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【J1再開展望】一寸先は闇!? 今季のJ1は神のみぞ知る

2020.06.28

降格なし、交代枠増など、レギュレーション変更による影響は? 今季のJ1はどうなるのか [写真]=兼子愼一郎

 どこまで新しい環境に適応できるか。

 いよいよ再開されるJリーグの焦点はそこかもしれない。何しろ所与の条件が大きく変わった。通常モードの変換が必要になる。


 最大の変化は日程だろう。もう連戦だらけの過酷なもの。ありていの駒のやりくりでは乗り切れない。人的資源をフル活用した総力戦になる。そうなれば何にも増してコンディションの維持が重要事項になりそうだ。

 極端な言い方をすれば、チームの出来はリカバリー次第。コンディションが落ちた状態ではケガのリスクも高まる。総力戦だけに負傷者の続出は致命傷になりかねない。これまで以上にフィジコの手腕が問われるだろう。

 変化と言えば、特例措置も見逃せない。5人交代制だ。過密日程を踏まえた限定仕様だが、これを上手に活用できるかどうか。それによってチームの明暗が大きく分かれそうだ。

 実にスタメンの約半数が入れ替え可能。これをフル活用すれば数多くのメリットを手にすることができる。やり方次第で労働過多のポジションを担う選手のみならず、主力やベテランの消耗も回避しやすい。2人の選手を1つのポジションで使うリレー方式(45分限定)の起用法も選択肢に入るだろう。

 当然、ゲームプランの変更や修正にも大いに役立つ。連戦期間中の練習はほぼリカバリーに費やされ、細かい落とし込みは至難の業。先発の人選を含めた対戦相手の分析にも誤差が生じやすい。軌道修正を図る意味でも5人交代制はより大事なツールになってくる。

 ハーフタイムの三枚替えなど大胆な手立ても必要になるだろう。ただ、実戦で使える人材が限られれば効果は薄い。伸びシロのある若手などを積極的に活用し、兵力を拡大できるかどうか。ベンチワーク同様、指揮官のマネジメントが大きな「違い」になりそうだ。

 そして、大きな変化がもう一つある。

 降格がない、ことだ。当面の目標は残留、あわよくば上位進出を……という立ち位置にあったクラブにとっては追い風かもしれない。さらに新監督を迎えたチームや新たなゲームモデルの構築に取り組むチームにとってもメリットがありそうだ。今季のJ1では、これに該当するクラブが少なくない。

 新監督を迎えたのがベガルタ仙台鹿島アントラーズ清水エスパルス。またモデルチェンジを試みたのが浦和レッズFC東京川崎フロンターレサガン鳥栖だ。とりわけ、昨季残留争いを演じた仙台、清水、鳥栖の場合、ブレることなく、それぞれの設計図に基づいたチーム作りを進めやすいかもしれない。うまく転がれば台風の目になる可能性もある。

 他方、優勝を狙うクラブの場合、冒険できる余白は小さいだろう。理想を追いつつも、戦績との兼ね合いで上手に落としどころを探る必要がある。それも過密日程の中で……となると、さすがに一筋縄ではいかないはずだ。

 その点、ある程度ゲームモデルが確立されたクラブは有利かもしれない。これという土台があるだけに新規要素を上積みしやすい利点もある。セレッソ大阪サンフレッチェ広島がそうだ。どちらも完成度が高く、守りが堅い。

 失点が少ない分、勝点を拾いやすいのも大きな強みだ。決め手の部分と選手層が大きな足かせにならなければ、タイトルに近付くことになるかもしれない。C大阪の場合、上位陣にめっぽう強いのもアドバンテージだろう。

 連覇を狙う横浜F・マリノスは他クラブから厳しくマークされる立場。かなり研究されている。G大阪の策に屈した開幕戦はその好例か。ただ、選手層は厚く、決め手はJ1随一。標的にされたビルドアップを立て直し、包囲網をかいくぐるだけの力はあるはずだ。

 天皇杯王者のヴィッセル神戸も地力は十分。懸案事項は御大アンドレス・イニエスタの起用法か。連戦で常時使うのは難しいだろう。欠場の際に戦力ダウンをどこまで抑えるか。初優勝への大きなテーマになりそうだ。

 依然、遠藤保仁が絶大な存在感を放つG大阪も事情は似ている。もっとも、こちらは選手層が厚い。遠藤の代わりに矢島慎也をピボットに使う手がある分、計算しやすい。先に触れた川崎F、FC東京、鹿島の有力候補は人材豊富だけに新規のゲームモデルが上手く回るかどうかが最大の焦点だろう。

 ダークホースは前線に破壊的な決め手を持つ柏レイソルか。強烈な速攻のベースとなる守りが大崩れしなければ、ライバルたちを出し抜くポテンシャルがありそうだ。横浜FMや神戸と同様、新たな環境(外国選手枠の拡大)に適応し、チーム力を高めた見本でもある。

 ともあれ、AFCチャンピオンズリーグや日本代表戦の絡みなど、まだまだ不確定要素満載。一寸先は闇である。それでも未知の環境に流されず、最も上手く適応したチームが最後に笑うことになるのだろう。それがどこかは神のみぞ知る――だが。

文=北條聡

     

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