな打撃を受けることになります。対策や経営方針をどのように考えていますか?

森島 セレッソだけでなく、今はどこのクラブも厳しい状況に置かれていますが、何とか収入を確保するため、収益改善プロジェクトチームをクラブ内に作りました。リモートマッチ(無観客試合)はクラブとしてどういう形で試合をお届けできるか。どういうことをしたら収益を上げられるのか。また、スタンドに設置できる物を販売したり、動画やイベントを積極的に配信したり……。クラブスタッフが知恵を絞り、試行錯誤しながらでもいろいろな施策にチャレンジし、収益につなげていきたいと考えています。と同時に支出面においても、工夫を重ねて抑えられるようにクラブをあげて取り組んでいます。

──変則日程となった2020シーズンは過密スケジュールとなります。それをクラブ一丸となって乗り越えていくために、必要なこと、大事になってくることは何でしょうか?

森島 先ほども触れましたが、やはり気持ちの部分は大事になってくると思います。選手たちはサッカーをとおして皆さんに元気、勇気、希望を届けられるように、思い切りプレーしてもらいたい。サッカーができる喜びを感じながら、リーグ優勝という目標に向かってハツラツとプレーすることが、いいサイクルへとつながっていくはずです。私たちスタッフもイレギュラーなシーズンで不安はありますが、選手たちと同じように強い気持ちを持ちつつ、サッカーで皆さんにメッセージをしっかりと送れるように、きちんと準備をしていきたいと思います。多くの人が苦しんでいるこんなときだからこそ、少しでも元気や活力を与えられるように、しっかりとやっていきたいですね。

──改めてリーグ再開を待ちわびるファン・サポーターの皆さんへメッセージをお願いします。

森島 たくさんの方に支えられ、Jリーグはようやく再開の日を迎えられることになりました。中断期間中には「早くサッカーが見たい」、「サッカーを楽しみにしている」といったメッセージを多くいただき励みになりましたので、今度は私たちがサッカーをとおして皆さんに元気をお届けし、少しでも社会を活性化していけるように、しっかりとやっていきたいです。ぜひ、ファン・サポーターの皆さんにはワクワク、ドキドキしていただき、サッカーを思う存分楽しんでいただけたらと思います。また、最終的にはこれまで同様にスタジアムで皆さんと一緒になって勝利を目指して戦える日が1日でも早くくることを切に願っています。そのときが来るまでまだしばらく我慢が必要ですが、いい方向へ向かっていけるように皆さんと一緒に歩んでいければと思っています。
      
 

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