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【THIS IS MY CLUB】グランパスを上位へ押し上げる。それこそが一番の“クラブ愛”|青木亮太(名古屋)

2020.06.30

 DAZNと18のスポーツメディアで取り組む「DAZN Jリーグ推進委員会」が、その活動の一環としてメディア連動企画を実施。Jリーグ再開に向けて、「THIS IS MY CLUB -FOR RESTART WITH LOVE- Supported by DAZN Jリーグ推進委員会」を立ち上げた。サッカーキングでは、名古屋グランパスで在籍最年長となる青木亮太選手に”クラブ愛”について語ってもらった。

インタビュー・文=武藤仁史
写真=名古屋グランパス

――今回の企画では、チーム在籍年数が最も長い選手にインタビューを実施するんですよね。24歳という年齢ながら青木選手がチーム最古参の選手です。それを聞いて素直にどう感じましたか?


青木 どうなんですかね……。自分としてはいわゆる「クラブに長く在籍している」と表現されるような選手に当てはまらない感覚です。僕の年齢だと、他のクラブであれば“ザ・中堅”ぐらいの位置づけじゃないですか。そんな僕の在籍年数が一番長い。その事実に対しては、少し寂しい気持ちがあります。在籍してきた7年で、確かな“名古屋愛”を持っていた選手たちと一緒にプレーさせてもらってきましたから。そういった選手と自分を比較すると、どうしても差を感じてしまいます。一方で、僕自身はその事実に対してすごく重く受け止めているわけではありません。「僕が一番、長いんだな」と感じているぐらいです。

――加入当初はチームに在籍年数の長い選手が多くいました。そういった選手たちから“名古屋愛”を感じていたと。

青木 そのとおりですね。もちろん移籍した選手たちがクラブに対する愛情を全く持っていないなんてありえません。だけど僕はクラブへの愛が強くないと、そのクラブに長く在籍するのは難しいと感じています。ナラさん(楢﨑正剛氏)のような選手からは、“クラブを上位へ導くために戦っている”と感じる瞬間があったんです。当時は18、19歳でしたけど、先輩方のそういった姿がとても印象的で、それこそ“クラブ愛”なんだろうなと。当時の僕は試合に絡めないことのほうが多かったので、イベントへ参加したり、ファンとの交流を図ったり、そういった自分にできることを積極的に取り組もうと思っていました。だけど、自分のプレーでクラブに結果を残す、グランパスを上位へ押し上げる、それこそが一番の“クラブ愛”だと感じてました。

――ともにプレーした選手の中で、特にクラブへの思いが強いと感じた選手は?

青木 「とにかくクラブを上位へ」という気持ちをチーム全体に波及させられるというか、その影響力を持つ選手。それでいうと、ナラさんにタマさん(玉田圭司)、トゥーさん(田中マルクス闘莉王)に(中村)直志さん。直志さんは生涯グランパスの選手なので言うまでもないですけど、僕にとってはナラさんやタマさん、トゥーさんも“名古屋の選手”という印象が強いです。僕がそんなレジェンドたちについて語っちゃっていいんですかね(苦笑)。やっぱりグランパスから日本代表に選出されていた選手たちが思い浮かびます。若い時から代表に入っている方々なので、必ず条件のいいオファーが他のクラブから届いていたと思います。それでも名古屋でのプレーを選択している。そういう状況では「クラブのことを自分はどう考えているのか」と思いを巡らせますよね。そうなれば必然的にクラブに対する思いも、サポーターを喜ばせたいという気持ちも強くなるんじゃないかと思います。

――クラブに対する思い入れの強い選手がいると、チーム力が上がっていくイメージはありますか?

青木 そう思います。僕はたかだか7年目の選手なので、それが正しいかなんて分からないですけど。もちろん今の僕でもグランパスを上位に引き上げたい、チームの力になりたいという気持ちが確実にあります。10年以上在籍していた選手たちは、僕よりもさらに強い気持ちがあって、僕とは違った影響を与えていたと思います。やっぱり優勝を経験した人たちはその影響力が違いましたね。僕が若い頃にはまだそういった選手がチームに多く在籍していました。僕は当時の名古屋グランパスを知っています。そういった選手を理想の姿として成長していき、僕らも成果を挙げたい。いずれグランパスの歴史において、先輩方とともに僕たちの名前が挙がるようになりたいです。

青木亮太

2017シーズンはJ2リーグで26試合に出場し、11得点をマーク。チームの主軸としてJ1昇格に貢献した。 [写真]=名古屋グランパス

――ちなみに青木選手がクラブに対して「愛着があるな」と感じる瞬間はどんなときですか?

青木 試合をやっている最中に感じますかね。チームのために「勝ちたいな」と思ったり、見に来てくれている人たちのために「楽しい試合をしたいな」と思った時かな。

――日常のふとした瞬間というよりは、試合時に感じるものなのですね。

青木 確かに……僕はそうですね。

――青木選手が以前、「多くの人のおかげでサッカーをさせてもらっている」と語っているのが頭に残っていて。それは名古屋で出会った人たちから影響を受けたからなのでしょうか?

青木 サッカーという競技は、確実に一人ではできないスポーツです。味方がいて、相手がいる。監督がいて、スタッフがいる。僕はこれまでに所属してきたチームで、すべての方々に助けられてきました。それこそ家族がここまで育ててくれたから、自分はサッカーを続けられています。加えて、僕はプロに入ってから本当にケガが多かったんです。サッカー選手はケガをしてしまうと、チームに貢献できません。そんな僕を本当に多くの方がサポートしてくれました。ケガなくプレーしている選手に比べると、いろいろな人に関わっていただいたと思っています。そういうことを考えると、自分がサッカーできているのは、今までに出会ったすべての人たちに助けられたからだと思って。このクラブでも多くの選手やスタッフに出会いました。その過程でいろいろな人の考え方や情報に触れることができたんです。そこは今の自分にとって大きなプラスになっています。

――自分がグランパスに在籍し続けていたことで成長を遂げたと感じる点はありますか?

青木 ケガによって苦しい時期も過ごしましたし、試合に出てうまくいった期間も知りました。ここまでをトータルで判断すると、うまくいかないことのほうが多かったのかな(苦笑)。このクラブにいたことで、本当にいろいろなことを知ることができたと感じています。これからはその経験を生かして、チームも自分もいい方向に進めるように考えないといけないですよね。

2018年の年末に左ひざ半月板損傷の重傷を負い、2019シーズンは出場機会を得ることができなかった  [写真]=名古屋グランパス

――今シーズンは開幕戦を終えたあとにリーグ戦が中断しました。中断が決まった時の心境を振り返ると、どんな気持ちでしたか?

青木 マッシモ(フィッカデンティ)の下できつい練習をしてコンディションを作っていたので、正直な気持ちとしては続けたかった。僕はメンバーに入れてもらえていたので、そのチャンスをつかみたかったですし。悔しさがありましたね。

――確かにキャンプはめちゃくちゃハードでしたもんね。

青木 そうですね。相当きつい練習をしましたよね(苦笑)。そこから長い自粛期間に入ってしまったので、どうあがいてもコンディションは落ちてしまいました。もちろん仕方のないことですが、同時にもったいなさを感じてしまいます。あまり外にも出られないので「これからどうなっちゃうのかな」という漠然とした不安も生まれてきました。いつか再開するだろうと理解しつつも、メンタルを維持することも難しかったです。

――中断期間にはファンクラブや有料サイトの会員とオンラインでふれあう機会がありました。メンタルを安定させるのが難しいと感じていた中で、オンラインでのイベントでどのような影響を受けましたか?

青木 ファン・サポーターの方と触れ合う機会があるのは、選手にとってもいいことだと実感しました。試合があればサポーターの方とコミュニケーションを取る時間があります。それがリーグ戦の中断によって、直接的に会う機会がなくなってしまった。アッキー(秋山陽介)と一緒にオンラインイベントに出演した時、サポーターの方たちにすごく楽しんでもらえたんです。「再開後に試合を見るのが楽しみ」と伝えてもらえたので、僕らは楽しませるようなプレーをするために準備をしておきたいと思えました。サポーターの方の喜びや楽しみが、改めて僕らのモチベーションにも変わることが実感できた。やっぱり触れ合う機会が作れたことはすごく良かったと思っています。

――全体練習が再開した直後、チーム内に新型コロナウイルス感染症の陽性反応者が出ました。

青木 本当にどこから感染するか分からない感染症なんだなと。クラブとしてできる限りのことはしていました。同じ環境下で練習しているチームメイトが感染したことで、自分たちがいつ感染してもおかしくないんだなと感じましたね。試合が再開してから感染してしまったら、シーズン中でも1カ月程度は動けなくなってしまう。そのリスクを考えると選手として恐ろしさを感じます。

――今シーズンの個人的な目標があれば教えてください。

青木 やっぱり試合に出たいですね。昨シーズンはケガをして全く試合に絡めませんでしたから。今年は過密日程になっているので、多くの選手に出場のチャンスがあると思っています。今シーズンは例年以上にチーム全員で戦わないといけません。いつもはスタメンで出ていない選手でも、絶対に出場する場面が出てくる。起用された時にしっかり貢献できるような準備をしておきたいです。

――最後に、再開後に向けて意気込みをお聞かせください。

青木 他のチームとは状況が異なり、練習期間が短くなってしまいました。その中でも最大限のコンディションを作り上げて、7月4日の試合に備えたいと思います。大変なシーズンになるのは間違いないと思います。それでもチーム全員でいいサッカーをして、勝利数を増やしていきたいです。やっぱり僕はグランパスが好きです。もっともっと多くの人にグランパスを見てもらいたい。愛知県全体から応援してもらえるようなチームにしていきたいですね。

By 武藤仁史

元WEB『サッカーキング』副編集長

元サッカーキング編集部。現在は編集業を離れるも、サッカー業界で活動中。

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